グローバル市場で中国AIの利用が急速に伸びている。米OpenRouterの3月の利用統計では上位10位のAIモデルのうち、6つを中国AIが占めた。中国AIの魅力はコスパだと毎日経済新聞が報じた。
トップ10のうち6つが中国AI
OpenRouter(https://openrouter.ai/)は、1つのAPIで300以上ものAIモデルが利用できるというサービス。アプリやプログラムからAIを利用する時、APIに渡すAI名のパラメーターを変えるだけでさまざまなAIを利用することができるため、世界中の開発者から利用されている。半数は米国からの利用となる。
そのOpenRouterの利用トークンランキングで、小米のMiMOが1位となり、上位4つを中国AIが占めた。トップ10の6つまでが中国AIだ。

中国AIが使われる理由は「安い」
中国AIが利用される理由は単純だ。安いのだ。1Mトークンあたりの出力料金を見てみると、中国AIは総じて安い。米国AIではGrokががんばっているが、その他のAIが利用料金では中国AIに負けている。
この価格で、中国AIはフラグシップモデルが使えるため、どうしても特定のAIモデルを使わなければならない理由がなければ、中国AIを選ぶことは合理的な選択だ。

安い理由1:電力料金が安い
では、中国AIはなぜ安いのか。もちろん、中国AIが戦略的に価格を抑えているということはあるが、本質的な理由は2つある。
ひとつは、中国は電力料金が安いのだ。GlobalPetrolPrices.com(https://www.globalpetrolprices.com/)の2023年から2026年の産業用電力料金の平均値を見ると、中国は先進国と比較して非常に安価になっている。
この価格は国内の平均値であり、AIデータセンターが使う電力料金はさらに安価になっている。中国の西部地域は砂漠や山地が多く、太陽光発電、風力発電、水力発電に適している。ここで再生可能エネルギー発電を行い、データセンターを西部に置き、東部の沿岸大都市から利用するという東数西算工程を進めている。西部地域では、時間帯によっては電力が余るようになっており、電力料金は非常に安くなっている。

安い理由2:AIモデルの効率
もうひとつの理由は、中国AIは効率的な演算ができることだ。AIの開発や運用には大量の並列計算をするGPUが必須となるが、米国は最高性能のGPUを中国に輸出させないというチップ封鎖政策をとってきた。中国AIの開発では、計算資源の確保が常に大きな課題として立ち塞がることになった。
そのため、中国AIは効率的な演算をする技術が進んだ。その最たるものはMoE(Mixture of Experts、専門家混合モデル)の採用だ。考案をしたのはグーグルの研究チームだが、初めてフラグシップモデルに採用したのはMiniMaxやDeepSeekなどの中国AIだ。
一般的なAIはひとつのモデルからできている。そのモデルが大規模になれば、それに見合ったメモリーや計算資源が必要になる。一方、MoEは1つの指揮者モデルと8つ以上の専門家モデルからできている。利用者からの問い合わせがあると、まずは指揮者モデルがそれを解析し、どの専門家モデルに考えさせるべきかを判断する。そして、少数の専門家モデルが起動し、回答を生成する。
DeepSeekは全体では700Bのパラメーターを持つ巨大モデルだが、実際に動作する時は平均で40Bパラメーター程度の資源しか使わない。つまり、40Bという小さなモデル用の資源で、700Bという巨大モデル並の回答精度を出せることになる。
米国AIはMoEの採用に一歩遅れを取ってしまった。
中国AIのねらいはフライホイール効果
つまり、中国AIは、MoEによりそもそもが計算資源を多くは必要としない効率さがあるところに、電力料金も安いため、価格を安く設定できる。
さらに、戦略的に価格を抑えようともしている。ねらっているのは、フライホイール効果だ。AIは開発時点での性能だけではなく、その後、実際に利用され、そのデータを学習することで性能があがっていく。つまり、たくさん使われるAIほど賢くなっていくのだ。このフライホイール効果で弾みをつけて、米国AIを追い抜き、突き放そうとしている。アプリやソフトウェアの裏側では、米国AIと中国AIの激しい競争が進んでいる。
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