米国で小包免税措置が廃止され、中国越境ECのTemuとSHEINは大きく販売数を落としている。ところが、英国でも同様の議論が進み、免税措置が撤廃される方向で動いている。欧州の他国にも飛び火をする可能性があるとBBCが報じた。
小包の免税措置が廃止され苦境に立つ中国越境EC
今年2025年4月、米国はデ・ミニミスプロビジョンを廃止した。これは輸入される個人宛小包で内容の商品価値が800ドル以下のものについては、一律で関税をかけないという優遇策だ。個人輸入を活発化させるために、2016年に上限が200ドルであったものが800ドルに引き上げられた。
ところが、これをうまく利用したのが、中国の越境EC「Temu」(テム)と「SHEIN」(シーイン)だった。注文を受けると、中国の倉庫から個人小包として海外に発送。多くが低価格商品であるために、関税が免除され消費者の元に配達される。
TemuとSHEINの低価格戦略は米国の消費者の心を捉え、一気にシェアを広げたため、国内の小売業者からは不公平だという不満があがっていた。さらに、鎮痛剤オピオイドによる中毒が蔓延する問題が起こり、米トランプ大統領は中国からのオピオイド原料の流入を止めるため、さまざまな関税をかけ始めた。その一環としてデ・ミニミスプロビジョンも廃止された。
英国でも同様の問題が起きている
これにより、TemuとSHEINのシェアは一気に低下。両社は米国以外の市場の開拓に力を入れ始めている。
似たような問題が起こっているのが英国だ。英国でも商品価値135ポンド(約2.7万円)以下の個人宛輸入小包の関税は免除されている。
英国税務税関総局(HMRC)によると、このような中国からの免税小包の価値は、2024年年度が13億ポンドだったものが、2025年度には30億ポンドと2.5倍に倍増している。中国以外からの小包はわずかにしか増えていない。中国からの小包の多くがTemuやSHEINなどの商品であると思われる。

消費者は同じものであればTemuで買ってしまう
英国でも、米国と同様に小売業者から不満の声があがっている。ギフト卸業Ancient Wisdomの責任者、カテリーナ・ブッチ氏は、この免税の仕組みが同社の業績に影響を与えているという。「消費者は、同じものがTemuなどで安く購入できることを知っているため、もはや私たちには注文してくれません。政府は、この規定により中国の企業が大量の製品を輸入してくれることを許すべきではないと思います。私は、彼らがどれぐらいの税金を英国に納めているか知りたいです。私たちは英国に税金を納め、英国市民を100人以上雇用しています」。

廃止には慎重な意見もある
一方で、慎重な意見を持っている人もいる。NBKリテールの小売アナリストのナタリー・バーグ氏だ。免税優遇の廃止は、低所得の消費者と英国内で免税政策を利用して事業を展開している中小企業に打撃を与えることになる。「これは、塞ぐべき抜け穴かもしれませんが、政府は最終的に消費者や中小企業の利益を損なわないようにする必要があります」。
英国でも中国越境EC排除の動き
最終的には、廃止の方向で向かいそうだ。英国小売業者協会(BRC)は、正式に政府に対して免税制度の見直しを陳情した。同協会のアンドリュー・オピー氏は、「低価格輸入品が英国小売業者の重大でますます深刻化する脅威である」と述べている。また、一般的な輸入品のように通関検査を受けないことから、「規制を受けず、安全ではない可能性のある製品が流入するリスクもある」と述べている。
現在、英国では財務省の調査が進められている。これは英国だけのことではなく、他国でも米国に続いて、TemuとSHEINの排除が始まる可能性がある。TemuとSHEINにとっては大きなリスクに直面したことになる。
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