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ラッキンが2万店舗目を開業。ライバルのクーディーは店舗内店舗で5万店舗を目指す

ラッキンコーヒーが2万店舗目を開業したと発表した。すると、ライバルのクーディーは「3年で5万店舗」計画を発表、出店競争が激化をしている。クーディーは店舗内店舗を活用して、出店数を増やすとともに利益率を改善するねらいがあると界面新聞が報じた。

 

ラッキンコーヒーが2万店舗目を開店

中国のカフェチェーン競争は、瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin Coffee)と庫迪(クーディー、COTTI COFFEE)の一騎打ちの様相になってきた。すでにスターバックスは店舗数でも売上でもラッキンに大きく水を開けられている。そればかりでなく、店舗数でもクーディーが6800店舗、スターバックスが7300店舗と迫りつつある。

その中で、ラッキンは2万店舗目のカフェを開業したと発表した。すると、対抗するクーディーは、年内に8000店舗を達成し、3年以内に5万店舗を展開すると発表した。クーディーは、現在の9.9元コーヒーのキャンペーンを2026年いっぱいまで続けるとも発表しており、店舗数競争だけでなく、引き続き価格競争も続くことになる。

▲ラッキンとスターバックスの店舗数の推移。スターバックスは店舗コストもかかるため急速に店舗拡大をすることは難しい。ラッキンはいよいよ2万店の大台に乗った。

 

スターバックスもクーポンで実質値下げ

スターバックスは、ブランドイメージがあるため、表向きは価格を下げることはできないが、「39.9元2杯」「49.9元3杯」のクーポンの販売を始め、実質半額以下で飲めるキャンペーンを始めているが、苦しい戦いを強いられている。

スターバックスの戦略はサードプレイス=上質なコーヒーを上質な空間で味わってもらうというものだが、店舗はいつ行っても満席であることが多く、結局テイクアウトをせざるを得なくなる。コーヒーの品質だけを見れば、価格1/3のラッキンやクーディーも遜色がなく、多くの客が流れてしまっている。スターバックスは上質な空間をつくるために出店コストも高く、店舗数を急速に増やすわけにもいかない。スターバックスは、ラッキンやクーディーとは別路線のカフェとなりつつある。

▲横軸店舗数、縦軸客単価のカフェ2軸マップ。スターバックスは客単価が高いため、ラッキンとクーディーに客を奪われている。

 

クーディーは店舗内店舗で5万店舗を目指す

ラッキンやクーディーが目指しているのは、「どこにいても100m以内でコーヒーにアクセスできる」環境を実現することだ。しかし、そのためには桁違いの出店が必要になる。クーディーの5万店舗計画などほんとうに実現できるのだろうか。

その答えになりそうなのがCOTTI Express業態だ。コンビニなどにカウンターだけを出店する。カウンターは1.5m×0.75mという小さなもので、ここにコーヒーマシン、給湯器、製氷器などを置き、1日最大200杯のコーヒーを販売することができる。コーヒーをつくるのは、コンビニのスタッフを研修し、コンビニ側で対応してもらう。

このCOTTI Expressは、5万元の保証金を支払い、設備費などの15万元は分割で支払っていく方式だ。ドリップコーヒーの販売をまだ始めていないコンビニチェーンにとっては、低コストでコーヒーの提供ができることになる。

▲コンビニ「新佳宜」に出店した店舗内店舗のクーディー。店舗数を一気に増やすだけでなく、利益率を改善するための切り札にもなっている。

 

店舗内店舗は利益率も改善できる

これはクーディー側にも大きなメリットがある。9.9元コーヒーの原価内訳は、原材料5.7元、カップ1.5元、人件費1.9元、光熱費0.2元、家賃1.8元の合計11.1元という赤字になっている。それでもシェアを取るために、資金を燃やして9.9元コーヒーを販売し続けなければならない。

ところがCOTTI Expressでは、人件費と光熱費、家賃をコンビニ側に負担してもらうことができるため、総コストは合計7.2元となり、9.9元で販売しても、利益率は27%になるのだ。

5万店舗を出店する、2026年末まで9.9元を続けるという戦略の背後には、このCOTTI Expressを大量出店するということがあるのだと見られている。しかし、セブンイレブンやローソン、易捷などという大手コンビニは、すでに自ブランドのコーヒーを展開している。マクドナルド、KFCというファストフードも独自のコーヒーブランドを展開している。

つまり、まだコーヒーブランドを提供していないチェーンとの提携が必要になる。コンビニ、ファストフード、スーパーだけでなく、ホテル、駅、娯楽施設なども考えられるが、このような提携先がどれだけ見つかるかがクーディーの戦略の鍵になりそうだ。