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miHoYoの新作「ゼンレスゾーンゼロ」に思わぬ不評。新体制miHoYoに何が起きているのか

miHoYoの新しい対策「ゼンレスゾーンゼロ」が不評だ。ゲームとしてのクオリティは高いものの、miHoYoの新作としては期待外れだと感じている人が多い。中心人物であった蔡浩宇が抜けたことによる影響ではないかと新浪科技が報じた。

 

評価が芳しくないmiHoYoの新作「ゼンレスゾーンゼロ」

「原神」で世界的なヒットを飛ばしたmiHoYo(ミホヨ)の新作「絶区零」(ゼンレスゾーンゼロ、ZZZ)が思わぬ不評の逆風にさらされている。米国のゲーム批評メディア「GameSpot」はレビュー(https://www.gamespot.com/reviews/zenless-zone-zero-review-hackers-delight/1900-6418247/)で7点を与え、合格点だとした。しかし、「ZZZは新しく魅力的な要素を統合したが、欠点は退屈な時間を強要されることだ」と評している。

ゲームプラットフォーム「TapTap」では、8.7万人が評価をし、その平均点は6.3だった。「原神」は7.9であり、「崩壊:スターレイル」は7.4であり、これまでのmiHoYoのプロダクトと比べて明らかに評価が低い。

▲ZZZはアメコミ風の空間で、アニメ風の二次元キャラが活躍をする。miHoYoならではのスタイルになっている。

▲TapTapでのユーザーからの評価。左から「原神」「崩壊:スターレイル」「ゼンレスゾーンゼロ」。ZZZは明らかに評価が低い。

 

表現としては成功をしているZZZ

ZZZが意欲的な作品であることは誰もが評価している。アメコミ風の美術を採用し、近未来都市の中で戦いながら謎を解いていくというスタイルは誰もが評価している。緻密なグラフィック空間の中で二次元アニメキャラが活躍する「miHoYoスタイル」も健在だ。さらには小物にまで行き届いたセンスのよさは、丁寧に作りこまれている上質さを感じさせる。

また、コミックとアニメとゲームの3つのコンテンツをシームレスに統合しようという試みも成功をしている。コミックよりも躍動感があり、アニメよりもストーリーに深く入りこむことができ、ゲームよりもストーリー展開が早い。

▲あいかわらず美術周りのセンスは素晴らしい。それだけに期待をしている人も多かった。

 

ロード待ちがたびたび発生する

しかし、欠点も多く、それを克服することができなかったようだ。ひとつは複数のメディアを融合しようとしたためか、ゲームの途中でデータのロードにより頻繁に中断されることだ。せっかく、テンポのいいコンテンツとして楽しめるはずが、その度に現実に引き戻される。miHoYoのゲームの特徴として、性能の低いスマートフォンでもバトルをストレスなく楽しめるところはあいかわらず素晴らしいが、性能の低いスマホではデータのロード待ちに長い時間がかかる。

▲フィールドも緻密な空間の中を自由に動き回ることができる。しかし、その空間はせまく、オープンワールドを期待していた人には思惑が外れた。

 

バトルの難易度が大きく下がり、物足りなさも

さらに、miHoYoのゲームの最大のウリである、爽快感のあるバトルにも不評が寄せられている。初心者を意識しすぎたのか、バトルが単純になり、難易度が大きく下がっているのだ。

「原神」のバトルは難易度が高かった。元素と呼ばれるキャラクターの固有属性の組み合わせを考えなければならず、さらにバトル方法も相手の弱点を見極めて攻撃するなどのテクニックが必要となる。エリアボスを倒すには、何度も失敗をして、属性の組み合わせを考え、攻撃テクニックを工夫しなければならなかった。この難易度の高さにより挫折をし離脱をしてしまうユーザーも多いが、それだけに突破した時には爽快感が得られた。いわゆる「やりこみ要素」が多かったのだ。

一方、ZZZのバトルはレベルをあげて臨めば、戦術を工夫することなく突破できてしまう。特に、ルート途中のバトルは「作業」としか感じられなくなっている。

▲ZZZのバトルシーン。原神に比べて難易度は大きく下がり、初心者にも優しくなっている。その分、やりこみ要素が減ってしまった。

 

不評が集中したマス目迷路

また、多くのプレイヤーが退屈さを感じているのが、謎のマス目ルートだ。エピソードが始まると、プレイヤーは異空間のマス目状の迷路に飛ばされ、これを上下左右に移動することで出口を見つけなければならない。多くの人が、レベルの高いグラフィック美術が適用されたダンジョンや迷路を期待しているのに、20年前に戻ったかのようなマス目の迷路を移動することになる。

▲謎のマス目迷路。たびたびこのマス目迷路が登場し、ゴールを目指さなければならない。電脳空間で脱出口を探すという設定だが、大作ゲームには似つかわしくない演出だ。

 

miHoYoのDNA、蔡浩宇が抜けた影響か

中国では7月4日に正式リリースとなり、すぐにアップルのAppStoreランキングで1位となった。しかし、その1位はわずか4日か持たず、現在では32位にまで沈んでいる。

ZZZが多くのmiHoYoファンを失望させたのは、miHoYoの体制が変化したことに関係しているかもしれない。miHoYoは、蔡浩宇、羅宇皓、劉偉の3人により創業された。この3人の役割分担は明快で、蔡浩宇が美術と技術、羅宇皓が運営、劉偉がビジネスを担当していた。特に、蔡浩宇は根っからのオタク青年で、彼の偏執なまでのこだわりが「原神」などの細部に至る品質を決定していた。それが、資金を持っていないmiHoYoから「崩壊3」「原神」といった密度のある品質のゲームが生まれることになり、世界を驚かせることになった。

しかし、蔡浩宇はすでにmiHoYoを引退し、先端科学技術の研究を視察し、それを事業化するプロジェクトに専念をしている。つまり、miHoYoのDNAとも言える人物が開発チームから抜けたことが、大きく影響しているのではないかと見ている人が多い。

つまり、ZZZは、新体制のmiHoYoの試金石でもあった。もちろん、ZZZの収入は順調で、中堅ゲームメーカーであれば、じゅうぶんにヒット作と呼ばれるだろう。しかし、miHoYoの新作としては誰もが物足りなさを感じる。miHoYoは普通のゲーム会社になってしまうか、それともmiHoYoであり続けるのか、重要な分岐点を迎えている。