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無料クーポン配布で使われる「シュレーディンガー方式」とは。無料クーポンの新しい活用手法

カフェチェーンのクーポン競争は、ついに0元クーポンにまで進んだ。しかし、ラッキンは銀行やBMWと提携をし、ブランドイメージを高めることに利用している。また、クーディーはシュレーディンガー方式での配布を行い、公式アカウントへの注目度を高めるなど、各社、無料クーポンの使い方が工夫されていると潤発が報じた。

 

クーポン販売競争はついに0元クーポンへ

スターバックス、瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin)、庫迪(クーディー、COTTI)の3つのカフェチェーンが激しい競争をする中国。特にクーディーは創業1年で6000店舗となり、スターバックスの6800店舗に迫ろうとしている。ラッキンはさらに店舗数を伸ばし、1万3000店舗を突破している。

このしのぎを削る競争の中で、クーディーは8.8元クーポン、ラッキンは9.9元クーポンをライブコマースで販売することで、新顧客を惹きつけようとしている。しかし、この競争は激化をし、クーポンの相場はいよいよ0元に達しようとしている。

▲クーディーの無料クーポンがたくさんあることを自慢する投稿。

 

銀行、BMWと提携し、スターバックスの客を奪う

ラッキンコーヒーは、スターバックスの顧客である都市の中産階級を奪うために、大手銀行との提携を進めている。大手銀行では貯蓄額や理財商品の購入に応じてポイント還元を行なっている。このポイント還元の対象商品として、ラッキンコーヒーの0元クーポンを提供した。

中国銀行の場合は、1万ポイントでラッキンの無料クーポンに変えられる。しかし、1万ポイントを得るには、最低でも20万元(約400万円)の預金額が必要だ。20万元の残高があれば、毎月2500ポイントが還元される。他の銀行でも同様で、銀行から無料クーポンをもらっているといことは、一定程度の預金があるということで、SNSでは自慢の種になる。

また、自動車のBMW中国はBMW会員に対して、年24杯分のラッキンの無料クーポンを配布している。もちろん、BMWを所有していなければならない。これもSNSでは自慢となり、拡散をする要素となり、なおかつ、ラッキンのブランドイメージを高めることに貢献をしている。

中信銀行の還元ポイントでラッキンのコーヒーをもらった人がSNSで報告をする。一定以上の預金がないと還元ポイントがもらえないため、自慢できることだからだ。このような投稿が、ラッキンのブランドイメージをあげ、スターバックスの顧客を奪うことにつながっている。

BMWのオーナーになると、1年間で24杯分のラッキンの無料クーポンがもらえる。これもラッキンのブランドイメージをあげることに貢献している。

 

初めてコーヒーを飲む学生に照準

学生は0元クーポンを手に入れやすい。大学生になって人生で初めてコーヒーを飲む人が多いため、各コーヒーチェーンは、大学生に対して積極的にアプローチをしている。大学ではキャンパスカードを導入しているところが増えている。キャンパスカードとは、一種のプリペイドカードで、主に学生食堂や学内商店の支払いに使う。これを提供しているのが通信キャリアや各種決済企業で、さまざまな特典をつけている。例えば、通信キャリアのキャンパスカードであれば、学生向けの格安スマホプランが利用できたりする。

このキャンパスカードとラッキンはプロモーションで提携をしている。例えば、京東(ジンドン)のキャンパスカードは、0.1元で取得することができ、15元分のチャージとラッキンコーヒーの無料クーポンがついてくる。

▲初めてコーヒーを飲む学生にも無料クーポンは配られる。大学で利用できるプリペイドカードにはラッキンの無料クーポンがもらえる特典がついている。

 

シュレーディンガー方式を活用するクーディー

クーディーはシュレーディンガー方式と呼ばれる0元クーポンの配布を行っている。シュレーディンガー方式とは、ネット用語で、いつ配布されるか告知もされず、全員ではなく一部の人にのみ配布されるというものだ。

いつ、誰に配布されるのかがわからないため、0元クーポンが欲しい人は、SNSやECなどのクーポンコーナーを頻繁に見ることになり、クーポンによりプロモーション効果があがる。

このようなラッキーな体験をしたことがSNSなどにその報告をすることにより、クーポン配布のプロモーション効果が高くなることをねらっている。

▲カフェチェーンのポジションマップ。横軸は店舗数、縦軸は客単価。右上の象限はスターバックスの独占となっている。ラッキンは、客単価はそのままで、ブランドイメージでスターバックスに肩を並べることが目下の課題になっている。

 

クーポン手法が進化をしていくカフェ競争

このような0元クーポンは、譲渡することはできず、期限も設定されている。使用期限が近づくと、スマホは期限切れのアラートを通知することになる。これにより、多くの人が0元クーポンを使用していると推定される。

半額クーポンなどにも期限は設定されているが、未使用のまま放置をしてしまう人はけっこういる。コーヒーを飲みたくもないのに、半額とは言えお金を払ってコーヒーを飲もうとする人は多くはないからだ。しかし、0元クーポンは多くの人がきちんと消化をする。「期限までに使わないと損をする」という心理が働くからだ。

0元クーポンは、商品をタダで配ることになり大判振る舞いに見えるが、0元クーポンの消化率は高く、集客効果は高い。コーヒーを飲むという行為は習慣性があり、出勤前にコーヒーを買うという習慣がついてしまうと、クーポンがあろうがなかろうがコーヒーを買うようになる。0元クーポンの効果はかなり高い。

また、どこでどのように誰に配布されるかを明らかにしないシュレーディンガー方式の配布にすることで、その情報がSNSで拡散するようになり、そこでもプロモーション効果が得られる。

カフェチェーンの0元クーポンは、一見、大判振る舞いに見えて、それによる効果でカフェチェーンはより大きな利益を得ている。