中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国で始まった海外渡航。日本へのインバウンド旅行客はいつ戻ってくるのか

 

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明日、vol. 065が発行になります。

 

日本の街の風景の中から、中国人観光客の姿が消えて1年が経ちました。中国人インバウンド客は、日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2019年には、約960万人が日本を訪れ、訪日外国人の約30%を占めていました。それがコロナ禍によりほぼゼロになってしまいました。JNTOの統計によると、2021年2月の訪日中国人は1700人となっています。ほとんどは、ビジネスか肉親との面会でしょう。

観光業だけでなく、飲食業、小売業などにとって、インバウンドは大きな収入源でした。それがまるまるなくなってしまうことにより、厳しい状況に追い込まれている方も多いかと思います。

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▲この2年間の訪日中国人数。2020年1月は前年越えだったものが、2月以降、ほぼゼロの状態になっている。日本政府観光局(JNTO)のデータより作成。

 

一方で、中国では再び旅行熱が高まっています。新型コロナが終息して、マスク、体温検査、健康コード、長距離移動の制限は続くももの、長距離移動にあたらない周辺游と呼ばれる近場旅行が盛んになっています。

中国文化旅游部の中国旅游研究院は、今年の2月に「中国旅行経済ブルーブック(No.13)」を公開しました。この中に、2021年の旅行需要の予測が記載されています。

それによると、国内旅行は41億人で前年比42%の伸び、海外旅行は約70%の伸び、中国へのインバウンド旅行は約65%の伸びになると予測しています。と言っても、伸び率の基本にしている2020年の海外旅行はほぼゼロ状態なのですから、海外旅行に関しては本格的な回復は2022年からになると見ているようです。

中国メディアの中には、2021年前半に国内旅行を完全回復させ、後半から海外旅行、そして、2022年の北京冬季五輪を機に海外から中国への旅行を回復させるスケジュール感ではないかと見ているところもあります。

ただし、国内はともかく、海外旅行に関しては不確実です。相手国の感染状況とワクチン接種状況の進捗が関わってくるからです。中国旅游研究院のブルーブックでも、海外旅行の具体的な予測数字は書かれてなく、まだまだ不確定な要素が多いと注釈されています。

とは言え、すでに中国は、海外との交流に動き出しています。この3月には、中国版国際健康証明証の運用が始まりました。これはPCR検査、抗体検査などで陰性であった人、ワクチン接種を受けた人に発行する証明証で、スマホ版と紙版があります。あくまで中国独自のものですが、今後、相手国との交渉を進めていき、入国審査に使えるものとし、最終的には世界全体で共通して使われる国際健康証明証システムと連結する予定です。

 

私は感染症の専門家ではないので、あくまでも一般常識からの推測ですが、最も好ましいシナリオは、夏の東京五輪前後から中国人インバウンド客が戻り始め、秋の国慶節で回復基調が鮮明となり、2022年の春節で以前と同じ賑わいが戻ってくるというものだと思います。多くの方が、このスケジュール感を望んでいるでしょう。

一方、最悪のシナリオは、何年経ってもインバウンド客が戻ってこず、日本旅行ブームが終わるシナリオです。そんな話聞きたくないという方も大勢いらっしゃるかと思いますが、その可能性は否定しきれません。このメルマガでも何度か触れている「内循環」のライフスタイルが定着をし、旅行は近場に行く、身近なところで楽しいことを発見するという考え方が広がっています。

また、中国がパンデミックの起点であったにも関わらず、世界に先駆けて感染を抑え込んだことに対して、中国人は自国に自信を持ち、中国を再発見する「国潮」と呼ばれる考え方も広まっています。

中国版Tik Tok「抖音」(ドウイン)を通じてヒット曲になった「簡単的幸福」という曲のサビのフレーズは、「身近にあって、すぐそばにある幸せ。もう孤独になることはない」というもので、多くの中国人の共感を呼んでいます。海外に出かけて豪華なホテルでおいしい食事をするのもいいけど、自分の家族と食卓を囲む、子どもと遊ぶ、そういうところに幸せはあると考える人が増えています。新型コロナのロックダウンや外出自粛で、孤独になること、孤立することがいちばんつらいことだと感じたのだと思います。

 

つまり、旅行に対する考え方もがらりと変わる可能性があります。後で触れますが、参考にした資料のひとつ「2021中国旅行市場展望」(マッキンゼー&カンパニー)の副題は「非線形的復調にチャンスを探す」となっています。つまり、以前と連続した変化ではなく、がらりと状況が変わるということです。

少なくても、日本の感染状況が落ち着けば、中国人は自然に戻ってきてくれるだろうという考えが間違いであることは確かです。もし、観光関係者全員がそんな感覚であれば、中国人の日本旅行ブームは終わります。なぜなら、タイやベトナムというライバルたちはすでに動き出しているからです。

今回は、中国で国内旅行から始まった旅行業の復調をご紹介し、そして、中国人は再び日本旅行をしてくれるのかどうかを考えます。

 

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