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インドでSNSのデマにより20人以上が殺害

インドでSNSアプリ「WhatsApp」を通じてデマが大量に出回っている。そのデマを信じた人々が無関係な人を殺害するという事件が多発し、わかっているだけで20人以上が殺害された。インド政府もこれといった対策を打ち出すことができず、社会問題となっていると好奇心日報が報じた。

 

SNSで拡散していく数々のデマ

今年5月から、インドでSNSアプリ「WhatsApp」を通じたデマが出回っている。子どもを誘拐しようとする人間がうろついている、あるいは泥棒や牛を殺そうとする人間がうろついているというもので、このデマを信じた人々がまったく無関係な人を殺害するという事件が起きている。この被害に遭い殺害された人は20名を超えている。

7月3日、インド電子情報技術省は、政府はすでにこのデマ問題に対策を取り始めていると声明を発したが、具体的にどのような対策を取るのかは明らかにされなかった。

WhatsApp側では、利用者のプライバシーがあるため、相当の理由がないと個人のメッセージ履歴を提供することはできず、誰がこのようなデマの発信源になっているかについても捜査が難航している。

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▲ニュースの情報源にしているメディア。テレビは依然として高いが、印刷物の低下とSNSの高さが目につく。「2018デジタルニュース報告」より作成。

 

SNSが唯一の情報源になっている貧困地域

WhatsAppにとってインドは大きな市場で、全体のユーザー数の1/8がインド市場のものだ。インドでは、WhatsAppが、最も広く普及しているSNSメッセンジャーアプリであり、多くの人が使っている。

貧困地域や地方では、新聞や雑誌、テレビ、ラジオがほとんど普及をしていないのに、スマホを使いWhatsAppを使っている人がけっこういる。結果的に、WhatsAppが唯一の情報源になっていて、これがデマが起きやすく、拡散しやすい状況を生んでいる。

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▲オンラインニュースを見るときのデバイス。PCとスマートフォンがほぼ同じだが、スマホが増えつつある。「2018デジタルニュース報告」より作成。

 

マスコミからデジタルメディアへ。検索からフィードへ

ロイターのニュース研究所は「2018デジタルニュース報告」を公開している。これは各国の市民が、どのようなニュース情報源を利用し、どの程度信頼をしているかを調査したものだ。誰もが想像する通り、多くの国でテレビ、新聞といったマスコミからオンラインのデジタルメディアに移行し、デバイスの主役はスマホになりつつある。

また、デジタルメディアとの接し方も、検索からフィードへ移行し始めている。検索して何かを探すのではなく、SNSのタイムラインのように半ば受け身で得られる情報を摂取する時間が増え始めている。検索をして能動的に情報を探す場合は、異なる視点の情報が同時に見つかるが、フィード情報はひとつの視点のみで、このような情報に頼りすぎると、偏向したり、デマに踊らされがちになりやすい。

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▲ニュースへの信頼度。日頃使っている常用ソースのニュースに対する信頼度は高い。しかし、信頼度が低いのは、「ニュースを常に疑う」というリテラシーでもある。「2018デジタルニュース報告」より作成。

 

ニュースの信頼度低下はリテラシーでもある

同時に、各ニュースに対する信頼度は低下をしていっている。この信頼度の低下は悪いことばかりではない。SNSなどのフィード情報から得られた情報をすぐに信用しないというのはリテラシーのひとつでもあるからだ。

先進国でインドのような極端な事件が起きるとは考えづらいが、情報源がソーシャルマップに基づくSNSのフィード情報にシフトする中で、デマの拡散の問題はデジタル社会の大きな課題となっている。

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▲オンラインニュースに対する反応。シェアしたことがあるか、コメントしたことがあるかの問い。多くの国で、1/3以上の人がニュースに対して活発に反応している。「2018デジタルニュース報告」より作成。

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