テンセントのSNS「WeChat」が、TikTokに対抗するためにショートムービー機能「チャネルズ」を公開して以来、ファストフードやカフェなどのToC企業のムービー配信が盛んになっている。WeChat内の配信であれば、拡散しやすく、ミニプログラムなどの購買にも結びつきやすいからだと紅餐網が報じた。
ニュースもテキストよりもショートムービーに
中国では、インターネットの中心が、テキストや画像からショートムービーに移ろうとしている。「2021全景生態流量洞察報告」(QuestMoible)によると、2021年1月のサービス別の利用状況は、動画系が突出するようになっている。動画系は1日に20.4回、利用時間は2時間41.4分にもなっている。これは「ニュース、情報」のそれぞれ、2.5倍、2.0倍になる。
特に「抖音」(ドウイン、TikTok)、「快手」(クワイショウ)の2つのショートムービーは、情報プラットフォームになり始めている。ニュースなども映像付きで15秒で配信をされているため、テキストのニュースアプリを読むよりも早く理解できる。TikTokでニュースを知り、ニュースアプリで詳しく読むというのが定番スタイルになろうとしている。
▲すでにインターネットのメインストリームは動画系に移っている。利用回数、利用時間とも圧倒的。ショートムービーがあらゆるジャンルの情報源になっている。「2021全景生態流量洞察報告」(QuestMoible)より作成。
第3のショートムービー「WeChatチャネルズ」
その中で、第3のショートムービープラットフォームとして突然登場したのが、テンセントの視頻号(チャネルズ)だ。これはSNS「WeChat」の中の機能のひとつで、TikTokや快手と同じようにショートムービーが配信される。すでに国民インフラとなっているWeChatの中の機能であるため、多くの人が利用し、TikTok、快手に続く、第3のショートムービープラットフォームになっている。
「2020中国モバイルインターネット年度大報告」(QuestMoible)によると、2020年12月の月間アクティブユーザー数(MAU)はTikTokが6.5億人、快手が5.9億人となっている。また、テンセントは2020年12月にチャネルズの日間アクティブユーザー数が2億人を突破したことを公表した。TikTokのDAUは調査機関によると4億人程度、快手が3億人程度、ビリビリが0.5億人程度と見られている。チャネルズは少なくても、すでにビリビリを超えるプラットフォームになっていることは明らかだ。
▲WeChatチャネルズ。見た目、操作方法などはTikTokそっくりだが、WeChat内の機能であるため、SNS、ミニプログラムとスムースに連動する。
WeChatの莫大な利用者を目指して、ToC企業が反応
WeChatはもはやSNSと呼ぶのが適切ではなくなるほど、インフラ化をしている。DAUは10.9億人、毎日3.3億人がビデオ通話を使い、6.7億枚の静止画が公開され、1億本の動画が公開されている。
このような場であるため、すぐに企業の公式アカウントがチャネルズでの発信を始め、大きなビジネス機会が生まれようとしている。ある程度の規模の企業は、すでにTikTokや自社ウェブでショートムービーの配信は行っているため、同じ素材をチャネルズでも配信すればいいので、すぐに対応ができた。しかし、チャネルズが大きく違うのは、同じWeChat内にSNS、ミニプログラム、WeChatペイという決済が揃っていることだ。
これにより、チャネルズに配信したショートムービーで、キャンペーンなどの告知を行い、それがWeChatで拡散をし、ミニプログラムで購入してもらい、WeChatペイで決済してもらうという一連の流れができあがる。
▲ファストフード、カフェのWeChatチャネルズへの配信状況。WeChatはSNSやミニプログラムなどプロモーション環境が整っているため、ToC企業が鋭敏に反応して、ムービーの配信を始めている。
消費行動に直結できるWeChatチャネルズの強み
紅餐網では、2021年2月の段階の各企業のチャネルズの配信状況を調査した。すでにファストフード、カフェなど、消費者に近いサービスを提供する企業のムービー配信が活発になってきている。
テンセントの発表によると、2021年2月にトップ500のアカウントが7.9万のムービーを公開し、27.1億億回試聴されている。平均して3.43万回視聴されていることになる。
このようなショートムービーを生活サービスの消費行動に直結させることは、現在のところ、TikTokや快手にはできない。商品の紹介ムービーを配信して、購入に結びつけることができるだけだ。ToC企業にとって、WeChatがますます重要なチャネルになり始めている。