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固体電池の時代はいつ始まるのか。半固体電池の量産が始まっても普及に時間がかかる理由

すでに半固体電池は商業量産の段階に入り、NIOのET7にも搭載されている。しかし、まだまだ普及段階には入っていない。それには、価格、製造効率、標準化など乗り越えなければならない課題が残されているからだと藍字計画が報じた。

 

すでに始まった半固体電池の大規模量産

固体電池を開発している衛藍新能源https://www.solidstatelion.com/zh/)が上場準備に入っている。衛藍新能源は、中国科学院物理研究所が母体となり創業された企業で、中国リチウム電池の父と言われる陳立泉氏が中心となり、ファーウェイや小米、吉利汽車、蔚来などの精鋭が集まったオールチャイナ企業だ。

衛藍新能源は電気自動車(BEV)向けの半固体電池の量産を始めており、蔚来(NIO)のET7などに搭載をしている。航続距離は満充電で1000kmを超える。

この衛藍新能源が上場をすると、その株価はすぐに売り出し価格を超えるのではないかと、個人投資家からはまるで宝くじ扱いされるほどの期待を集めている。

▲固体電池は、従来の液体電解質の代わりに固体電解質を使うというアイディア。液漏れがなくなるため、発火の危険性がなくなる。また、寿命、容量なども大幅に向上する。

 

固体なら安全でもイオンは動けなくなる

衛藍新能源の技術的な突破は注液式半固体電池にある。私たちが現在使っているリチウム電池は正極と負極があり、その間を液体が満たしている。両極の間に液体があるため、イオンは自由に行き来をすることができ、大きな電力を供給してくれる。

しかし、この液体は可燃性のものを使わざるを得ず、これが過熱や損傷などにより漏れ出し着火するという安全性での大きな問題を抱えていた。

そこで、満たす電解質を固体にしてしまおうというのが固体電池のアイディアだ。しかし、これは難しい。イオンがうまく移動してくれないのだ。水槽に塩を入れるとすぐにイオンになって溶けてくれる。塩のイオンは自由に移動することができる。しかし、レンガに塩を溶かそうとしても溶けるはずがない。この問題を解決しなければならない。

▲半固体電池では電極と電解質が密着をする。しかし、固体電池ではこの密着ができないため、イオンがうまく流れない。

 

液体電解質を注入後に固化させる

そこで、衛藍新能源は、注液式半固体電池を開発した。これは電池をつくったら、そこに液体電解質を入れる。ここまでは従来の電池と同じだ。しかし、この液体電解質は紫外線をあてると固化する。これにより、電解質を固体化してしまうというものだ。

正極や負極とも、元々が液体であるため、非常にうまく密着をし、イオンを通してくれる。また、損傷を受けても固体であるため、漏れることがなく、発火の危険がない。

▲衛藍新能源は注液式半固体電池を開発した。液体電解質を注入し、紫外線をあてることで固化する。電解質が電極に密着するため、固体電池のデメリットが解消される。

 

14時間1044kmの走行実験

この半固体電池は、2023年12月に、NIOのET7に搭載され、NIOの李斌CEOが自ら運転し、走行テストを行った。上海からスタートし、当時の気温は-2度であったためエアコンをつけたまま14時間01分を走り、アモイに到着した。最終的にバッテリーが3%残っていた。走行距離は1044kmに達した。

▲NIOではET7に半固体電池を搭載し、李斌CEOが自ら走行試験を行い、ライブ配信した。上海からアモイまで、エアコンをつけて、無充電で1044kmを走り切った。

 

課題は多く、普及にはまだ時間が必要になる

しかし、半固体電池を搭載した自動車を販売するのは簡単ではない。正極にはニッケル、負極にはシリコンカーボンという高価な材料が必要になるため、価格が非常に高くなる。

具体的な価格は不明だが、NIOの秦力洪総経理は、この半固体電池の価格は「NIO ET5一台分に相当する」と発言したことがある。試験量産時のこととは言え、30万元(約680万円)程度になる可能性がある。

さらに、量産効率の悪さだ。歩留まりが悪く、不良品のコストまでが乗ってくる。この半固体電池は2021年に発表されたが、量産が開始されたのは2024年になってからだ。歩留まりをあげるのに相当な苦労をしたと思われる。

さらに、標準化がまだできていない。現在の半固体電池は、NIOのオーダーメイドに近く、サイズやインタフェース、熱管理システムなどはすべてNIOのシステムに適合するように開発されている。もし、他社がこの半固体電池を搭載したいとなった場合、その企業のシステムに合うように、設計からやり直す必要がある。

半固体電池は、開発から量産までは何とかこぎつけた。しかし、普及にまではまだ時間がかかる。さらには全固体電池となると、まだまだ長い時間がかかることになる。

 

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