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ライドシェアで増加する酔客によるトラブル。発生率は減少だが、酔客利用が増加

滴滴出向は、「2019年1ー3四半期酔客乗車安全透明度報告」を公開した。車内トラブルの半数は、酔客によるもので、暴力、運転妨害、車内嘔吐、居眠りなどの問題を引き起こしていると滴滴安全が報じた。

 

ライドシェアのトラブルの半分は酔客によるもの

滴滴出向のライドシェアでは、2019年第1四半期から第3四半期までの9カ月間で、酔客に関連するトラブルが3万7607件あった。これは10分に1件と高い頻度になる。この内、口論、暴力などにいたったケースが4479件あった。

全体の口論、暴力トラブルのうち、酔客とのものは49.1%にあたる。この内、ドライバーが通報したものが81.5%、乗客が通報したものが18.5%となっている。

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▲ドライバーと乗客の間のトラブルの半数は酔客によるもの。トラブルの発生率は0.0042%と低いが、酔客によるトラブルは、警察や入院など重大な結果につながることが多い。

 

性的トラブルの被害者は圧倒的にドライバー

また、性的トラブルは1170件あり、全体のトラブルの0.14%だった。多くの人は、男性ドライバーが女性乗客に対する性的ハラスメントを想像するが、実態は異なっており、ドライバーが被害を受けるケースが全体の87.6%になっている。

しかも圧倒的に多いのが、男性乗客が男性ドライバーに対して性的ハラスメントを行うケースだ。また、女性ドライバーの数は多くはないのに、女性ドライバーの被害報告も多い。

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▲性的ハラスメントの被害者は、ドライバーの方が圧倒的に多い。しかも、男性ドライバーが男性客から性的ハラスメントを受けるというケースが最も多い。「男性運転手:女性客」は「男性運転手が女性客を訴えた」の意味。

 

トラブルの数は少ないものの酔客トラブルが増加中

滴滴出向がこのような酔客によるトラブル統計を公表したのは初めてのことだ。トラブルの発生率は、0.0042%と低く、しかもそのうちの35%は虚偽の通報で、警察に通報したトラブルの発生率は100万乗車あたり0.058件、刑事事件として起訴されたトラブルの発生率は100万乗車あたり0.005件ときわめて少ない。

しかし、酔客によるトラブルが増え続けているため、今回の公表となった。

 

酔って醜態を晒すのはタブーな中国人社会

数が少ないとは言え、酒によるトラブルがライドシェアで増えているという事実が、中国人を驚かせている。

中国の都市部では、酔っ払いが歩いていることを見かけることはまずない。レストランでも、青島ビールを飲んでいる人はいるが、多くの人がお茶や王老吉(ワンラオジー)などのソフトドリンクを飲んでいる。

しかし、お酒を飲まない社会ではない。個室や個人宅というプライバシーが確保される場所では、仲間が集まって、浴びるように大量の酒を朝まで飲んでいる。酒が嫌いなのではなく、酔った姿を人に晒すことに抵抗があり、公共の場所で酔っ払っている人は、基本的に「ダメな人」「落伍者」だと見なされる。

そのため、飲むことがわかっている時は、車でいく人が多かった。行きは自分で運転をし、帰りは代行ドライバーを頼み、酔った姿を公に晒すことなく、自宅に帰る。

それがライドシェアが普及するにつれ、行きも帰りもライドシェアを使うことになり、ライドシェア社内での酔客によるトラブルの増加につながっている。

 

酔って運転手と殴り合い

滴滴出向では、典型的なトラブル事例を4つ挙げている。

2019年5月の深夜、広東省のドライバーが酔客を乗せた。指定された目的地に到着をしたが、客は降りようとせず、車を発車させろと言い張った。口論となり、ドライバーは乗客を下ろそうとドアを開けた時に、乗客がドライバーの首をつかんだため、トラブルとなった。双方が殴り合う事態に発展し、結果、ドライバーは大怪我をし、救急搬送され、ICUに入院することになった。公安は、その乗客を故意傷害罪で立件し、滴滴出向ではその乗客のアカウントの使用制限を行なった。

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滴滴出行が公開した酔客によるトラブル4事例。「暴力による衝突」「運転の妨害行為」「車内での嘔吐」「乗客の居眠り」(到着しても起きてくれないなど)。

 

女性客が眠った間にドライバーがセクハラ

2019年6月の深夜、杭州市の男性ドライバーが女性の乗客を乗せた。その女性は、後部座席に座り、乗車中に居眠りを始めた。目的地について、乗客が目覚めてみると、自分のスカートがめくられていることに気がついた。乗客は、警察と滴滴出向に通報をした。滴滴出向では、ドライブレコーダーなどの調査の後、乗客の訴えが真実だと認定、ドライバーのアカウントを永久停止した。

 

男性客が男性ドライバーにセクハラ

2019年4月の深夜、福州市の男性ドライバーが男性の酔客を乗せた。乗客は助手席に座り、運転中に唐突にドライバーの太腿を触ってきた。さらに、ドライバーの股間を握ってきたので、ドライバーは手を押し除け、目的に着いた段階で、滴滴出向に通報した。ドライブレコーダーなどの調査の後、ドライバーの訴えが真実だと認め、その乗客のアカウントの使用制限を行なった。

 

酔った乗客が自分で運転し、多重事故

2019年3月の深夜、代行ドライバーが利用者の車を運転した。しかし、酔っている利用客はドライバーの運転が遅すぎると怒り出し、途中で強制的にドライバーを下車させた。ドライバーはそれ以上のトラブルを避けるために下車したが、利用者は酔ったまま自分の車を運転して去っていった。その後、多重事故を起こし、酒酔い運転をした利用客は死亡した。

 

酔って公共交通を利用するときは素面の人の同伴がルール

滴滴出向のルールでは、酔った状態での利用は禁止をしている。酔っている場合は、素面の同伴者との乗車を求めている。これは、実は、中国の多くの都市のタクシー、バス、地下鉄などでも定められているルールだ。

滴滴出向では、酔客が乗車する場合には、事前に酒を飲んでいることの申告を義務付ける仕組みを導入した。車を呼ぶ時に、酔っていることを申告し、連絡できる人の携帯電話番号を入力する。この申告を行なっておくと、酔客が単独でもライドシェアを利用することができる。

暴力トラブルなどの場合は、公安や滴滴出向に通報をするが、それ以前の車内での嘔吐、眠ってしまい起きてもらえないなどの軽微なトラブルの場合は、ドライバーが直接、登録された人に連絡を取り、対処する。

また、ドライバー側も、乗客が酔っていると判断した場合は、トラブルがなくても乗車時に報告することを義務付けるようになった。

 

申告ルール導入後トラブルは一時的に減少

1日平均で、ドライバーの報告では1日で11万乗車、乗客の自己申告は1日に8.6万乗車となっていて、乗客もこのルールをほぼ受け入れらている。そのため、統計機関の最後の8月と9月には、トラブル件数が減少に転じたという。

しかし、酔客の利用そのものも増え続けているため、滴滴出向では、今後も効果的な対応策をしていくという。

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