タクシーに乗ってもいないのに乗車料金が支払われる事件が連続している。その背後には、乗っ取りが行われたスマホ決済アカウントを利用する犯罪集団がいると九派新聞が報じた。
自宅にいたのに、タクシーに乗っていることになっていた
広州市天河区に住む呉俊さん(仮名)は、3月10日にタクシー配車アプリ「滴滴出行」で、222.99元の乗車賃が支払われていることに気がついた。3月7日に福建省泉州市で乗車したことになっているものだが、呉俊さんは、その日、福建省に行っていないどころか、広州市の自宅で休んでいた。もちろん、滴滴を利用していない。
すぐに滴滴出行の顧客センターに連絡を取った。滴滴の担当者が調査をすると、決済されたスマートフォンの製造番号が、呉俊さんが普段使っているものと異なっていることが判明した。滴滴はこの支払いを無効にし、呉俊さんにパスワードを変えるなどセキュリティ対策のアドバイスをした。
SNSで160円で販売されているアリペイアカウント
このような問題は、滴滴以外のタクシー配車、ライドシェアでも起きている。多くの場合、顧客センターに相談をすることで解決できるが、そもそもなぜこのような問題が起きるのかがわからないと不安になる。
九派新聞の記者は、この問題を追跡した。すると、SNS「QQ」でスマホ決済「アリペイ」のアカウントを販売しているグループを発見した。そのグループには700人ほどが参加をし、アリペイのアカウントを1つ9.36元(約160円)で販売をしている。
記者は取材のために、このアカウントを購入してみた。すると、名前や携帯電話番号などもわかり、同時にEC淘宝網(タオバオ)、電子メール、タクシー配車「滴滴」「高徳地図」などが利用できる状態になっていた。
つまり、呉俊さんのアカウントもこのように販売をされて、転売され、他人に悪用されたのではないかと思われる。
不正アカウントを使えばすぐに露見する
しかし、このようなクラックされたアカウントを普通の人が簡単に使うことはできない。他人の口座からお金を盗むことになるので、罪は重く、公安も積極的に捜査を行う。アリペイもWeChatペイも安全性を重要視しているため、このような問題には積極的に公安に情報提供し、連携をする。使用した店舗、位置情報、店舗や該当の防犯カメラ映像から、すぐに特定され逮捕されるのが通常だ。
つまり、アリペイのアカウントがネットで売り買いされていると言っても、普通の人にとっては使い道がないのだ。そのため、低価格で販売されているようだ。
▲記者が取材のために呼んだ、乗車料金が激安になるタクシー。犯罪集団とグルになっているものだと思われる。
フリマアプリで販売されている格安タクシー乗車の権利
記者が取材を続けると、中古品売買のフリーマケットアプリ「閑魚」(シエンユ)で、タクシー配車が売りに出されているのを発見した。連絡を取ると、例えば武漢から長沙までの350km程度が普通であれば1000元を超える料金になるところを200元でいける権利だという。
これも取材のため、記者は、このタクシー配車の権利を購入してみた。すると、名前や乗車地、目的地、携帯電話番号を聞かれて、車を用意するという連絡が入った。滴滴で配車した車を回すので、携帯電話番号の末尾4301だと告げて乗車してほしいという。そして、運転手に200元を支払ってほしいという。その場合、滴滴出行のアプリは使わず、直接現金かスマホ決済で運転手に支払ってほしいという。
正規の料金は、不正アプリアカウントに請求というカラクリ
これは、滴滴出行などに用意されている代理配車の機能を使ったものだ。他人のためにタクシー配車やライドシェアを注文する機能が用意されていて、支払いは代理で配車した本人が行うというものだ。
つまり、このタクシー配車の権利を販売していた者は、代理配車の機能を使って、車を回し、グルになっている運転手の車を指定する。そして、クラックされたアリペイのアカウントを使って、滴滴に正規の料金を支払う。運転手には乗客から直接支払われる200元と、滴滴からの正規の乗車賃が入るので、これを山分けするという手口のようだ。そして、請求はアリペイアカウントを盗まれた被害者の元にいく。
正規料金と乗客から二重取りをする犯罪
正規料金よりも安くタクシーに乗れるということから、長距離乗車の時に、このような怪しいタクシー配車を利用する人がいて、運転手と犯人は、長距離の客を効率よく見つけることができ、正規料金よりも多く稼ぐことができる。不正入手したアリペイアカウントから正規の手数料が入り、さらに乗客から直接200元の現金を手に入れることができる。
このような不正行為は、滴滴出行だけでなく、他のタクシー配車、ライドシェアでも横行をしている。
すでに滴滴出行では、この問題を把握していて、閑魚を始めとするフリマプラットフォームに対して、タクシー配車の出品をしないように協議をし、このような商品は出品できないようになっている。また、各地公安とも連携し、背後にいる犯罪サプライチェーンの捜査が始まっている。