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北京のスシローが大人気。予約は2ヶ月先までいっぱい。寿司人気だけではない、スシローの賢い施策

北京のスシローの異常とも言える人気が続いている。予約は2ヶ月先までいっぱい、週末には400組が行列に並ぶ。この人気は、寿司の魅力だけでなく、中国人の嗜好を理解したスシローの賢い施策にもあったとVista商業が報じた。

 

北京のスシローが異常とも言える人気に

中国に54店舗を展開する「スシロー」が好調だ。特に北京での人気が高い。スシローでは、WeChatミニプログラムで座席の予約と当日の順番待ちができるようになっているが、座席予約では最盛期には2ヶ月先まで満席、現在でも2週間ほど先でなければ予約を取ることができない。当日の順番待ちでも、あきらめて途中で放棄してしまう人もいるものの、週末には400組待ちなどというのも常態化をしている。

その根底にあるのは、中国では高級料理である寿司が手頃な価格で楽しめるということが大きい。また、生ものであるために、格安店では衛生管理が不安になるが、寿司の本場である日本で成功しているチェーンだということも安心感につながっている。

▲週末になると400組近くが待ち行列に並ぶ。ミニプログラムで行列番号を取得できるのに、多くの人が店舗前に並んで待っている。

▲スシローの予約ミニプログラム。赤いところは予約がすべて埋まっている。開店当初の2ヶ月先までいっぱいという状態は落ち着いたものの、それでも2週間以上先でないと予約が取れない状況が続いている。

 

寿司だけではないスシローの魅力

しかし、それだけでなく、スシローの施策が非常にうまく、それが受け入れられている。ネットでは「寿司のサイゼリヤ」とまで呼ばれるようになっているのだ。

スシローの客単価は120元(約2400円)と決して安くない。寿司としては安いものの、食事としては高い部類に入るチェーンだ。ましてや、寿司の場合は家族で行くことが多いため、かなりの出費となる。

それがなぜ、人気になるのか。北京の各店舗はあまりに予約が取れず、行列も長くなるため、「54分以上待つなら高鉄に乗って天津市のスシローに行く」という話題も出たほどだ。実際、北京市の住人でも、比較的入りやすい天津市のスシローに車で行く人は珍しくない。

 

激安サービスメニューが来店客に刺さった

スシローがうまかったのは、高級料理である寿司、本場日本のチェーンということを武器に高級感だけで売るのではなく、低価格戦略を組み合わせていったことだ。

まず、10元(200円)寿司のメニューを充実させた。メニューはだいたい200種類あるが、80種類から90種類が10元の設定だ。しかも、毎月、5元から8元のサービスメニューを出している。特にサービスメニューとして8元で提供されることが多いサーモンは非常な人気となっている。

お腹を満たすために10元や5元のメニューを注文し、舌を楽しませるために高額なメニューを頼むということができる。お腹と舌の両方を満足させるという点が受けている。

▲スシローのメニュー。低価格の10元メニューを充実させたことから、自分の懐具合に合わせてお腹を満たすか、舌を楽しませるかを選ぶことができる。

 

フォローで無料ドリンク、抽選で無料クーポンのゲーム性

さらに、SNSでのプロモーションも積極的だ。小紅書(シャオホンシュー)のスシローアカウントをフォローすると無料のソフトドリンクが、大衆点評(グルメガイド)をのスシローをフォローするとデザートのマンゴーが無料になる。そのため、店内に入ると、多くの客がまずスマホを開いてフォローをし、ソフトドリンクとマンゴーの無料クーポンを取得する。

また、店内の注文タブレットでは、注文が60元に達するごとに抽選ができ、さまざまなメニューの無料クーポンがあたる。しかも、タブレットにはバーが表示され、後どのくらい注文すると抽選ができるかどうかが一目でわかるようになっている。これを見て、後少しであれば抽選をしたくて注文をしてしまう。

▲注文タブレットには、60元ごとにクーポンの抽選がある。バーが表示され、抽選まで後どのくらいかがわかるようになっていて、これでついつい追加注文をしてしまう。

 

高級寿司が手頃な価格で食べられる

もちろん、人気の根底にあるのは品質だ。多くの人が、300元の寿司店と同じくらいの満足感があると感じている。これが120元程度で食べられるのだから、人気になるのもうなづける。

しかし、中国の飲食店は、料理の品質が高いだけでは人はきてくれない。味だけでなく満腹になることも重要なのだ。さらには、楽しく食事をするということも求められる。

スシローは飲食店としては決して安くはない。しかし、高額な寿司から低額な寿司までバラエティーを持たせることで、それぞれが自分の懐具合に合わせて楽しめるように設計されている。

スシローが中国に進出をしたのは2021年9月。しかし、2023年8月に処理水問題が起こり、日本産の海産物は避けられだけでなく、輸入禁止にまでなった。このため、スシローは食材を原則中国内で調達をしている。この中国内で調達をしているということが安心感につながった。その中で、サービスメニューや10元寿司など低価格で販売できる努力と工夫を積み重ねてきた。

「日本の高級寿司」というコンセプトだけで勝負をしていたら、ここまで人気になることはなかったかもしれない。現地の消費者の心理をよく研究して、品質は日本基準、運営は中国基準という、それぞれのいいところを組み合わせたことが成功の要因だ。スシローの人気はまだまだ続きそうだ。

 

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