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もはや座って朝食を食べるのは贅沢?北京市のビジネス街での朝食調査

北京のビジネス街で人々はどんな朝食を食べているのか。もはやカフェに座って朝食を食べるのは贅沢であり、多くの人が歩きながら食べたり、オフィスのデスク、裏通りの朝食店で食べていると北京日報が報じた。

 

ビジネス街の人はどんな豪華な朝食を食べているのか

中国では朝食を飲食店でとるという習慣の人が多い。特に単身者の場合、朝から自分で朝食をつくるのではなく、会社の近くまで行ってしまい、会社の近くの朝食店で食べてから出勤をするというのが一般的だ。時間もないために、簡単で安いメニューが好まれる。また、コンビニで食品を買い、公園やオフィスで食べてから仕事を始めるという人も増えている。

北京の東側に国貿(グオマオ)と呼ばれる地区がある。ここは国貿CBD(Central Business District、中央ビジネス地区)と呼ばれ、北京の中心的なオフィス街だ。中国の中では高給取りである人たちが集まっているため、国貿のビジネスパーソンたちは、朝からカフェやレストランで優雅な朝食を食べているのではないかというイメージがある。

そのイメージがどこまでほんとうなのか。北京日報の記者が、朝の国貿を歩いて調査をした。

 

流行っているのは15元の朝食店

午前8時、オフィスビル「SOHO現代城」に接続した地下鉄大望路駅のB出口から多くの人が地上に出てくる。彼ら彼女らは、オフィスに行く前に朝食店を探している。SOHO現代城は、北側が北京の最も主要な通りである長安街で、カフェやセルフ方式の朝食店、朝から開いている牛肉麺の店など、6軒が営業をしている。

セルフ方式の朝食店では、自分で好きな料理をとって、計量をして50gあたり1.88元という価格設定になっている。そこで女性のホワイトカラーに話を聞くと、だいたい15元(約310円)前後で朝食を食べているという。カフェは人が少なく閑散としている。記者がその店のモバイルオーダー用のミニプログラムでメニューを確認すると、卵ホットサンドが23元、アメリカーノコーヒーが30元という高い価格設定になっている。牛肉麺の店も空いており、牛肉麺が23.8元と高めの設定だった。

▲ビジネス街の表通りにも朝食店はあるが閑散としている。20元以上の朝食店は多くの人が避け、より安い裏通りに店に行く。

 

ビル裏の格安朝食店は大繁盛

記者はSOHO現代城の通路を歩き、建物の裏側に移動をした。そこは表側とはまっく違った世界が開けている。そこで発見したのは、牛肉麺10元、牛肉春雨麺12元という店だった。この店は価格が安いことから混雑をしている。

コンビニではとうもろこし、ゆで卵、豆乳スープの朝食セットが9元で販売されている。別の店では肉まん1カゴが10元、豆乳が3元。また別の店では油条と豆乳のセットが11元で販売されている。

ある店では、階段を登って6階にまで行かなければならないが、その代わりに6.6元で朝食セットが販売されている。店舗スタッフによると、店の立地が悪いために価格でお客を惹きつける必要があり、家賃は安いためにこの価格でも利益は出るのだという。

また、国貿橋付近には、キッチンカーが出ている。ここでは青椒鶏肉巻きが8元、雑穀焼き餅が9元で販売されている。この店は、ブルーカラーのお客が多いが、その中に、ホワイトカラーの人たちも混ざって立ったまま食事をとっている。

SOHO現代城の裏側は、表側と違って、店には人が入っており、活気があった。多くの人が朝食は10元程度で済ませたいと考えているようだ。

▲テイクアウトできる店に人気が集まる。公園やオフィスのデスクで食べるためだ。

▲多くの人が朝食には時間もお金もかけたくないと思い、10元+αぐらいの店に人気が出る。

▲裏通りでなおかつ6階と立地の悪い店では6.6元で朝食を提供している。安くすればそれなりに客が入る。

▲隙間に設置されているキッチンカー店舗。本来はブルーカラー人向けの店舗だが、最近ではホワイトカラーの人も多く利用している。食べる場所はないため、その辺りで立ったまま食べる。

 

座って食べるのはもはやゼイタク

西大望路に面した藍堡国際センターに向かうホワイトカラーの女性に話を聞いた。彼女は包子をいくつかと豆乳を手にしていた。「だいたい朝は、出勤途中に朝食を買います。10元前後ですね。昼食は自分の好きなものを食べたいので、朝食は価格重視です」。

藍堡国際センターには朝食の麺屋が入っていて、価格も13元からと安いが、人はあまり入っていない。多くの人が、途中の店やコンビニで朝食を買うようだ。

「私に言わせれば、朝食を座って食べるなんて、もはや贅沢なんです」。彼女は第五環状線の外に住んでいて、混雑した地下鉄に乗って国貿に通勤をしてくる。朝食の時間は15分程度しかない。「座って食事をする時間があったら、あと30分寝ていたい。歩きながら食べるか、オフィスのデスクで食べればじゅうぶんだと思っています」。

 

朝食の最大の問題は「時間が足りない」

「中国住民朝食飲食状況調査報告」(ネスレ・中国栄養学会)によると、回答者の81%が朝食は15分以内に終えていると回答をしている。また、「ホワイトカラー朝食報告」(便利蜂)によると、毎日朝食をちゃんと食べているのはわずか52.26%にまで少なくなっている。朝食をまったく食べないという人は10.37%になった。朝食を食べない最大の理由は「時間が足りない」だった。

この時間が足らないという理由により、カフェやレストランの優雅な朝食は不人気であり、時間が足りないため歩きながら食べたり、植栽花壇やデスクで短時間で食べるため、価格に関してはできるだけ節約したいと考えるようだ。先ほどの女性は言う。「朝食で座ってコーヒーまで楽しめる人は、ホワイトカラーではなく、ゴールドカラーの人だけです」。

20元以上する朝食店はどこも人が閑散としている。それは高くて食べられないということではなく、短時間でお腹を満たせばいいだけの朝食にお金をかけたくないということだ。短時間で食べることができ、栄養もあり、美味しいという朝食メニューが開発できれば、人気を獲得できる可能性がある。ファストフード店やコンビニはそのようなヒット商品を生み出そうと、盛んに商品開発を行なっている。