中国の小学校で、人工知能の授業を取り入れる試みが始まっている。中国教育部は各都市に「スマート教育モデル地区」を指定、実験校では人工知能の授業が展開されていると新京報網が報じた。
小学校で人工知能の授業を取り入れる試み
中国の小学校で、人工知能の授業を取り入れる試みが進んでいる。北京第一師範学校附属小学校では、小学4年生から人工知能の授業を取り入れている。
機械学習では手書き文字をどうやって判定しているのか、グーグルがWeChatミニプログラムの形で提供している「猜画小歌」(指で絵を描くと、それが何かであるかを人工知能が判定してくれる)は、どうして絵が何であるかを知ることができるのか、サングラをしていても顔認証できるのはどうして?など、身近なAI体験を通じて、人工知能の仕組みを教えていく授業だ。
第一師範学校附属小学校は、北京市東城区の「小学人工知能学習資源の開発と実践」実験校のひとつになっていて、今学期から人工知能の授業を取り入れた。そして、一学期が終わり、「小学人工知能」上下巻という教科書を成果として編纂した。
▲WeChatミニプログラムの「猜画小歌」。「桶」というお題に応じて、指で絵を描くと、人工知能がそれが何かを類推していく。人工知能は「クギ、コップ、コーヒーカップ」などと推測した。時間内に人工知能が正解を出すような絵を描けばミッション成功。
顔認証人工知能を騙すゲーム的な授業
北京市東城区は、中国教育部より「スマート教育モデル地区」のひとつに指定された。北京第一師範学校附属小学校、府学胡同小学校、培新小学校など6つの小学校が実験校に選定され、第1期の成果である教科書「小学人工知能」を使って、人工知能の授業を展開する。
授業といっても、講義のような形式ではなく、ゲーム性を取り入れている。例えば、顔認証の仕組みを理解する授業では、生徒たちに人工知能に挑戦をしてもらう。サングラスをかけたり、マスクをしたり、うさぎの耳がついた帽子をかぶったりして、どうしたら人工知能を負かすことができるかを競う。そのプロセスの中で、人工知能の仕組みを体感してもらうというものだ。
▲実際の授業。変顔をしたり、変装したりして、顔認証の人工知能を騙せるかを試す授業。
1000名規模の教員育成プログラムも始動
北京市東城区では人材育成も同時に行われている。数十名の校長クラスの人材、100名程度のリーダー教師、1000名程度の実践教師を2022年までに育成する計画が進んでいる。
人材育成計画はすでに5期目に入り、合計144名が研修を受けている。小学校教師をしながら、3年から5年の養成研修を受け、卒業後は全国の小学校に派遣をされて、人工知能教育のリーダー的存在となっていく予定だ。
▲小学校4年生程度での使用が推奨されている教科書「AI上智慧生活」の一部。AIを利用したロボット、ドローン、家電製品などが紹介されている。
中国政府は、人工知能教育を次世代教育の柱と位置づけている
このような試みは、北京市だけでなく、他都市でも盛んに行われいてる。2017年に国務院が公表した「次世代人工知能発展計画」の中で、小中高での人工知能教育を推進することを表明したためだ。
華東師範大学ではすでに小中学校用の人工知能教科書6冊を出版している。「AIの不思議な動物」「AIのスマートな生活」「AIの変形工房」「AIの可愛い電子ペット」「AIスーパーエンジニア」「AIの幕裏の英雄(Python)」の6冊で、2019年中に4冊の教科書が追加される。
低学年向けの「スマートな生活」「電子ペット」では、身近なIT家電ーお掃除ロボット、ドローン、スマートスピーカーやロボットの簡単な仕組みを理解するものだが、小学校高学年、中学になるとScratchやPythonなどを使った実践プログラミング、電子部品を使ったメーカー体験も行われる。
どの教科書をどの学年で使うかは、現在のところ、各学校、各学区に任されているが、今の中国では保護者からの人工知能教育の要望も強いことから、多くの小中学校でAI教育が行われると見られている。
▲華東師範大学が出版した6冊の小中学校用教科書。Pythonを使った簡単なプログラミングまで行う。さらに、追加の教科書が出版準備中。