中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

出前は空を飛ぶ。渋滞しててもドローン利用で最短20分で配達

出前配達サービス「餓了么」が、上海市でドローンによる出前料理の配達を始めた。現在試験運用中だが、実際の注文をさばいている。本格運用が始まると、配達員の移動距離は15%に激減すると新華網が報じた。

 

上海で、出前料理のドローン配送始まる

外売=出前配達サービス「餓了么」(ウーラマ、お腹すいたよね?の意味)が、上海市でドローンによる出前料理の配達を始めた。現在、試験運用中ではあるものの、すでに実際の注文を取り、従来最短30分配送であったものが、20分程度に短縮できている。

f:id:tamakino:20180610103738j:plain

▲ウーラマが開発したドローン。ドローンだけで配送をするのではなく、ドローンと人を組み合わせて、効率的な配達を実現している。

 

工業団地地区に17の飛行ルートを設定

と言っても、利用者宅にドローンが配達するわけではない。上海市金山工業園区域58キロ平米の地域に、17のドローン飛行ルートを設定。約100軒のレストランと、配送拠点をドローンで結ぶ。レストランには専用の収納ボックスを置いておき、注文が入ると、この収納ボックスに料理を入れる。ドローンがやってくるので、箱を載せると、配送拠点まで運ぶ。配送拠点には、配達員が待ち受けていて、従来通りバイクで配送するというものだ。

飛行ルートは最長で3.5km、最短で1.5km。平均で2.2kmであるという。

f:id:tamakino:20180610103741j:plain

▲ドローンは、レストランから配送拠点まで料理を運ぶ。配送拠点からは従来通り配達員が運ぶ。これで、配達員の配達移動距離は従来の15%に激減するという。

 

ドローン+人で効率的な配達を実現

金山工業園は、上海市の西南の外れ、杭州湾に面した工業団地地区。企業の本社や工場などが多く、一般の住宅は少ない。このような地域であれば、万が一墜落などの事故が起きても影響が少ない。

また、工業団地内は企業社屋や工場ばかりで、レストランがある繁華街とは離れている。そのため、外売サービスを利用する人が多く、配達員はレストランがある繁華街と工業団地を何度も往復しなければならなかった。遅れるわけにはいかないので、配達員は猛スピードでバイクを走らせる。その無謀な運転が問題になっていた。

ここにドローンを導入することで、配達員の負担を減らす狙いがある。

 

配達員の移動距離は15%に激減

料理の受け取りをドローンが担当し、利用者への配達は従来通り人間が行う。しかし、注文をしたスマートフォンの画面には、配達員の名前が個人名でなく、なぜか「無人機配達員」と表示される。利用者から「ドローンじゃなくて、人間が届けにきたけど」という問い合わせが顧客センターに数件あったという。

ウーラマ側では、システム上の問題であり、早急に修正をしたいとしている。また、ウーラマによると、このドローン配送が本格運用をすれば、全配送ルート距離の70%がドローンによるものになり、往復回数が減るので、1人の配達員が1日に走る距離は15%に激減するという。

f:id:tamakino:20180610103734j:plain

▲ある利用者がウーラマで出前を注文したら、配達員の名前のところに「ドローン配達員05」と表示された。従来はこれをタップすると、配達員に直接電話ができる。「どうやって連絡したらいいんだ」と顧客センターに何件かの問い合わせがあったという。ウーラマ側では、システム上の問題であり、最終的に配達を担当する配達員の名前が出るように早急に修正したいとしている。

 

管理センターと事故保険で万が一の事故に対応

試験運用中は、各飛行ルートとも3往復から4往復に制限をしている。この試験運用期間に問題点を洗い出す予定だ。

ドローンの動きは、センターの監視員がリモート管理をし、万が一の事故の場合には、すぐに適切処置が取れるようにしている。また、保険会社と共同し、墜落などによる物的被害、人的被害も保障できる体制を整えている。

 

労働集約企業から技術集約企業へ

ウーラマの康嘉運営官は、解放日報の取材に応えた。「このドローン配送ルートの運用は、ウーラマの未来物流戦略の重要な第一歩になります。私たちは、労働集約企業から、技術集約企業に進化をします。従来は最短30分配送でしたが、ドローンを活用することで、20分配送時代がやってきます」。

ウーラマでは、この他、配達ロボットの試験も始めている。これは主にオフィスビルの中で配達をするロボットで、エレベーターに自分で乗る機能も研究されている。ウーラマでは、年内にこのロボットを500のオフィスビルで運用を始めたいとしている。

今年中に、ドローンが料理を受け取り、人間が配達し、ビル内はロボットが届けるという体制が完成するかもしれない。

f:id:tamakino:20180610103744j:plain

▲ウーラマが開発した配達ロボット「万小餓」(ワンシャオウー)。オフィスビルの中で、配達を行う。配達員は、ロビーなどでこのロボットに配達をするだけでよくなる。

 

f:id:tamakino:20180610103748g:plain

▲万小餓は、エレベーターにも自分で乗ることができ、上層階の部屋にも配達をしてくれる。