中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

万引きし放題だった無人コンビニWell Goが、2.0になってリベンジ

今年夏、深圳市に開店した無人コンビニ「Well Go」は、メディアから酷評された。すべてが杜撰で、消費者にサービスを提供するレベルに達していないと評されてしまったのだ。そのWell Goが、2.0になって再オープンした。その実力はいかに。雷峰網が取材した。

 

中国スタートアップの評価が二極化する理由

中国のスタートアップに対する評価は人によってまったく違う。「素晴らしい、学ぶべきことがたくさんある」という人もいれば、「あいつら、デタラメ。ビジネスってレベルじゃない」という人もいる。なぜ、そのように見方が分かれるのか、理由は単純だ。

中国のスタートアップには、「やってみなければわからないことを考えているよりも、まずやってみよう」という感覚がある。そのため、ビジネス設計が不十分のまま、事業をスタートさせてしまうことが多い。当然、しっちゃかめっちゃかの状態になる。そして、多くのスタートアップはそのまま空中分解をしてしまう。ここを見れば、「あいつら、デタラメ」になる。

しかし、そのカオスの中で、問題点をひとつひとつ解消して、形を成していくスタートアップもあり、そのような企業が、ユニコーン企業となったり、株式公開に成功をすることになる。ここを見れば、「素晴らしい。学ぶべきことがたくさんある」になる。

これは、中国だけのことではない。「まずやってみる」は、米国でも日本でもスタートアップの基本だ。シリコンバレーにも「ビルドファースト、メンドレイター」(先に作って、後から直す)という言葉がある。

 

万引きし放題のダメダメ無人コンビニだったWell Go

今年夏に深圳市で開業した無人コンビニWell Goは、各メディアから酷評された。商品の品揃え設計が合理的でないために、補充がうまくいかず、品切れ商品が多い。レジで同じ商品を精算しても、精算するたびに合計金額が違ってくる。商品そのもの価格が、有人コンビニよりも高い。きわめつけは、風で自動ドアが閉まらないので、商品を万引きし放題。あまりにもずさんすぎると、消費者からもメディアからも酷評されることになった。

しかし、それから3ヶ月半。無人コンビニWell Goは、Well Go 2.0として帰ってきた。その実力はいかに。各メディアが早速体験記を掲載している。

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入口と出口を分離して、万引き問題を解決

Well Goを運営する天虹は、なかなか強気だ。酷評されたWell Go 1号店は、深圳市の天虹本社ビルの1階に設置された。Well Go 2.0は、その1号店を撤去して、まったく同じ場所でオープンしたのだ。

最も大きく改善されたのが、入口と出口を別にしたことだ。以前は、出入り口が共通だったため、精算をしていない人であっても、誰かが外から入ってきたら、その隙に商品を持って外に出てしまうことができた。2.0では、出入口は一方通行となり、精算をしなければドアが開かない。もちろん、風で閉まらない問題も改善されていた。

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▲大失敗だったWell Go1号店と同じ場所に再オープンしたWell Go 2.0。内部は、さまざまな改善がされ、Well Go2.0に対しては、どのメディアもおおむね好評な記事を掲載している。

 

ニーズを分析し、1日5回の食事時間に合わせて計画配送

さらに大きく変わったのが、品揃えだ。無人コンビニの場合、人手をかけないために、足の速い生鮮食料品、おにぎり、サンドイッチ、生菓子といったものを置かないケースが多い。このような商品を扱うには、配送回数を増やし、消費期限がくる前に古い商品を棚から撤去する必要がある。

配送回数を増やし、店内作業をするのであれば、無人にする意味がなくなる。店員が常駐をすればいいじゃないかということになってしまう。

Well Go 2.0では、過去の売り上げ分析から、消費者は1日5回食事をとることを発見した。朝方、昼、午後、夕方、深夜だ。この時間に合わせて、品揃えを適切なものに変えながら、配送計画と陳列計画を立てる。そのため、人的コストを上昇させずに、同時に、時間帯に合わせて適切な品揃えを実現している。

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無人コンビニには珍しく、消費期限の短いサンドイッチや生菓子なども置いている。食事時間に合わせて計画配送することで、人的コストを上げずに、その時間に最適な商品を陳列できるようにした。

 

無線タグだけでなく、画像解析も併用して、精度を上げる

また、レジの誤認識問題も改善された。従来は商品に付けられたRFID無線タグの情報のみに頼っていたが、画像解析も併用することで、精算ミスを減らしている。同時に、店内にもカメラを設置し、利用客から顧客センターに問い合わせがあった場合も、映像からすぐに状況を把握できるようになった。

また、入り口での認証もWeChatペイのQRコードで行う方式だったが、すでに顔認証の技術を確立しており、順次、顔認証システムを導入していく。

 

コンビニ運営ではなく、技術開発にビジネスをシフト

また、天虹のプロジェクト責任者によると、ビジネスデザインを大きく変え、無人コンビニの運営ではなく、無人コンビニ技術を確立して、その技術を販売するという方向に大きく舵を取ったのだという。つまり、現在のWell Go店舗は、利益を上げるための店舗ではなく、実験をするための研究店舗ということになる。現在、Well Goは深圳市に3店舗が開業している。当面は、店舗数を増やさずに、データを集め、システムを改善していくことに集中する。

「Well Goでは、万引きが多発した。だから、人がどのようにして万引きをするかは、Well Goが最も詳細なデータを持っている」と、本気か冗談かわからない評をするメディアもある。しかし、それもまた事実。マイナスの経験をプラスに転化できるかどうかが、Well Goに問われている。