中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

いよいよ全固体電池搭載EVが登場する。しかし、BYD、CATLの2強は否定的

中国はいよいよ全固体電池の時代に入り、搭載EVの発表まで行なわれている。しかし、BYD、CATLの2強は全固体電池に距離を置いている。特にCATLの曽毓群CEOは技術的に難しい面があると、フィナンシャルタイムズの取材に対して語ったと王新喜が報じた。

 

いよいよ始まった全固体電池搭載EV時代

中国のEV業界で、固体電池の領域が騒がしくなっている。昨年2023年6月、「衛藍新エネルギー」(https://www.solidstatelion.com/)は、360Wh/kgの半固体電池を、新エネルギー車(NEV)メーカーの「蔚来」(ウェイライ、NIO、https://www.nio.com/)に対して正式納入をしたと発表した。これを皮切りに、上海汽車傘下の智己汽車(ジーイー、IMモーターズ、https://www.immotors.com/)は、業界初の900Vクラスの半固体電池の量産を始めると発表した。

そして、極め付けの発表が、今年2023年4月の「太藍新エネルギー」(https://www.ctlne.com/)のもので、エネルギー密度が720Wh/kgになる全固体電池の開発に成功をしたというものだ。それに続き、広州汽車傘下の「昊鉑」(ハオボー、https://www.hyper.com.cn/)が、2026年に全固体電池を搭載したBEVを発売すると発表した。この全固体電池は400Wh/kg以上に達し、従来のリチウムイオン電池のエネルギー密度から50%以上増加をし、航続距離は簡単に1000kmを突破できるものになるという。

▲昊鉑は全固体電池の量産化に成功したと発表し、2026年にも搭載したEVが登場するという。技術的にどの程度の水準のものなのか、注目されている。

▲昊鉑が開発をした全固体電池。EVに採用されることが決まっていて、航続距離は1000kmを超えるという。

▲太藍新エネルギーが開発をした全固体電池。これから量産が始まる。

 

固体電池には距離を置いているBYDとCATLの2強

全固体電池の研究開発で最先端を行っているという日本企業も多くは実証実験を始める段階にあり、量産は2028年頃を目標にしている。例によって、この分野でも日本企業は中国企業に”追い越し”をされてしまうのだろうか。

しかし、相次ぐ全固体電池の発表に、中国国内からも疑問の声はあがっている。それは、日本企業だけでなく、中国ではバッテリー技術で群を抜く「比亜迪」(BYD)と「寧徳時代」(CATL)の2社が、全固体電池には静かなままだからだ。日本企業、中国のトップ2社が華々しい発表をしないのは、それだけ、全固体電池の量産が難しいからではないかと見る人も多い。

 

全固体電池に否定的なCATLのCEO

CATLの曽毓群CEOは、フィナンシャルタイムズの取材「China’s ‘battery king’ dismisses solid-state EV commercialisation as years away」(中国のバッテリー王が固体電池EVの商品化にはまだ時間がかかると語る、https://www.ft.com/content/7a8207d9-b2e0-4969-a10a-2c41e8639fb7)にこう答えている。「無数の小さな課題が開発を妨げており、商業化までにはまだ何年もかかる」。耐久性と安全性に多くの課題があり、解決ができていないとした。

電力を伝えるリチウムイオンは、液体の電解質の中では自由に移動をすることができ、バッテリーはスムースに充放電ができる。しかし、全固体電池の中ではリチウムイオンは固体材料の中を移動しなければならない。電極と電解質材料の接触面に高い圧力をかけてやれば、イオンの移動が活発になることはわかったが、自動車に搭載した時、そのような圧力をどうやってかけ続けるのかが大きな問題になる。

また、電解質が固体であるために、充放電の際、損傷をしやすくなる。リチウムは充放電の膨張と収縮を繰り返す。その膨張率は、他の金属よりも大きく、これが電解質材料を損傷させてしまう。つまりは、バッテリー全体の寿命が短くなる。CATLでの実験室段階では、充放電を10回繰り返しただけで、全固体電池は使い物にならなくなり、寿命を迎えてしまったという。

CATLでは、すでにこの試行錯誤を10年続け、現在は、全固体電池よりも、半固体材料を使用するナトリウムイオン電池にリソースを集中させていると記事の中で答えている。全固体電池ほどの夢のような性能は難しいものの、従来のリチウムイオン電池と比べて2倍以上のエネルギー密度が実現できるという。

BYDも全固体電池に関する発表がほとんどない。それどころか、BYDの趙長江氏は、SNSに「半固体電池を自動車に使うという発表は、現時点では言葉遊びにすぎない」という投稿をしている。

▲CATLの曽毓群CEOは、フィナンシャルタイムズの取材に対し、全固体電池の技術的な難しさを具体的に語った。

▲BYDの趙長江氏は、SNSに「半固体電池を自動車に使うという発表は、現時点では言葉遊びにすぎない」と投稿した。

 

全固体電池は本物なのか夢物語にすぎないのか

BYDとCATLの2社は、既存のEVバッテリーの分野で、世界的なシェアを持つようになっている。一方、それを追いかける各社は、既存技術では2社に追いつくことが難しいため、新しい技術に賭けるしかなくなっている。トップ2社が、自社技術の優位性を守るために全固体電池に否定的なのか、それともトップ2社の牙城を崩す大きな技術革新の波が起こり始めているのか、そこはまだ誰にもわからない。しかし、いずれにせよわかっているのは、この数年で、EVバッテリーの分野では、大きな性能向上が起こるということだ。