アップルは脱中国化を以前から進め、主力の委託製造企業であるフォクスコンとウィストロンはインドに進出をした。しかし、ウィストロンでは暴動が発生し、最終的にタタグループに売却をすることになった。インド生産は簡単ではないと捜狐が報じた。
公式が値引きをするようになったiPhone
アップルのiPhoneのインド生産が困難に直面している。昨2023年のiPhone15では、インド製のiPhoneが、中国市場と欧州市場に出荷されたが、不安に感じた消費者による返品が相次いだこともあり、iPhone15の中国市場の24Q1には前年比19.1%減という非常に厳しい事態となった。
iPhone16では、インド生産を縮小し、インド製iPhoneはインド国内のみに出荷をし、欧州、中国市場へは以前と同じように中国製を出荷した。しかし、それでも一度失った市場を取り戻すのは簡単ではなく、発売当初の購入数は大きく落ち込んでいることが報道された。その後、アップルが天猫(Tmall)の公式ショップで、500元から1600元(約1万円から3.4万円)の割引をすることで、例年どおりの販売ペースにようやく戻ったようだ。
アップルは中国市場の販売シェアを維持できているが、大幅な割引販売をするのが恒例になってきている。アップルのブランド構築の視点からは、割引販売は異例のことだ。
インドに進出した2つの台湾企業
アップルは、生産の脱中国化を進めるために、生産拠点を中国からインドに移す計画を2010年代から進めている。生産をするのは台湾の富士康(フォクスコン)と緯創(ウィストロン)だ。両社はこれまで中国に生産拠点を置き、アップルの製造を行ってきたが、インドに生産拠点をつくり、そちらにiPhoneなどの生産を移していた。これが進めば、「台湾企業がインド工場で生産をする」ことになり、脱中国化が完了する。
フォクスコンはインド南部のタミル・ナードゥ州に、ウィストロンは南部西岸のカルナータカ州に生産拠点を置いたが、明暗がわかれた。フォクスコンは熟練工を育成するのに苦労をしながら、iPhone14から生産が可能となり、iPhone15ではまがりなりにも欧州と中国に出荷するまでに生産数を増やしている。
つまずきだらけのウィストロン
ところがウィストロンの方はつまずいた。ウィストロンはこのプロジェクトに社運を賭けており、総額900億ドルの投資を行っている。現地従業員での雇用も、相場の1.5倍の給料を出し、やる気のある人間を集め、育てていく体制をとった。
ところが、2020年12月、給与条件をめぐってストライキが発生し、そのストライキは団体交渉ではなく、暴動に発展をした。ウィストロンは要求を飲み、賃上げに同意をしたが、問題は間に入っている現地の派遣業者だった。派遣業者が中抜きをし、賃上げをしたはずが、従業員の実際の手取り額が下がってしまうケースが相次いだ。話がちがう、ウィストロンは嘘をついて騙そうとしていると暴動に発展してしまった。
放火が行われ、生産設備は破壊をされた。ウィストロンはなんとか工場を再開しようとしたが、結局は撤退の道を選ぶしかなかった。そこにインドのタタグループが買収話を持ちかけてきた。買収額は、工場設備が破壊をされ、工場としての価値が大きく減じているとは言え1.25億ドルという提示だった。
タタエレクトロニクスがiPhone生産へ
900億ドルかけたものが1.25億ドルになる。しかし、ウィストロンはそれ以外の選択肢はなく、タタエレクトロニクスに売却が決まった。現在、インド向けiPhoneはフォクスコンとタタエレクトロニクスが生産をし、来年2025年のiPhone17からは再びインド製iPhoneが海外市場にも出荷されることになる。
アップルはチャイナリスクを避けるためにインドに生産拠点を移そうとしたが、今度はインドリスクに悩まされている。