洋服についているタグが近年増えていることがSNSで話題になっている。5枚、6枚はもはや珍しくない。着る前に取り外す作業も煩わしくなってきている。タグが増えるのには、ブランド側にもそれなりの理由があると中国新聞週刊が報じた。
どんどん増えてきた洋服のタグ
最近、服を買うとタグの枚数が多すぎると感じている人が増えている。以前は、1枚が一般的で、そのブランドの考え方などが記載されていただけだが、最近は3枚ほどついているのがあたりまえで、中には6枚、7枚もついていることがある。そのすべてを切って外さなければならないため、面倒だという声があがっている。さらには、紙資源の無駄ではないか、意味のないタグがつけられている、セールの時に買い物をするとタグでトランプがつくれそうだという声もある。
その根底にあるのは、「こんなにたくさんのタグをつけて何の意味があるのか?」ということだ。
認知を広げたいブランドほどたくさんのタグをつける
このようなタグの枚数は、ファストファッションやカジュアルブランドでは少ない。ZARA、ユニクロなどでは、タグはほとんどの服で1枚になっている。稀に2枚ついていることがあるが、それは生地の特殊性や手入れの方法を説明するためのもので、2枚にする理由がある。
消費者も環境や持続可能な社会に対する意識を持っている人が多く、ブランドもそのようなメッセージを発信しているため、無駄なタグは極力使わないようだ。一方、認知を広げたいブランドほどタグの枚数が増える傾向にある。
防犯防止や返品防止をねらったタグも
また、ECで購入した衣類もタグの枚数が多い傾向がある。さらに、最近増えているのが盗難防止タグだ。大きなタグが服の外側にくるように取り付けられており、外すにはハサミなどの道具が必要になる。来店者がジャケットなどを着て、自分の服であるかのように装って万引きをしようとしてもタグがついていることでわかってしまうというものだ。さらに、この盗難タグには「購入後、外すと返品はできない」旨が記載されているものもある。
タグを増やす理由1:ブランド認知
タグの枚数が増えていった理由は主に2つあると言われている。
ひとつはブランドの認知だ。ブランドはその認知を広げるため、衣類に自社のロゴを刺繍やプリントなどで入れることが多い。ところが、このロゴが目立てば目立つほど購入意欲が低下をする。サウザンプトン大学のポーラブ・シュクラらの研究「Should luxury brands display their logos prominently? Implications for brand authenticity, coolness and behavioral intentions」(https://pure.roehampton.ac.uk/portal/en/publications/should-luxury-brands-display-their-logos-prominently-implications)によると、ロゴが大きければ大きいほど購入意欲は低下をし、なおかつブランド忠誠度の高い人ほど購入意欲の低下が顕著だったことが明らかになった。
要は、いくら好きなブランドであっても、「このブランドを着ています」と宣伝して歩くようなことはみっともないと考える人が多いのだ。
そこで、衣類にロゴをつけられなくなったブランドが、ブランドをアピールするためにタグに大きなロゴやブランドからのメッセージなどをつけるようになり、枚数が増えていった。中には、タグに香りをつけたり、香木をつけたりして、クローゼットの中を爽やかな香りにするというものものまである。
タグを増やす理由2:返品防止
もうひとつは返品防止だ。ECで販売する商品には、大きなタグが外側にくるように取り付けているものが増えている。外側にあるため、試着をする分には影響はほとんどない。しかし、そのタグを取り外すと「返品不可」である旨が記載されている。
これは、ファッションインフルエンサー対策だ。ファッションインフルエンサーは次から次へと服をECで買い、自宅で試着をして写真を撮り、その後、返品をしてしまう。衣類の場合は「サイズが合わなかった」「素材感がネットの写真とは違った」などの理由をつけられると返品に応じざるを得ないからだ。
しかし、大きな返品防止タグがあれば、つけたまま商品を試着することはできるが、写真を撮ってSNSに投稿することはできなくなる。タグを内側に入れ込んでも、外側に取り付けられているため、タグがついたままであることがわかってしまうからだ。
このような理由で、衣類のタグの枚数はどんどん増えていくことになっている。一方、真面目な消費者は、買った服を着る前に何枚ものタグを切り離さなければならなくなっている。