中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

TikTokに使われるAIテクノロジー。最先端テックを惜しげもなく注ぎ込むバイトダンスの戦略

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 102が発行になります。

 

今回は、中国版TikTok「抖音」に使われている特殊効果についてご紹介します。

中国のショートムービーは、すでにメディアとして定着をしています。「2021中国メディア市場趨勢」(央視市場研究、CTR)によると、利用者数で第4位のメディアになっています。テレビの利用者とはテレビ所有者のことなので、圧倒的に多いのは当たり前です。それを考えると、ショートムービーはSNSに次ぐメディアに育ってきています。

f:id:tamakino:20211211145214p:plain

▲利用者数では、ショートムービーは第4位のメディアになっている。SNSが手紙、ハガキ、動画がテレビ、ニュースが新聞、音楽がラジオの代替物であると考えると、ショートムービーは今までになかったメディアが定着したことになる。

 

同じ調査で、1日あたりの利用時間を比べると、やはりショートムービーが第4位になっています。これもテレビはながら見、音楽はながら聞きをするすることが多いことを考えると、ショートムービーは存在感のあるメディアになっています。

f:id:tamakino:20211211145217p:plain

▲1日の利用時間で見た各メディア。テレビ、音楽が、ながら視聴をしがちであることを考えると、ショートムービーは重要なメディアになっている。

 

ショートムービーがメディアとして定着をした理由は、使ってみればすぐにわかります。無駄がないのです。例えば、動画共有サイトでありがちなペットの面白映像で、犬が転ぶシーンを面白おかしく紹介したムービーがあるとします。抖音であれば、基本15秒ですから、そのいちばん面白いシーンがすぐに始まります。しかし、一般的な動画共有サイトでは、タイトルバックが表示され、次に配信者の挨拶があり、それからペットの普段の様子が映され、ようやく面白いシーンにたどり着きます。

一度、ショートムービーの世界に慣れてしまうと、テレビ番組や動画がもどかしく感じられるようになってしまうのです。ショートムービーは15秒から30秒程度であり、面白くないと思えば簡単にスキップすることができます。そのため、30分で100本以上のショートムービーを見ることができます。テレビ、動画に比べて、時間が濃くなったように感じられ、満足感が高いのです。

 

さらに、「vol.094:機械学習によるリコメンドがトレンド。EC「京東」、音楽サービス、TikTokのリコメンドシステム(下)」でもご紹介したように、よく考えられた機械学習の仕組みで、視聴者が見たいと思っているムービーを配信できるリコメンドシステムが構築されています。これにより、「見たいと思っているムービーが無限に出てくる」状態になり、アドレナリンが止まらなくなり、ある意味中毒になってしまうのです。

一度、抖音を見始めると止まらなくなり、むしろ「抖音により時間が奪われている」と感じる人も増えているほどです。そのため、最近では、1時間ほど連続して視聴すると「そろそろ寝ましょう」という長時間視聴をやんわりと注意するショートムービーが流れるようになっているほどです。

 

これは、見る側の話ですが、抖音はムービーを撮影するツールとしても非常に優秀で、撮る方の面白さにハマる人もいます。

まず、縦動画を基本にしたという点が画期的でした。スマートフォンは誰でも縦に持って使うのに、なぜか以前は写真を撮る時に横にする人が多数派でした。カメラやテレビといった横動画の意識がそのまま残されていたからです。しかし、抖音以降、動画も写真も縦のまま撮る人が増えています。縦にしたことにより、人の収まりはかえってよくなり、以前の写真が主に風景を撮影するのに対して、今では人を中心に撮影するようになっています。

また、撮影の操作も画期的でした。それまでの動画撮影は撮影ボタンにタッチをすると開始し、再びタッチをすると終了するというものでした。しかし、抖音ではボタンに触れている間に撮影し、放すと撮影が終了するというUI(ユーザーインタフェース)を採用しました。さらに、撮影ボタンを押している間、指をずらしても、撮影ボタンが指に追従してくるギミックを入れたのです。これは、撮影中に指の位置がずれても、撮影終了にならないための工夫でした。これがUX(ユーザー体験)を大きく変えました。

撮影を始める時には、撮影ボタンに指を置いて、撮影を開始します。その後、指を離さなければ、ずれてもいいのです。これにより、カメラ(スマホ)を自由自在に振り回すことができるようになりました。自分を自撮りしながら、どれだけ激しくダンスをしても、撮影に失敗しないのです。これが抖音の映像に新たなアングルをもたらしました。今までになかった新感覚の映像が撮影できるようになったのです。

これにより、抖音は撮る楽しさを提供しました。そして、それがプラットフォームで共有されることにより、見る側の楽しみにもなり、自分でも似たようなムービーを撮ってみたいという刺激にもなります。しかも、特殊な機材はいりません。必要なのはスマホとアイディアと試行錯誤だけです。

 

このスマホだけで、新感覚のムービーが制作できるというのが抖音の大きな魅力になっています。特に重要なのが、バイトダンスの高い技術力で開発されたAIによる特殊効果が大量に用意されていることです。

その中で、圧倒的な人気を得ているのがメイクの中の「美顔」機能です。リアルタイムで肌を美しくしてくれ、アゴを細くし、目を大きくし、唇の形や鼻をきれいに整えてくれます。あまりにやりすぎると不自然になってしまいますが、適切に調整をすると実物よりも美しく撮影してくれます。また、全身を変形させることもでき、脚を長くし、胴のくびれを強調することもできます。これが静止画の写真ではなく、動画撮影でリアルタイム処理されるのです。

これは自分の外観にコンプレックスを持ちやすい10代から20代の女性にとっては強力な魅力となります。現実の私はパッとせず、どこにでもいる普通の女の子だけど、抖音の中では可愛い女の子に写り、見た人が褒めてくれる。熱中してしまう人が続出するのも当然です。

 

https://v.douyin.com/RvDkb36/

20歳若返ることができると中高年に評判の神仙特効。抖音の中ではもうひとりの自分になることができる。

 

しかし、抖音はなぜこの魔法のカメラのような機能を実現できているのでしょうか。ここがバイトダンスの技術力の高さです。バイトダンスは、AIの画像解析などの分野では、中国で最も高い技術力を持っているといっても過言ではありません。その高い技術力を使って、このような美顔などの特殊効果を開発しています。使われている技術は顔認識、AR、サイクルGAN、蒸留と、AI分野での最先端の技術です。

バイトダンスのチームは、このような最先端AIを駆使し、抖音の特殊効果をつくり、同時に論文として学会に提出をして、ビジネスとアカデミックの両方の世界で存在感を得ています。

そこで、今回は、実例をご紹介しながら、バイトダンスがどのような技術を使っているかをご紹介します。なお、実例は中国の抖音ショートムービーのリンクの形でご紹介します。理由はわからないのですが、このリンクはiPhoneなどのモバイル環境からはうまく再生ができないようです。データ量も大きいため、PCまたはMacなどのデスクトップ環境からリンク先の動画を見ることをお勧めします。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.101:交通渋滞を交通信号を制御することで解消。都市の頭脳となる城市大脳が進めるスマートシティー構想

 

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html