中華IT最新事情

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私域流量を集め、直販ライブコマースで成功する。TikTok、快手の新しいECスタイル

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明日、vol. 068が発行になります。

 

中国メディアが、バイトダンスが香港市場での上場準備を進めているという観測記事を報じ始めています。具体的な時期、売出し価格などの詳細は不明ですが、近年稀に見る大型上場になることは確実です。バイトダンスは、ご存知のように、TikTokを開発、運営する企業です。中国で運営しているショートムービーサービスが「抖音」(ドウイン)で、この海外版がTikTokです。

バイトダンスについては、「vol.058:再び成長を始めたTikTok。テンセントのWeChatと正面から激突」でもご紹介したように、核心技術は人工知能で、人工知能を利用したリコメンドアルゴリズムで、「見たいと思っているショートムービーが無限に配信されてくる。面白いムービーは一夜にして爆発的に拡散する」という抖音を開発し、広告ムービーもリコメンドアルゴリズムで配信をし、驚異的な広告コンバージョンをあげることで急成長をしてきたユニコーン企業です。

 

そのため、バイトダンスという企業を収入面から見ると「ネット広告企業」ということになりますが、上場する頃には「EC企業」と呼んだ方が適切になっているかもしれません。

なぜなら、2020年の抖音のEC流通総額は5000億元(約8.3兆円)を超えているからです。もちろん、この額がまるまるバイトダンスの収入になるわけではなく、そのうちの5%程度が手数料として入るだけですが、それでも250億元と推定され、大きな収入源になっています。バイトダンス全体の収入は2020年で370億ドル(約4兆円)と推定されているので、EC収入は全体の10%程度であるようです。

それでも、流通総額5000億元というのは、日本のアマゾンの約3倍にあたります。中国ではプラットフォームサービスのマネタイズは「EC」「広告」「ゲーム」の3つであると言われています。バイトダンスは、抖音をプラットフォームとしてSNS機能を強化し、まさに教科書通りに「EC」「広告」「ゲーム」の3つを充実させていこうとしています。私見ですが、この方向性が定まったことで、上場準備を始める方向に動き出したのかもしれません。方向性が定まれば、後は資金調達をして、その方向に走るだけです。

 

一方、抖音のライバルであるショートムービープラットフォーム「快手」(クワイショウ)もEC収入が好調です。今年2月に香港市場に上場したばかりで、財務報告書によると、収入は587.75億元(約9800億円)ですが、ライブコマースなどのEC流通総額は3812億元(約6.4兆円)となり、EC手数料収入が収入全体の半分弱になっています。

また、ライブコマースの元祖とも言える淘宝網タオバオ)のタオバオライブも流通総額は4000億元と推定されています(タオバオライブは、淘宝網での伝統的なECとライブコマースが融合をしているため、正確な数字の算出はできません)。

 

この3つのライブコマースプラットフォームの流通総額(GMV)は、伝統的なECであるアリババのタオバオ、京東(ジンドン)、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)のGMV上位3位の次の位置にくる規模です。タオバオライブは2016年5月と5年目になり、快手、抖音のライブコマースはは2018年スタートの3年目という若さです。しかも、この2つのプラットフォームは2019年は実験と試行錯誤の段階で、本格運営を始めたのはコロナ禍の追い風を受けた2020年ですから、実質2年目です。それでこの規模に急成長をしています。

「vol.040:進化が止まらないライブコマース。自動車、マンション、ザリガニまでも」では、調査会社iResearchが予測した2020年のライブコマース市場規模は9610億元(約16兆円)とご紹介しましたが、この3つのライブコマースプラットフォームのGMVの合計だけでも1兆元を軽く超えます。調査会社の予測する市場規模数字というのは往々にして希望的観測に満ちたもので、大きめの数字になりがちですが、ライブコマースに関しては遠慮がすぎたようです。現実の方がはるかに成長が速かったのです。iResearchもさすがにコロナ禍というECにとっての追い風が起きることまでは予測できませんでした。

 

なぜ、ライブコマースはここまで強いのでしょうか。このまま進むと、ECの中心はウェブサイトやアプリではなく、ライブコマースになりそうな勢いすらあります。もちろん、台所洗剤が切れたから補充するというような買い物では、商品が決まっているので伝統的なECを使うでしょうが、何か新しいものを買ってみたい、自分が知らない商品と出会いたいという時は、ライブコマースを使うようになっています。

必要な買い物は伝統的ECで、楽しみのための買い物はライブコマースでいうスタイルが定着をして、ライブコマースは「興趣電商」(興味志向のEC)という呼び方もされるようになってきています。

 

それだけではなく、ライブコマースが強い理由は、「私域流量」(プライベートトラフィック)を利用しているという分析が広がり、各ブランドも2019年あたりから私域流量を確保する施策を進めています。ライブコマースは、この私域流量を確保できるECスタイルであるということから、2019年から注目を浴びるようになり、それがコロナ禍で一気に広がりました。

では、私域流量とはどういうものでしょうか。今回は、私域流量の考え方をご紹介し、さまざまなブランドがどのような私域流量を確保するための施策を行なっているのか、その事例をご紹介します。

 

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