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流行する盲盒フィギュアの改造。議論となる二次創作の著作権

フリマサービス「閑魚」で、改造フィギュアの個人間取引が活発になっている。ポップマートが発売した盲盒フィギュアを改造して販売するというものだ。ビジネス化も試みられており、改めて二次創作の権利関係が議論になっていると五環外が報じた。

 

コロナ禍で広がった中古品の取引

アリババが運営するフリーマーケットサービス「閑魚」(シエンユー)。そのサービスの歴史は古く、2012年10月に「淘宝二手」(アーショウ、二手は中古品の意味)として始まった。中国人は中古品を嫌う傾向があると言われており、サービスは低調だったが、2016年にアリババが運営するオークションサービスと合併したあたりから、若い世代を中心に人気が高まってきた。

さらに、2020年からのコロナ禍により、閑魚は利用者数を3億人と大きく伸ばし、月間アクティブユーザー数も2021年6月に1億人を突破。現在、1年で10億件以上の商品が取引をされている。

特にコロナ禍では、幅広い世代に利用されるようになった。倒産をした飲食店の店主が新品同様の厨房器具を出品する、上海で失業をしたホワイトカラーが家具を出品して地方に転居をする、男性からもらったアクセサリーを転売する、失恋をした女性向けの恋愛コーチが出品されるなど、閑魚はその時々の世相まで表すようになってきている。

 

人気になっている改造フィギュアの取引

最近、この閑魚で、ポップマートの「盲盒」(マンフー、ブラインドボックス)を改造したフィギュアを出品する人が増えている。

盲盒は、ポップマートが発売したシリーズもののフィギュアで、箱を開けるまでどれが入っているかわからない。これにより、若い世代のコンプリート欲を刺激して、ポップマートが成長する原動力となった。

最もヒットした盲盒シリーズはMollyだが、レアキャラの出現確率は1/114、スペシャルレアキャラは1/720であるため、多くの人がレアキャラを手に入れるため大量の盲盒を購入し、かぶったキャラは閑魚で販売されるという現象が起きてきた。当然ながら出現頻度の高いキャラは安価で、出現頻度の低いレアキャラは高額のプレミア価格で取引されることになる。

ところがこの1、2年、キャラとしては出現頻度が高いが、改造をした盲盒が出品されるようになっている。その中でも話題になったのが、エルメス仕様のMollyだった。これがきっかけになって、マクドナルドMollyなどさまざまな改造フィギュアが登場してきている。

▲大きな話題になったエルメスMolly。予約注文制で納期は20日。二次創作としての権利問題の議論が起きるきっかけとなった。

マクドナルドMolly。マクドナルドの許諾を得ているのかは不明だ。予約注文制で、納期は1週間から2週間だという。

 

微妙な権利問題

しかし、このようなブランドMollyには問題が多い。当然、エルメスマクドナルドなどのブランドの了解はとっていないと思われ、中にはそのブランドによる特別仕様の公式Mollyだと錯覚させるようなものもある。勝手にブランドのイメージを使った商品を販売することは、偽ブランド品を販売することと同じく違法だ。

しかし、個人が自分のMollyを趣味で改造し、それを譲るるというのであれば違法であるかどうかは微妙になる。そのため、多くの出品が価格を抑えている。Mollyは原則59元で購入できるが、このような改造Mollyは100元程度のものが多い。あくまでも趣味でつくったものを材料費程度で譲っているという建前だ。購入側にとっては、カスタマイズされたMollyを低価格で買えることができるため、改造Mollyをコレクションする人も増えている。

▲ポップマートの盲盒シリーズ別の売上推移。人気が爆発したMollyはすでに人気のピークを過ぎたが、別シリーズの人気が上昇をしている。

 

多くの改造師が趣味として行っている

このような改造Mollyは、価格も抑えなければならず、手作りであるため量産はできない。同じものでも数個というのが一般的だ。

そのため、このような改造師たちは、これで生活を立てていくことはできない。多くの人が、自分で改造したMollyを披露して称賛されることを目的とした趣味として行っている。

また、制作法などの動画を公開し、そちらの動画の収益などで生活を建てようとする網紅改造師も現れ始めている。

▲改造では利益は出ないが、改造の仕方などを紹介したムービーを配信し、網紅として成功している言吾豪。

 

ビジネス化を考える改造師も

その中から、改造Mollyの販売で生活を建てようとするビジネス化を試みる改造師もいる。エルメスマクドナルドという既存ブランドを使用した改造は法的にも問題があるため、自分のアイディアで改造をしたMollyを販売している。

その中でも話題になったのが、金色の猪八戒Mollyと清朝Mollyだ。猪八戒は、アイテムを持たせて全身を金色に塗ったもので、簡単に量産をすることができる。そのため100元程度で販売されている。清朝Mollyは非常に手の込んだ改造であるため430元で販売をされている。

このようなオリジナルの改造Mollyは300元から1000元程度の価格帯で販売をされ、このような改造Mollyをコレクションする人も現れ始めている。

猪八戒Molly。簡単な改造ながら面白がる人が多く、大量に売れた。

清朝の貴妃に改造されたMolly。非常に手の込んだ改造で400元で販売された。

 

議論になる二次創作問題

しかし、この改造Mollyもビジネスになるかどうかは微妙だ。なぜなら原型はポップマートのMollyであり、二次創作商品になるため、公式に販売をするにはオリジナルIPの権利者であるポップマートの許諾が必要になる。タオバオで販売されている改造Mollyは、その多くが権利関係をクリアして製造販売している。

一方、フリマサービス「閑魚」では、個人が権利関係をクリアせずに(と思われる)、個人取引が進んでいる。現在のところ、改造は手づくりであるため、大量に販売される状態にはなっていないため、このような知財関連の問題は大きな問題にはなっていない。

ネット民の間でも、二次創作も立派なサブカルチャーであり、寛容な態度が望ましいと考える人と、個人の趣味であっても知財関連の法律を守ることが必要だと考える人で意見がわかれている。その曖昧さが、販売なのか譲渡なのか曖昧なフリマサービス「閑魚」で取引されることになっている。

▲改造Mollyの数々。このような改造フィギュアをコレクションする人も増えている。

 

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