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社区食堂に登場したブラインドボックスメニュー。注文しても何が出てくるかわかないメニューが人気に

公益性の高い社区食堂の経営難が課題となる中、ブラインドボックスメニューが経営改善の決め手になろうとしている。仕組みとしては日替わりメニューと同じだが、利用者にはゲーム性があり、食堂にとっては食材の有効活用になっていると看看新聞が報じた。

 

運営が厳しい社区食堂にブランドボックス方式メニュー

中国の大都市には「社区食堂」(コミュニティー食堂)と呼ばれる食堂がある。運営主体は、地方政府や社区(地域コミュニティー=町内会)や場合によっては民間企業であることもあるが、利益を追求するのではなく、地域の人に低価格で食事を提供することが目的の公益性の高い食堂だ。

特に高齢者向けのコミュニティー食堂は好評で、近隣の高齢者にとっては、自分で買い物をしたり食事をつくる面倒から解放され、年金の範囲内で食事ができるありがたい施設になっている。

しかし、価格を抑えることから、どこのコミュニティー食堂も運営を維持することが大きな課題になっている。この課題を解決するため、上海市のコミュニティー食堂では「盲盒」(ブラインドボックス)方式のメニューを取り入れ始めている。

▲社区食堂で出されるブラインドボックスメニュー。なんであるかは注文してみるまでわからない。食堂側も食材の有効活用ができ、経営状態改善に貢献している。

 

ブランドボックスメニューを楽しみにしている高齢者も

盲盒=ブラインドボックスというのは、フィギュアなどの玩具で流行した手法だ。ポップマート(https://www.popmart.com.cn/home)がこの手法でフィギュアシリーズを販売し大成功をした。

ポップマートのフィギュアシリーズには、数種類のポーズ、衣装が用意されているが、買って箱を開けて見るまでどのフィギュアが入っているかがわからない。これにより、全シリーズコンプリートしたいという購買欲に火がつき、多くの人がポップマートのフィギュアを購入した。

コミュニティー食堂のブラインドボックスメニューは、注文して出てくるまで中身がわからないというものだ。例えば、上海市徐家滙の万体滙社区食堂では、ブラインドボックススタミナボウルを発売した。注文しても中身が何であるかは出されるまでわからない。

この日はうなぎ丼だった。一般の飲食店で食べたら50元ほどはしそうなメニューだが、コミュニティー食堂では19元で提供されている。

中身は毎日変わるため、近隣の高齢者は「今日は何が出てくるのか」と楽しみにして毎日食べにくる人が増えている。

長寧区の仙霞社区食堂では、5元で野菜ブラインドボックスを提供している。入っている野菜は日によって変わる。これも新鮮な野菜が取れると人気で、近隣の高齢者は通常メニューの他に追加注文する人が多い。

ブラインドボックスメニューは、週、月の単位での栄養バランスも考えられているため、近隣の利用者に楽しみだけでなく、健康な食事も提供できている。これにより、社区食堂にくることが習慣化し、来店客数の増加につながった。

▲社区食堂は、公益性の高い食堂で、主に高齢者にために運営されている。運営は地元政府であることが多い。しかし、運営が厳しくなり、採算性も求められるようになっている。

 

廃棄食材も大幅に減少

このブランドボックスメニューはコミュニティー食堂の経営も大きく改善をした。仙霞社区食堂では、毎日50kgの野菜を仕入れて、4kgほどは最終的に廃棄をしていた。2024年7月から野菜のブラインドボックスメニューを始めると、これが1日に100メニューほど売れるようになった。すると野菜の仕入れ量は90kgに増えたが、廃棄をする量は500g以内にまで減った。

仕入れをする時も、価格が安くなっている食材を注文し、通常メニューだけであれば廃棄をしなければならなくなるような食材をブラインドボックスに回すことで、平均の仕入れ価格を下げ、食品ロスを減らせるようになる。これにより、コミュニティー食堂の運営も安定をする。

一般的な飲食店の「日替わりメニュー」と実質的には同じことなのだが、注文して出てくるまで何が出てくるかわからないというゲーム性を持たせた点が人気の理由になっている。

▲野菜のブラインドボックスメニュー。内容はその日の仕入れによって変わる野菜メニュー。しかし、5元と安く、ゲーム性もあり、来店客から人気のメニューになっている。

 

社区食堂の維持にも貢献

これまでコミュニティー食堂は、地方政府などの補助金に頼って運営されてきたが、地方財政の悪化から今の額の補助金が永遠に支給される保証はなく、市場化=独立採算制へシフトすることが求められてきた。しかし、その公益という目的から、やみくもにメニュー価格を値上げすることはできない。

このブランドボックスメニューは、コミュニティー食堂を持続可能にする決め手になるかもしれない。

▲社区食堂は、地域の人に低価格で食事を提供する公益性の高い施設。主に高齢者が利用する。