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今回は、潮玩(流行玩具)についてご紹介します。
Labubu(ラブブ、https://www.popmart.co.jp/?mode=cate&cbid=2638956&csid=0)というフィギュアがタイで爆発的な人気になっています。このフィギュアを制作したのはポップマート(https://www.popmart.com.cn)です。今年7月に、タイのバンコクにあるショッピングモール「メガバンナー」にポップマートの店舗が開店しました。すでにラブブが人気となっていたため、ラブブをフューチャーしたキャンペーンを行ったところ、来店客が殺到し、1日の売上が1000万元(約2億円)を突破し、ポップマートの海外店舗の売上記録を塗り替えることになりました。
このラブブの人気が爆発したのは、韓国のK-Popグループ「BLACKPINK」のリサがSNSでツイートをしたことがきっかけになっています。リサはタイ出身で、韓国に渡って世界的なポップスターになったことから、タイの少女たちから強い憧れを持たれています。そのリサが好きなラブブを自分もほしいと思う人が増え、現象級の人気になっています。
https://www.instagram.com/labubuofficial/reel/DBcxv6_S9wS/
▲BLACKPINKのLisaが投稿したLabubuの映像を、Labubu公式が転載をしたもの。この投稿がきっかけで、タイで爆発的な人気となった。
さらには、タイのシリワンナワリー・ナリラタナ王女がバッグにラブブをつけている姿が報道され、さらに人気があがりました。タイ国家観光局はラブブを「不思議なタイ体験官」に任命して、インバウンド旅行を宣伝する観光大使にもなっています。
中国のポップマートが中国内で開催したライブコマースにも、タイからの視聴者が殺到しました。そして、コメント欄には「タイに発送してもらえるのか」「支払いはどのようにすればいいのか」というタイ語のコメントが並びました。ラブブが完売をしてしまうと、ポップマートはタイ語で「完売しました」というコメントを表示するまでになりました。
このラブブを「フィギュア」と呼んだことに違和感を感じられた方もいるかもしれません。私もフィギュアという言葉を使うのは違和感があります。しかし、うまく表現できる言葉がまだないのです。
中国でも同じで、一般的なフィギュアは「手弁」(手で処理するの意味)という言葉がありますが、ラブブなどのポップマートの製品は「潮玩」(チャオワン)=潮流玩具と呼ばれます。しかし、これも「流行の玩具」という意味で、範囲が広く、人によってはソフビ人形やレゴなども含めるケースがあります。英語表現では、pop toy、art toyなども使われますが、個人的にいちばん近そうだと思える表現がdesigner’s toyです。
フィギュアは造形師が手作業で彫刻のようにしてつくります。そして、その型を取り、複製を大量生産して販売をしています。かなり美術寄りの玩具なのです。一方、潮玩はデザイナーが最初から大量生産をすることを前提に設計をします。かなり工業寄りの玩具です。
また、いずれも子ども向けではなく、大人向けであり、コレクションの対象になるということは共通をしています。
形状的には三頭身のデフォルメフィギュアが近いのだとは思いますが、コンセプトが異なっています。デフォルメフィギュアは、知っているキャラクターがあえて三等身にデフォルメされていることに可愛らしさを感じる玩具ですが、潮玩は最初から三等身程度にデザインされています。
ポップマートはソニーエンジェル(https://www.sonnyangelstore.com/)を輸入販売し、独自IPでソニーエンジェルのような製品を販売したいというところから成長が始まりました。この潮玩の源流は日本のソニーエンジェルにあるということは記憶しておくべきことだと思います。
ポップマートは日本でも東京、大阪に11店舗を展開し、ロフトやハンズなどでも販売されていて、すっかり定着した感があります。しかし、ここまで成長し、定着すると予想していた人は、ほとんどいなかったのではないでしょうか。
「vol.116:盲盒のヒットで生まれた大人玩具市場。香港上場を果たしたポップマートと追いかける52TOYS」でもご紹介しましたが、ポップマートが知られるようになったのは2018年に発売したMollyシリーズ(https://www.popmart.co.jp/?mode=cate&cbid=2638952&csid=0)の大ヒットです。日本の可愛い一辺倒のキャラクターではなく、どこか芯の強い自意識を表現したモリーは中国の女性の心をつかみました。しかも、その販売方法が「盲盒」(マンフー、ブラインドボックス)方式だったのです。モリーは大体12種類程度のバリエーションが発売されますが、箱を開けてみるまでどれが入っているかわからないというものです。いわゆるガチャの手法で、これがコンプリート欲に火をつけ、多重買いを呼び、さらにはSNSでダブったモリーを交換する投稿があげられ、瞬く間に現象級のブームになっていきました。
しかし、当然ながら、このような販売手法は社会からの批判を受けます。そのため、ポップマートはアソートボックスを発売するようになります。これは12種類であれば、すべてのモリーがまとめて入っているパッケージです。これを見て、夢から覚めた人は少なくありません。1個1個ドキドキしながら買い集めていくのが面白いのであって、最初からまとめて買えるとなると、興味が失せてしまうのです。この盲盒という販売手法にも限界がありました。
さらに、問題は、モリー以降、ヒットするIPを生み出すことができていないことです。2023年にはSKULLPANDA(https://www.popmart.co.jp/?mode=grp&gid=2688184&sort=n)がヒットをしましたが、それでもモリーの人気には及びません。ヒットを連発するというのは簡単なことではありません。
そのため、ポップマートは扱っている製品は評価されているものの、企業として継続して利益を出せるのかという不安があり、なかなか投資が集まらないという状況が続きました。
しかし、確かに国内売上は伸びやなんでいますが、海外展開を進め、海外売上が伸びていることにより企業として成長をしています。ラブブの記録的ヒットにより、2024年の海外売上はさらに飛躍をすることになります。
玩具業というのは、ビジネスとしては非常に難しい部類に入ります。実用品の世界というのは売れない製品をつくってしまっても、半額にすれば売れます。損はしますが、損の幅を小さくすることができます。しかし、玩具はそうはいきません。売れない商品となると半額にしても売れません。それどころか、無料にしても「ゴミになるからいらない」と言われてしまうのです。
一方、ヒット商品は爆発的に売れます。ところがこれも難しさがあります。ヒットするということは大量に製造しなければなりません。そのために製造ラインを増やして従業員を増やして体制づくりをしますが、玩具のヒットは短期間で収束をします。今度は、膨らんだ設備と従業員が重荷になり、ヒットで儲けたお金を食い潰していくことになるのです。ヒット商品を出したことにより、会社が大きくなりすぎて倒産するという事態も現実に起こります。その中で、ファミコン、スーファミ、Wii、Switchと定期的にヒット商品を出している任天堂というのは奇跡のような会社なのです。
このような潮玩は、改造するという遊び方も流行をしています。中には、ポップマートが著名なアーティストとコラボをして、カスタマイズした潮玩を発売するようになり、そうなると価格は美術品の領域に入ってきます。大量生産品を使った芸術ですから、まさにポップアートそのものです。
これにより、ポップマートの対象年齢は10代20代だけでなく、30代40代へと広がり、50代以上の人でもコレクションをするようになっています。
一方、下の世代にも同様の広がりが生まれています。二次元です。アニメやゲームのキャラクターの缶バッジ、アクリルカード、手帳などです。このようなキャラクターものの製品はまとめて谷子(グーズ)と呼ばれます。「グッズ」の音をとったものです。これが中高生、さらには小学生の間でもブームになっています。休日には谷屋(グッズ店)に行き、好きなキャラクターのレアなグッズを探して買うという楽しみ方です。カバンや服につけたり、自宅の自分の部屋に飾ったりして、コレクション性もあります。このようなグッズ探しでショップ周りをすることは「喫谷」(グッズを食べる)という独特な表現も生まれています。いずれも価格が10元から30元程度なので、小中学生、高校生のお小遣いでも買えるのです。
非常に面白いことに、このようなグッズ店が、都市中心で寂れてしまった都市型ショッピングモールを再生し、オタクの聖地として強い集客力を持つようになっています。今回は、この潮玩の低年齢化と都市型ショッピングモールの再生についてご紹介します。
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