「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 143が発行になります。
登録はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001690218.html
今回は、WeChatチャネルズ(視頻号)についてご紹介します。
WeChatチャネルズとは、中国でほとんどの人が使っている国民的SNS「微信」(ウェイシン、WeChat)の機能のひとつで、次々とショートムービーが見られるというものです。簡単に言えば、WeChatの中にあるTikTokのようなものです。
TikTokのベースになったバイトダンスの「抖音」(ドウイン)が中国で大成功をし、さらにその国際版であるTikTokが成功をすると、世界でにわかにショート動画ブームが起きています。YouTube、Facebook、インスタグラムなどがショート動画に対応をしました。
しかし、中国でのショートムービーの位置付けと海外でのショート動画の位置付けはかなり違っています。YouTubeのショート動画のあり方がいちばんわかりやすいと思いますが、あくまでも縦画面、短尺の動画というコンテンツの一形態にすぎません。従来からある動画のひとつのバリエーションという扱いです。ですので、ネットでは「ショート動画で収益化するには?」という話題が多く、従来どおりユーチューバーがショート動画を作成し、表示される広告収入の分配を受けるというものになっています。ビジネスモデルとしては従来の動画と基本的に変わりません。
一方、中国でもショートムービーを配信して、広告収入は得ることはできますが、多くの配信主は広告収入をあてにしていません。何で儲けるかというと、ひとつはショートムービーが拡散をして知名度が上がることによる企業案件です。企業がムービーの内容を見て、自社の商品やサービスを紹介するムービーの制作と公開を依頼するというものです。
もうひとつが「帯貨」(ダイフオ)と呼ばれるものです。「商品を持って」という意味で、「帯貨直播」であれば「商品を持ってライブ配信を行う」、つまりライブ配信で商品を販売するライブコマースという意味になります。
ショートムービーの中で商品やサービスを紹介して、その場で販売をすることもできます。このようなムービーには商品タグが表示されるので、タップをすると、購入画面が現れ、その場で買うことができます。いわゆる「種草」(ジョンツァオ)です。このように、物販がショートムービーでの収益化の中心となっています。
2021年の抖音の流通総額(GMV)は、8000億元(約16.4兆円)、快手のGMVは6800億元(約13.9兆円)になりました。日本のECでは、楽天が4.5兆円、アマゾンが3.2兆円と報道されているので、いくら人口の多い中国とは言え、ものすごい規模の数字です。この規模の売上が、ショートムービーとライブコマースだけで生み出されているのです。
この抖音と快手に対抗するため、テンセントはWeChatの中に2021年2月にチャネルズを追加しました。テンセントのねらいも同じで帯貨による利益をねらっています。もちろん、ライブコマースも可能になっています。
テンセントは、チャネルズのGMVなどの詳細な数字を発表していません。しかし、「2022年中期報告」には次のような記述があります。
「チャネルズの利用は相当な程度進みました。チャネルズの総利用時間は、モーメンツ(タイムラインに相当)の利用時間よりも80%多くなりました。チャネルズの投稿量も昨年同時期から200%増加をしました。AIがリコメンドするショートムービーの視聴時間も400%増加をしました。配信者の日間アクティブ数、投稿総時間のいずれも100%増加をしました。また、2022年第2四半期には、一連のライブコンサートの配信を行いましたが、いずれも1000万人級の観客を獲得しました」。
これはチャネルズに関する報告ではなく、WeChat全体に対する短文報告の全文です。WeChatにはSNSやスマホ決済、エンタープライズ版、CRM(顧客管理)などの機能もありますが、ほぼすべてがチャネルズの記述になっています。それだけ、テンセントはチャネルズを重要視し、成長もしているということです。ただし、残念なことに肝心なGMVは非公開になっています。現在は、帯貨関連のEC機能を整備中で、本格的な種草やライブコマースがまだできないこともあるかと思います。
中国の新世代ECとも言えるショートムービー帯貨とライブコマース。この主要プレイヤーは、抖音、快手と新規参入をしたWeChatチャネルズの3つであることはもはや疑いがありません。
この3つのプラットフォームがしのぎを削る競争をすることになります。ただし、この3つはプラットフォームとしての性格が大きく異なります。そこを理解していないと、「抖音でこのような帯貨が成功をしたので、それを模倣して日本でやってみる」ということをしても、プラットフォームの違いにより失敗をする可能性があります。
今回は、この3つのプラットフォームにどのような違いがあるのかをご紹介し、その中でもWeChatがどのようなビジネスモデルを構築しようとしているのかをご紹介します。
続きはメルマガでお読みいただけます。
毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。
今月発行したのは、以下のメルマガです。
vol.140:始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか
vol.141:Z世代お気に入りのスマホはOPPO。コモディティ化が進む中国スマホ状況
vol.142:ライブコマースはなぜ中国だけで人気なのか。その背後にあるECの成長の限界