中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

新たなビジネスを生み出している米国系中国人たち。米国と中国の両方の文化を知るバイカルチャラル

米国のスタートアップの創業者に中国人やインド人の名前があることが多くなっている。華人、華僑たちは、中国と米国の両方の文化に親しみ、融合させることで新しいビジネスを生み出すようになっていると華商韜略が報じた。

 

シリコンバレーがテックビジネスの発信地だった

新しいテックビジネスは米国の西海岸、特にシリコンバレーから生まれる。それは間違いではなかった。既存のビジネスにテクノロジーを適用することでイノベーションを起こすことができる。西海岸には、世界中からそのような起業を目指した若者たちがインキュベーターアクセラレーターと呼ばれる起業の士官学校に入ることを目指して集まってくる。

そこから、タイムマシンモデルと呼ばれる言葉も生まれた。米国で生まれた新しいビジネスが、グローバル展開をする前に、先に外国で真似をして市場を確保してしまおうという発想だ。

しかし、シリコンバレーがテックビジネスの中心である時代は変わりつつある。

 

華人の社区団購からヒントを得たWeeee!

米国生まれの中国人、劉民は上海交通大学に「留学」をし、米国に帰国後、インテルで働いていた。2015年、劉民は西海岸の華人社会で面白い消費行動が行われていることに気がついた。海外の華人の間でも「微信」(ウェイシン、WeChat)は必須のコミュニケーションツールになっている。華人社会での連絡だけでなく、中国にいる親戚や知人とも連絡がとりやすいからだ。

このWeChatを使って団体購入をする人たちがいた。代表者が、近隣の人の生鮮食料品の注文を取りまとめてスーパーなどに発注をする。スーパーは代表者のところまで配達をしてくれ、割引もしてくれる。代表者は注文ごとに小分けをし、近隣の人は代表者のところまで取りに行く。WeChatを使っているので、このような取りまとめが簡単に行える。代表者は多少の手数料は取るものの、ビジネスというよりは、近所の助け合いに近い活動だった。

劉民はこれはビジネスになるのではないかと考え、生鮮EC「Weee!」を起業した。

▲生鮮EC「Weeee!」は、中国で流行の兆しがあった社区団購をいち早く米国で展開をした。

 

拼多多からソーシャルECの手法を学ぶ

Weee!の当初のビジネスモデルは、中国でも拡大をしていた社区団購と同じものだった。団長と呼ばれる消費者の代表者が近隣の注文を取りまとめて発注をする。Weee!は団長のところまで配達をする。利用者は団長のところに自分の商品を取りに行くというものだ。

このような社区団購は米国には存在をしなかったため、瞬く間に利用者を獲得し、1年後には毎月300万ドルの売上があり、760万ドルのエンジェル投資も獲得した。

しかし、そこから成長が止まってしまった。Weee!を必要とする人の多くが利用をするようになり、市場が飽和をしてしまったのだ。選択肢としては他都市や海外に展開をするか、ビジネスモデルを拡張していく他ない。

劉民は、ビジネスモデルの拡大を選択した。2018年になると、中国でソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が成長をしてきた。劉民の親戚や友人でも拼多多を使う人が増えていた。そこで、劉民は拼多多の仕組みを取り入れることにした。

それは、複数人でまとめ買いをすると割引率があがっていくというものだった。たとえば、白菜がほしい時には、まず白菜をWeee!で注文をする。その後、WeChatなどのSNSを使って、友人知人に商品リンクを送り、同じものを買うように促す。もし、友人知人がそれに応じて同じ商品を買うと、最初の消費者の購入価格がどんどん割引されていくというものだ。影響力のある人ほど、安く買えることになる。

ポイントは、消費者が割引をしてほしいがために、友人知人に商品情報を拡散してくれることだ。

これによりサンフランシスコの華人社会では、誰もがWeee!を使うようになった。

 

YouTube創業者との出会い

この頃、Weee!はまだ100人程度の規模のスタートアップにすぎなかった。しかし、劉民は面識のなかった陳士駿(スティーブ・チェン)から連絡を受け、会いに行った。スティーブ・チェンは、YouTubeの共同創業者で、元YouTubeのCTOを務めていた有名人だった。Weee!の利用者であるという。

スティーブ・チェンの家に行くと、そこには台湾出身の米国人企業家もいて、その人もWeee!の利用者であるという。これがきっかけとなり、投資話が次々とまとまり、Weee!の2回目の成長が始まった。投資総額は8億ドルとなり、企業価値は41億ドルと見積もられている。

 

中国のフードデリバリーにヒントを得たドアダッシュ

2013年、スタンフォード大学学生寮に住んでいた学生、徐迅は、中国で美団やウーラマといった外売(フードデリバリー)が流行しているのを見て、後のDoorDashの原型となるビジネスを始める。利用者から飲食店の出前注文を受けて、飲食店でピックアップし、利用者まで届けるというデリバリービジネスだ。

しかし、すぐに厳しい競争にさらされた。2014年になると、グラブハブ、ウーバーイーツなどがフードデリバリー事業を本格化させたからだ。

資本力の点で太刀打ちが難しいDoorDashは、戦略的に地方都市と郊外地区への浸透を図った。大都市部では消費者の購買力も高いが、多くの人が自宅で出前を頼んで食べるよりも、レストランに行って食べることを好む。大都市はレストランの数も多く、移動の利便性が高い。一方で、地方都市や郊外は外食をするにも車で出かけなければならない。これにより、DoorDashは地位を確保した。

▲フードデリバリー「ドアダッシュ」の創業者、徐迅は、中国での流行を見て、スタンフォード大学でデリバリービジネスを始めた。

 

タオバオの業者に越境サービスを提供したWish

2011年に創業されたECサイト「Wish」も、共同創業者である張晟の経験が活きている。広東省広州市出身の張晟は当然、アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)を利用していた。しかし、800万もの販売業者がタオバオで販売をしているのに、海外への越境販売をしている業者は1%もいなかった。このようなタオバオの販売業者に越境ECの道を開いたのがWishだった。Wishの販売業者の90%は中国の販売業者になっている。

▲EC「wish」も販売業者の90%が中国の販売業者。中国の販売業者に越境ECの道を拓いた。

 

華人が触媒となり、各地のテックビジネスを融合させていく

2010年代半ばまでは、テックビジネスの中心はシリコンバレーであり、中国は「Copy to China」の時代だった。その典型は、百度であり、創業者の李彦宏は、米国のインフォシークで働いていた経験があり、百度の初期のビジネスはグーグルを強く意識していた。

しかし、2010年代後半になると、中国でもイノベーティブなビジネスが生まれるようになり、世界の中心というものがなくなり、さまざまに響き合いながら、新しいビジネスが登場をするようになっている。Copy to ChinaからCopy from Chinaの時代となり、それももはや古く、起業家は国境を超えて飛び回り、新しい商機を見出そうとする時代になっている。

米国と中国の両方の文化を知るバイカルチャラルな華人、華僑たちが、テックビジネスの主役になろうとしている。