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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

始まった中国ゲーム企業の「脱中国化」。萌え要素により日本市場で成功した「雀魂」

中国ゲーム企業の脱中国化が始まっている。政府による規制が厳しすぎて、運営ができない事態が起きているからだ。その状況で、「雀魂」は中国から日本にシフトをし成功した。この成功を見て、日本市場を軸足を置くゲーム企業が登場してくることになると17173遊戯網が報じた。

 

ゲームの審査数が制限される中国

中国のゲーム業界が苦しい立場に追い込まれている。政府の監督が強化をされているからだ。中国政府は、青少年の健全な成長に害をなす部分の規制を強化することで、ゲーム産業を健全に成長させるとしている。

中国でゲームを発売、公開するには、事前に国家新聞出版総局により内容の事前審査を受ける必要がある。この審査は以前から滞っていた。国家新聞出版総局の人的資源には限りがあるのに、大量のゲームが審査を申請しているからだ。2018年4月、国家新聞出版総局は審査業務をいったん中断し、再開以降は審査数を制限することになった。

これにより套版号という問題が起き始めた。審査を通過するゲーム数が限られるようになったため、すでに運営中のゲームの運営を中止して、そのゲームの許可を使って別のゲームを運営するというものだ。古い名義を使って新しいゲームを運営する。もちろん、違法な運営となる。

▲雀魂のゲーム画面。対戦型の麻雀ゲームだが、萌え要素が入っているのが特徴。

 

グローバル一括運営も禁止に

また、グローバル運営も禁止された。現在、多くのゲームはグローバル一括で運営され、ゲーム内でユーザー同士が交流できるようになっている。これを利用して、政治的な発言をする者が現れるため、中国内でゲーム運営をするには、中国だけ別運営にすることが求められれるようになっている。

さらに、未成年のゲーム利用を制限するため、実名登録や未成年の利用を制限するシステムの導入も求められている。テンセントや網易などの大手ならともかく、小さなゲームスタジオにとっては非常に負担が重くなっている。

 

中国ではなく日本で運営する中国ゲーム

猫糧工作室(Catfood Studio)が開発した麻雀ゲーム「雀魂」(じゃんたま、Mahjong Soul)も、2020年に、套版号とグローバル運営の違反で2ヶ月間の運営停止の処分を受けた。中国内での運営は厳しいと判断した猫糧工作室は、日本での運営を力を入れることにした。

日本での運営を行なっている上海悠星網絡科技(Yostar)を通じて、「賭ケグルイ」「咲-Saki-」「かぐや様は告らせたい」などのアニメとコラボをする、Vtuber参加の大会を開催するなどしてファンを増やしていった。

▲アニメ「賭ケグルイ」とのコラボ。萌え要素は、日本、中国、そして韓国、東南アジアでも通用するため、スマホゲームでは必須の要素になりつつある。


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▲雀魂を使ったVTuberによる麻雀大会「【絶叫】初心者だらけの麻雀が地獄すぎる」。もはや多くの人が、ゲーム開発企業が日本か中国なのかは気にせずに楽しんでいる。

 

「雀魂」の収入の92%が日本から

ビリビリでゲーム関連の統計を発表している「国産二次元手游観察」によると、2021年の雀魂の収入は3.26億元(約65.2億円)で、その92%が日本からのものになっているという。日本のiOSのダウンロードランキングでも20位前後につけ、ボードゲームの売り上げランキングでは1位になっている。

さらに2022年4月からはアニメ「じゃんたまPONG」が地上波で放送され、Sensor Towerによると、2022年4月の中国ゲームの海外売上の成長率ランキングでは6位にランクインされた。今後も日本での売上を着実に増やしていくと見られている。

▲雀魂の国別売上。92%が日本からの収入になっている。中国での売上はほぼ0に近い。

 

脱中国化が進む中国ゲーム企業

雀魂の特徴は、いわゆる萌えキャラを起用し、声優による音声も入れるなど、若い世代の萌え文化に特化をしたことだ。日本の麻雀ゲームは、ゲームとしての本格さを追求したり、リアルな美女がキャラクターとして登場するなど、昭和の香りがする演出が主流になっていた。「萌え+麻雀」という領域は、空白地帯になっていたのだ。ここに雀魂がうまく入り込み、地位を確保した。

中国のゲームに対する監督強化は今後も厳しくなる一方だと見られている。日本と中国は文化的にも近く、特に若者の「萌え」文化は、日中の違いはほぼなくなり、中国人も日本の萌え文化をそのままの形で楽しんでいる。今後も、「萌え」をキーワードにした中国ゲームが、日本市場に入ってきて成功をするということが続く可能性が高い。