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利用が進むレンタル充電器。一方で、返せないなどのトラブルも。上海消費者委員会が実態調査

利用が進むスマホ用レンタル充電器。飲食店やコンビニなどで借りて、充電が終わったら返却するというサービスだ。自分で充電器を持ち歩く必要がなく、多くの人から利用されているが、それだけにトラブルも発生している。上海市消費者権益保護委員会が実態調査を調査を行い、その結果を公表した。

 

よく利用されているレンタル充電器

街中のカフェやバーなどに置いてある「充電宝」(チョンディエンバオ、レンタル充電器)。中国では、QRコード決済や地下鉄、バスの乗車コード、健康コードなどスマートフォンがないと行動ができないところまできている。そのため、多くの人がバッテリー切れを心配している。

自分でモバイルバッテリーを持ち歩く人もいるが、充電をしておき、置き忘れをしないようにしなければならず、飲食店などに置いてあるレンタル充電器を利用する人も多い。飲食店で食事をする時などに借り、食事中に充電をして返却をする。利用料は時間制でスマホ決済で支払いが行われる。

また、返すのは同じところではなく、別の場所に返してもよく、移動中にコンビニなどで借りて、充電をしながらバッグに入れて移動、別のコンビニに返却するということも可能だ。

 

大手は三電一獣。価格は1時間3元が基本

現在、大手は、「小電」「街電」「捜電」「怪獣充電」の4つで、俗に「三電一獣」と呼ばれ、この4社で96.3%のシェアをとっている。

価格はだいたい1時間あたり3元(約54円)が相場だ。しかし、需要の大きい場所では使用料も高く設定されており、バーや観光地では1時間10元(約180円)ほどのこともある。「テスラの充電料金よりも高い」とネットで話題になったが、それでも利用する人は多く、街のインフラのひとつといってもいいほどになっている。

それだけにトラブルも多く、上海市消費者委員会では、充電宝について調査を行った。

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▲電飽飽の充電器。この充電器が飲食店やコンビニなどに設置をし、モバイルバッテリーを抜き取って充電をする。返却は、同じブランドであれば、どこの充電器に戻してもかまわない。

 

返却トラブル

約40%の利用者が、返却したのに、システムに返却が反映されず、時間料金をとり続けられたというトラブルを経験している。システム側の問題のこともあるが、多くの場合は、きちんと挿さなかったため、返却と認識されなかったというケースだ。

12のブランドのうち、「電飽飽」のみが返却が完了すると音声で知らせるようになっている。その他では、ランプの点灯、スマホアプリなどを自分で確認する必要がある。

 

返却できないトラブル

約23%の利用者が、返却できないトラブルを経験している。近くに返却ポイントが見つからない、見つかっても空きがなくて返却できない、返却ポイントが店内にあり営業時間が終了しているため中に入れないなどだ。返却できないと、そのまま利用料金がかかり続ける。サポートセンターに連絡を取っても、別の返却ポイントを案内されるだけだ。

「電飽飽」「醒電」の2つでは、返却ポイントの場所の案内が不明瞭で、近くの人に尋ねないと返却用の充電器が見つからないケースがあった。「V電」「咻電」「雲充吧」「捜電」では、アプリの返却案内が不明瞭で、経路の指示に従って移動をしても返却ポイントが見つからないケースがある。中には、返却ポイントになっている場所に充電器が設置されていないケースもあった。

「街電」では、返却機がいっぱい、営業時間外で入れないなど、利用者の落ち度ではない理由で返却できない場合、サポートセンターに連絡をすると、その時点で利用料の請求を止め、近くの返却ポイントを案内してくれる。

 

利用料金の計算トラブル

利用料金はブランドで統一されているわけではなく、利用する場所によって異なっている。また、利用料金は30分または60分単位での課金で、30分では1.5-2.5元、60分では2-5元程度が相場だ。ややこしいのは、2分から5分程度までの利用は無料にしているブランドがあり、そのような無料制度をとっていないブランドもあるということだ。無料だと思って2分程度使って返却をすると、30分の利用料が請求される。アプリで確認をすればわかることだが、利用者からは分かりづらいと不評だ。

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▲怪獣充電のミニプログラム。充電器のある場所が地図上に表示され、選択をすると、営業時間や利用料金などが表示される。


よりわかりやすい利用案内が求められる

充電宝には、大手の三電一獣以外にもブランドがあり、大都市では10以上の企業がサービスを提供している。しかも、サービス品質の差は極めて小さく、多くの人がアプリではなくミニプログラムを使って利用する。ミニプログラムから利用をすれば、アカウント登録やログインなどは不要で利用することができるからだ。

つまり、多くの人がどのブランドであるかをあまり気にせずに利用をする。それぞれに料金体系や返却方法、返却ポイントなどが異なっているために、トラブルが生まれやすくなっている。

業者間で、統一料金、統一ルールを設定することは難しいため、返却ポイントなどに分かりやすい料金表示などをすることが求められている。充電宝市場は、2021年は127億元(約2270億円)と推定されており、その後も成長し続けると予測されている。成長市場であるだけに、より利用者にわかりやすい仕組みにすることが求められている。