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ライドシェア滴滴出行は、日本で成功することができるか?

中国ライドシェア大手の「滴滴出行」が大阪でサービスを始めている。ただし、ライドシェアではなく、滴滴のプラットフォームを利用したタクシーサービスだ。日本でも滴滴は成功することができるのか。中国人の視点から、界面が報じた。

 

ターゲットは訪日中国人

今年9月から、中国ライドシェア「滴滴出行」(ディーディー)が、ソフトバンク合弁会社を設立し、大阪でサービスを始めている。と言っても、中国のようにライドシェアをするわけではなく、滴滴のアプリとプラットフォームを利用して、第一交通などのタクシー配車を行う。

主に訪日中国人をターゲットにしていて、中国の滴滴アプリがそのまま利用できルため、行き先などもアプリ上で指示できる。日本語のできない中国人にも利用ができる。

滴滴出行の海外サービス展開は、今年4月のメキシコ、5月のオーストラリアに続いて、大阪が3都市目になる。

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▲日本でも、中国版の滴滴アプリがそのまま利用できる。日本語が話せない人でも、行き先などをアプリで指示することができる。

 

公共交通で不便を感じない日本の都市

滴滴出行は、日本で成功することができるだろうか。界面新聞が日本の滴滴を利用した人に取材をすると、答えは否定的だ。

東京で暮らして8年になるある中国人男性は、自分の車を持っていないが、出かけるときは地下鉄か鉄道を使い、タクシーを利用することは少ない。これは在日中国人だけでなく、多くの日本人がそうであると感じていると言う。

なぜなら、日本の公共交通、特に鉄道は発達していて、しかも中国に比べて駅間が短い。どこに行くにも、ほぼ地下鉄と鉄道で不自由を感じないからだ。

 

日本のタクシー料金は中国の7倍弱

一方で、日本のタクシーは料金が高い。これは日本で暮らす中国人の多くがそう感じていると言う。

大阪では、初乗り41.6元(680円)で、2kmを越えると188mごとに4.9元(80円)が追加されていく。これに対して北京では初乗りが13元、3kmを超えると1kmごとに2.3元となる。

10km乗った場合、大阪では197元(約3200円)になるが、北京では29元(約470円)にしかならない。日本と中国の給与水準の差を考慮しても、日本のタクシー料金はかなり高額になる。

日本に住んでいる中国人も高いと感じているが、中国で滴滴ライドシェアやタクシーを使っていて、大阪に旅行できた中国人にとっては、より高く感じることになる。

 

割引クーポンがあれ利用する、なければ利用しない

北京のある女性で、大阪に出張に行き、滴滴をすでに利用したという人がいる。しかし、それは800円の割引クーポンがあったため、利用額は30元少しだったからだ。北京とほぼ同じ感覚だ。しかし、次に乗ったときはクーポンがもはや使えないため、90元以上を支払うことになった。それで高いと感じてしまい、次に日本に行くことがあっても、よほど時間が迫っているとか、駅から遠いということでもなければ使わないつもりだという。

 

日本人が使うようになるのには時間がかかる

趙雄さんは北京生まれだが、大阪の大学に留学をし、卒業後、大阪で初の外国人ドライバーとして働いている。趙雄さんのタクシー会社が、滴滴に加盟したため、中国人を乗せる機会が増えた。しかし、中国人は利用するかもしれないが、日本人が利用するようになるまでは時間がかかると感じている。日本は、高度の秩序がある社会で、ルールも成熟し、人々の消費も理性的。その反面、新しいものを受け入れるスピードは遅いからだ。

趙雄さんは、日本人の利用を促すにはクーポンが効果があると言う。タクシーもクーポンを配布するキャンペーンを行ったときは、如実に乗客が増える。滴滴出行も効果滴なキャンペーンを行うことで、時間はかかるかもしれないが、日本人の間にも浸透していくかもしれないとも感じている。

滴滴出行もキャンペーンを行い、11月9日から12月1日までの金曜日、土曜日は、最初の1回のみ初乗り料金の680円を無料にした。趙雄さんによると、通常時の3倍の乗客があったと言う。

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▲メキシコでサービスを開始している滴滴出行。オーストラリアでもサービスを始めている。旅行をする中国人にとっては、中国版の滴滴アプリがそのまま利用できるため利便性は高い。

 

タクシー配車の仕組みとしては優れている

趙雄さんは、滴滴出行の大阪進出は、日本のタクシー業界をバージョンアップすることにつながると言う。趙雄さんは1日に2万円を稼ぐことを目安にしている。以前は、夕方5時か6時にようやく達成できることが多く、かなりの時間、街を「流す」ことが必要だった。しかし、滴滴出行のサービスが始まってからは、アプリ経由で呼ばれることが増え、街を流す時間が減り、夕方4時頃には目標額に達するようになった。

また、それまでは電話による配車システムがあったが、コールセンター方式は効率が悪く、お客を長時間待たせてしまうこともあった。趙雄さんは、滴滴出行の配車システムの方が効率がよく、お客を待たせることもなくなったと感じている。

 

タクシー配車を進化させることになる滴滴プラットフォーム

日本の法規により、個人が自分の車でタクシー行為をするライドシェアは禁じられている。そのため、滴滴出行が大阪進出したと言っても、配車システムを利用して、既存のタクシーを配車するだけのサービスになっている。それでも滴滴出行は、日本のタクシーを効率化し、乗客の利便性を高めることが可能だと考えている。すでに日本交通が「全国タクシー」アプリにより、アプリ配車のサービスを始めていて、滴滴出行と日本交通は、互いに競い合いながら、日本のタクシー業界を進化させていくことになる。

滴滴出行は、現在、京都、福岡、東京などでもサービスを始める計画を進めている。