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自動車生産も全自動化の時代。ギガキャストと全自動化暗闇工場を導入した長安自動車

重慶市長安汽車のアジア最大規模の暗闇工場の稼働が始まった。暗闇工場とは、自動化率100%であるため、人が作業をする必要がなく、照明が不要となった工場のこと。最速で60秒に1台の自動車が生産されると上游新聞が報じた。

 

完全自動化された自動車工場

この暗闇工場は、長安汽車がチャイナユニコム、ファーウェイと協働で建設したもの。投資金額は100億元で、年間生産台数は28万台。すでに新エネルギー車「阿維塔07」(AVATR07)の生産が始まっている。

工場の敷地面積は77.3万平米、総床面積は41万平米。東京ドーム16.5個分の敷地に、東京ドーム9個分の床面積になる。建設が開始されたのは2023年1月、わずか352日で試験生産を始めた。

▲暗闇工場の中はすべて自動化されているために、照明の必要がなく、通称暗闇工場と呼ばれる。

 

ギガキャストを活用し2時間の工程を2分に短縮

工場内には800余のスマート設備、1400体のロボット、650台の無人搬送車、200台のワークステーションがあり、工程はすべて自動化されている。スマート設備とロボットが働き、カープールにも無人搬送車が移動をさせる。

また、長安自動車初のギガキャスト設備「7700T」を導入し、これまで163の部品を溶接などをして組み立てていたシャシーを、一体鋳物成形することにより、2つの部品にまとめた。従来は2時間かかっていた生産時間が2分に短縮される。

▲資材の搬送もすべて自動化されている。

 

従業員はデジタルツインを監視する

工場内には、4つの5Gステーション、329個の5Gマイクロステーションが配備され、1万2000台の機器をワイヤレス接続し、デジタルツイン化されている。仮想空間の中に、リアルな生産設備と同じものがあり、仮想空間の工場でモニタリングをしたり、生産設備の制御をすることができる。

また、36メガワット、26万平米の太陽光発電システムを備え、年間2600万kWhの電力を発電する。これは工場が必要とする電力の19%に相当し、CO2排出量を年間で2.4万トン削減する。

▲視覚情報による品質検査が必要な場所にだけ照明が使われる。従業員は、工場を監視するのではなく、デジタルツインの方を監視し、制御する。

 

新エネルギー車に舵を切った長安自動車

長安自動車は、今年電気自動車「啓源E07」など、3種類の新エネルギー車(NEV)を発表する。2030年までに400万台、NEV割合を60%にする目標を立てており、世界の自動車メーカートップ10入りをねらっている。そのために、今後5年、2500億元規模の投資をしていくという。今後も、暗闇工場が建設されていくことになる。

暗闇工場は携帯電話や家電製品などではすでにさまざまなメーカーが採用をしているが、自動車生産もいよいよ暗闇工場が主流になっていきそうだ。

▲この工場で生産されるAVATR07。電気自動車のSUV。REEVタイプも発売される。21.99万元(約460万円)から。