中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

災害時に活躍するテック企業たち。ドローンで携帯回線や照明を提供

2001年7月、河南省は中心に1000年に一度の豪雨に見舞われ、鄭州市を中心に洪水被害に見舞われた。死者は300人を越し、3000万人が被災をした。鄭州地下鉄5号線は冠水し、500人が閉じ込められ、14人が死亡した。この災害では、テック企業が率先して救援、支援を行い、被災者の支援を行なったと無線泉州が報じた。

 

中国移動が提供したドローンの携帯電話基地局

広域で冠水をした場合、ほとんどのインフラが停止をする。食料と水の確保は急務だが、現在ではネット回線の確保も重要になっている。家族知人の安否確認、情報取得、さらには支援物資を搬入する際の連絡などができなくなる。

7月21日、中国移動は、ネット回線が完全に停止してしまった米河鎮に向けて、災害ドローン「翼龍-2H」を出動させた。このドローンは、被災地の上空を旋回することで、50平方キロの地域のネット回線を提供し、1.5万平方キロに通話回線を提供することができる。バッテリーの限界から、5時間しか回線を提供することはできなかったが、多くの市民がこの時間の間にスマートフォンを使って必要な連絡を取ることができた。また、翼龍-2Hには上空から災害状況の探査を行う機能も備えている。

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▲冠水した鄭州市。水位は下がったが、ほとんどのインフラが途絶えているため、見た目以上に厳しい状況になっている。

 

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▲中国移動が出動させた災害用ドローン「翼龍-2H」。携帯電話回線が失われた地域の上空を旋回し、通信回線を5時間提供することができる。

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▲通信回線が途絶えて情報孤立をした米河鎮に送られた中国移動のショートメッセージ。5時間だけ通信回線が復活することが告げられ、多くの人が家族と連絡を取ることができた。

 

夜間作業を支援する照明用ドローン

また、卓翼智能は、照明用ドローン「天枢-A8」を出動させた。24時間飛行できるドローンで、地上からケーブルで電源をとる必要はあるものの、上空50mから300mに停止をして、2000平米から3000平米に照明を提供することができる。地上設置型の照明に比べて、設置までの時間が早く、1台で広い面積を照らすことができる。また、真上からの照明になるので影ができづらい。さらに、場所を移動することも瞬時に行える。人命がかかった夜間の救出作業や、夜間の救援物資搬入などに活用された。

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▲照明用ドローン「天枢-A8」。夜間の救出活動や物資搬入作業などに照明を提供する。設置型の照明に比べて数々の利点がある。

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▲「天枢-A8」は、電源を地上から取る必要があるが、広い範囲を影をつくらず照らすことができ、移動も地上からの指令で簡単にできる。

 

自力移動可能な浮橋で孤立地域を解消

中国安能は、動力舟橋を提供した。橋が流されて孤立をした地域に対して、自力移動可能な浮橋を連結して、仮設の橋をかけるというものだ。1つの浮き橋は長さ40m、幅8mで通路の幅は5m取ることができる。65トンまでの重量に耐えることができ、13トン以下の車両が通行ができる。

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▲動力舟橋。複数の自力航行可能な浮橋を連結して、孤立した地域に仮説の橋をかける。自動車の通行も可能な設計になっている。

 

災害に対して、それぞれができることをやるテック企業

この他、ドローンメーカーDJIも多数のドローンを提供し、被災地の状況把握に活用された。テンセント、アリババなどの著名テック企業も災害情報の提供、物資の輸送などを行なっている。自社の技術が直接災害救援に活用できない場合は、義捐金を供出するなど、大規模災害が起きた場合、テック企業が支援をするという流れができあがりつつある。

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▲ドローンのリードカンパニー「大疆」(DJI)は、災害が起きるとすぐに緊急チームを結成し、災害地の状況把握をするためのドローンを被災地に提供した。