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宿題は人工知能にやらせる今どきの小学生。中国政府は宿題をAIにやらせることを禁止

中国共産党中央弁公庁と国務院は、「義務教育段階の生徒の家庭学習と校外課程の負担のいっそうの軽減についての意見」を公開した。内容は、「拍照捜題」を禁止するものだ。これを受けて、多くの学習アプリが拍題捜答機能を停止させていると青少年教育新聞が報じた。

 

宿題は人工知能にお任せの今どきの小学生たち

拍照捜題とは、学習アプリの人気機能で、宿題をするときに便利な機能。プリントなどの問題を、アプリ経由でスマホで撮影すると、その内容をAIが解析し、解法と答えを表示してくれるというもの。同じ問題が見つからない場合は、類似の問題の解法と答えを表示してくれる。

本来は、自分で解けない問題を調べるためのものだが、学習アプリの競争が激しくなる中で、解答を直接表示するようになり、多くの学生が、学習アプリが表示する解法と答えを丸写しして提出することが増え、教師や父兄の間で問題になっていた。

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▲学習アプリ「作業帮」の拍照捜題機能。宿題のプリントなどを撮影すると、問題別に分割し、同じ問題を検索し、その解法と答えを表示してくれる。まったく同じ問題が見つからない場合は、類題を検索してくれる。

 

学習アプリの競争の焦点となった拍照捜題機能

学習アプリは2013年の「学覇君」が最初のものだと言われている。大量の問題を検索できるようになっており、宿題をするときは、目の前の問題と類似した問題を検索し、その解法と答えを参考に自分の宿題をこなすというものだった。

しかし、2016年に学習アプリへの参入が増え、競争が激しくなると、学覇君は、目の前の問題をスマホで撮影し、アップロードをすると、オンラインで講師が1対1でその問題の解説をしてくれるという有料サービスを始めた。このサービスが人気となり、学覇君は学習アプリとして成功をした。

しかし、2020年3月に、学習アプリ「作業帮」が画期的な機能「海辺捜題」を公開した。スマホで撮影し、AIが解析をし、解法と答えを表示する拍照捜題機能だ。これに「夸克学習チャンネル」が続き、人気だった学覇君は2021年1月には経営不振からの破産に追い込まれてしまった。

さらに、バイトダンスは「閃電捜題」、百度は学習専用タブレット「小度スマート学習タブレット」に拍照捜題機能を搭載していた。

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▲多くの宿題では、市販のドリルやプリントを利用するため、解答がズバリと表示されてしまうものが多い。子どもたちは、このようなツールを使って、短時間で宿題を終わらせている。

 

子どもたちからは宿題神器と呼ばれ絶賛

この拍照捜題の本来の想定された使い方は、子どもではなく親が使うというものだった。小学生ぐらいまでは、宿題でわからないところがあると親に聞くということが多い。しかし、親にもわからない問題がたくさんある。そこで、スマホで撮影して、表示された解法を元に、子どもに教えるというものだった。

しかし、子どもはデジタルリテラシーに関しては親を上回っている。親が使っている学習アプリを自分のスマホに入れて、勝手に使い始めてしまった。子どもの間では「宿題神器」と呼ばれている。

学習アプリの運営側もそのことは認識をしていたが、アプリのダウンロード数が増え、この拍照捜題をきっかけに有料のオンライン家庭教師などのサービスを使ってもらえる。ビジネスを成功させる鍵となり、対応している問題数を増やしていった。

 

これからは宿題は自分でやるしかなくなる

中央弁公庁と国務院の意見では、このようなアプリを使うことが、子どもたちの思考能力を育てることの妨げになり、教育規律に反した不良な学習方法であると指摘している。また、関連部門には、教育関係のアプリなどの審査を厳しくすることを求めている。これにより、子どもたちには大好評だった拍照捜題機能は、アプリから消えることになる。