鞍山鉱業が暗闇工場を稼働させた。人が作業をしない完全自動化工場だ。これまで家電製造などで暗闇工場が広がっていたが、鉱業系の工場で完全自動化がされる例は極めて珍しい。鞍山鉱業では、他の向上も自動化を進めていると新華社が報じた。
無人のダークファクトリー
遼寧省鞍山市の鞍山鉱業が暗闇工場を稼働させた。暗闇工場(ダーク・ファクトリー)と言っても、違法操業などという意味ではなく、すべてが自動化をされたため、人が直接作業をする必要がなくなった工場のことだ。人は、モニター室などから監視、操作をすればいいため、工場の灯はつける必要がなく、暗闇になっている。そのため、暗闇工場と呼ばれる。
鞍山鉱業では、鉄鉱石の選鉱工場の自動化をするため、2021年から累計62.9億元の費用を投じて、自動化を行ってきた。
家電業界で広がる暗闇工場
このような暗闇工場は家電製品や電子製品の世界では珍しくなくなっている。小米(シャオミ)の北京工場では、無人で年間100万台のスマートフォンを生産している。空調施設の格力(グリー)でも、世界70ヵ所にある工場の自動化を進めている。また、広東省仏山市の格蘭仕(ギャランツ)では、電子レンジ、冷蔵庫などの製造を完全自動化している。
しかし、鞍山鉱業のように選鉱工場を自動化した例はこれまでになく、鉄鋼業界などから注目を浴びている。これまで工場の運営には30名以上のスタッフが必要だったが、それが7人になり、その7人はモニタールームにいて、監視と操作を行い、工場の中に入っていくことは機器の点検を除いてなくなっている。
職人技もAIが学習できる
これまで、鉄鉱石からクズ鉱石を見分けて取り除く作業は人手により行われていた。しかし、この作業は単純に見えて、深い経験が必要となる。若いスタッフは、ベテランスタッフについて学び、後進に指導ができる水準に達するまでには7年間かかると言われていた。
しかし、人間の精度は決してよくない。疲れて見落としが出てきてしまうからだ。この選鉱作業をAIに覚えさせることは簡単ではなかったが、現在では人間に近い精度が出るようになり、そしてAIは疲れることがない。そのため、長時間では人間以上の精度を出してくれる。
AIの登場で自動化できる作業が広がった
鞍山鉱業では、その他の作業=プレス工程、輸送工程、備蓄工程なども自動化を進め、将来的には選鉱から納品までのすべての工程を自動化する計画だ。最終的には27のモニタールーム、200以上のAIモデルが開発され、巡視用運搬用のロボットも必要に応じて投入をしていく。
従来は家電製品や電子機器といった、ベルトコンベアで製品が流れていくタイプの工場が暗闇工場化していった。作業をロボットで代替できることが暗闇工場を実現するための条件だった。しかし、鞍山鉱業では選鉱という高度な経験を必要とする作業まで、AIモデルを活用することで自動化できることを証明した。今後、暗闇工場+AIモデルが、さまざまな業界に広がっていく可能性が出てきている。