EUは、EU内の自動車メーカーを守るため、輸入される中国EVに関税を上乗せすることを決定した。中国政府としては反発をしているが、中国EVメーカーにとっては欧州での現地生産が加速をし、グローバル企業になる足がかりになると見られていると新京報が報じだ。
中国EVの欧州関税上乗せ分は最大36.3%
中国の自動車メーカーに対する政府助成に関するEUの調査が終了し、EUは中国から輸入される自動車は、中国政府の助成を受けて不当に安く販売されているとして、調査結果に基づいてメーカーごとに関税を上乗せすることにした。最高は上汽集団の36.3%というものになる。これは従来の10%という通常の関税に上乗せされるため、上汽集団は47.6%の関税を払わなければEUに輸出をすることができない。NEV(新エネルギー車)のトップブランドになったBYDの追加関税は17.4%というものだった。それでも合計で27.4%となるため、EUでの中国車の販売台数は大きく落ち込むことは確実だ。
進む現地生産化
しかし、2035年には電気自動車(BEV)などのゼロエミッション車(ZEV、CO2を排出しない自動車)以外の販売を認めない、PHEV(プラグインハイブリッド車)ですら認めないという厳しい規制をするEUは、中国NEVを締め出すことで、EVシフトの達成が難しくなるようにも見える。
すでに中国企業は動いている。昨年から、BYDなどは欧州に自社工場の建設を始め、欧州での生産を加速し、今年2024年に入ってからは、他の自動車メーカーも続々と海外工場建設の計画を進め、現地生産をする体制に入ろうとしている。
EUとしては、中国車の輸入が増えると自国メーカーが圧迫され、雇用が悪化することを懸念して関税の上乗せをしたが、EVシフトの目標を達成するために、中国メーカーに現地生産をさせ、同時に雇用を確保しようとしている。
中国メーカーの海外生産は、東南アジアに集中をしている。今後、東南アジアでもEVシフトが始まることを見越した対応であり、場合によっては東南アジア生産の自動車を欧米に輸出をすれば、追加関税の措置を免れるからだ。
中国EVは輸出から現地生産にシフト
現在のところ、中国NEVの最大の輸出国はブラジルで、2024年上半期には13万3185台が輸出をされた。その後にベルギーと英国が続き、タイ、フィリピンといった東南アジア各国も伸び始めている。
つまり、欧州での中国車販売が本格化するのはこれからであり、輸出が落ちるため販売数は一時的に落ちるものの、現地生産車が市場に出るようになれば、中国メーカーのシェアはあがっていくものと見られる。中国NEVメーカーにとっては、グローバル企業になるチャンスがめぐってきたとも言える。