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復旦大学の新卒就職率はわずか18%。7割の学生が大学院進学を選ぶ理由

中国を代表する大学「復旦大学」の2023年の新卒就職率がわずか18%であったことが大きな話題になっている。7割の学生が大学院進学か留学の道を選ぶ。その背景には最初の就職で人生が決まってしまう社会状況があると老李財鄭が報じた。

 

復旦大学の就職率は18.0%。7割が進学の道を選ぶ

中国を代表するトップ校のひとつ「復旦大学」の2023年の新卒生の就職率が18.0%となり、初めて20%を切ったことが話題になっている。中国の景気低迷により、新卒生たちの就職活動は難航している。

その状況の中で、国内大学院への進学率が53.1%となり、初めて50%を上回った。また、海外の大学院進学率もコロナ禍の間に大きく下がったが、17.5%と再び上昇に転じた。

つまり、復旦大学の卒業生は7割近い人が進学を選び、新卒入社をする学生は非常に少なくなっている。

復旦大学の新卒生の進路の推移。2023年は、就職18.0%、国内大学院進学53.1%、海外留学17.5%、専門学校など0%、未就職11.3%となった。

 

大学生の質の低下が起きている

大学生の就職が難しくなっているのには3つの理由がある。

ひとつは大学進学率があがり、大学が増えすぎたことだ。2024年の新卒生は1000万人を超えると言われている。そのため、大学の質の低下が起きている。清華大学北京大学復旦大学上海交通大学などのトップ校はその価値を維持しているものの、短期大学、専科大学などが数多く新設され、中には入学金を支払い、共通入試「高考」の足切り点数を上回れば確実に入学できるような大学もある。このような大学はSNSでは「野鶏大学」(ノラのニワトリ大学)とも呼ばれ、学生たちは熱心には勉強せず、就職も半ばあきらめているようなところがある。

進学率があがることはいいかもしれないが、その一方で、このような失業予備軍を生み出すことになっている。

▲大学などの高等教育の進学率は60%を超えた。学生が多すぎて、大学生の質の低下が問題になり始めている。

 

新卒入社で人生のすべてが決まってしまう

2つ目は、卒業後の最初の就職でその後の人生が決まってしまうような状況になってきていることだ。有名大学の大学院を卒業して、大手企業の研究職にでも就くことができれば高報酬が望める。余裕のある分を不動産や株などの投資に回せば、30代でひと財産をつくることも可能だ。そうなれば、SNSでよく言われる「財務の自由」(生活のために稼ぐ必要がなくなること)が得られ、その後の人生の選択肢が一気に増える。

しかし、生活費ぎりぎりの報酬しかもらえない企業に就職をしてしまうと、経済的な余裕はなく、大手企業に転職をするチャンスもほぼない。中年になっても生活のために仕事をしなければならなくなる。

そのようなことから、多くの学生が少しでも高い学歴をつけて、有利な就職をしようと、大学院に進学することを希望している。2024年の卒業生1000万人のうち、400万人程度は進学を希望しているとも言われる。

中国の大学や大学院の学費は安く、生活は親が面倒を見る。このような大学院浪人も数十万人単位で存在すると見られている。

▲中国でも就活イベントは頻繁に行われている。大量の大学生が会社説明会に押し寄せる。

 

無理に就職するより、就職浪人を選ぶ

3つ目は、多くの新卒生が納得のいかない職であれば就職浪人を選ぶということだ。フードデリバリーからライドシェア運転手などのブルーカラーの仕事であれば仕事は簡単に見つかる。しかし、大学を出て、そのような仕事に就いたら、その時点で残りの人生が決まってしまう。そのため、大学院に進学ができないレベルの人であっても、就職をせずに、専門学校に通ったり、オンライン講座を受講して、自分のスキルアップをしようとする。

▲24歳以下の若年失業率はようやく減少傾向が見えてきたが、25歳から29歳の失業率が高止まりをしてしまっている。

 

若年失業率は高止まりを続ける

つまり、新卒生の就職率が低いのは、大学院進学と進学浪人、就職浪人が大量にいるからだ。しかし、進学浪人、就職浪人が数年で目標を達成することができればいいが、失業予備軍になる可能性はきわめて高い。大学の基準を厳格化して、大学生の数を抑え、学生の質をあげることが必要だが、多くの市民が大学進学を望むためそれもなかなかできない。大学院を拡大して、大学院がこのような浪人学生を受け入れれば失業予備軍を減らすことができるが、それは問題を先送りしているだけであり、今度は大学院の質の低下を招きかねない。大学生の就職問題は解決し難い問題になっている。