深圳市では、2000年から全市の小中高学校で、統一制服を導入している。基準に従えば、どの製造業者が製造し、どの販売店でも販売ができる。指定業者との癒着がなくなり、競争が起こり、親の負担は大きく減った。各地から、深圳方式を導入してほしいという声があがっていると半月談が報じた。
深圳市の統一学校制服が話題に
深圳市の小中高の制服の仕組みが全国的に大きな話題となり、各地から自分の市、省でも取り入れるべきだという声があがっている。
多くの学校では、学校単位で制服を採用するが、深圳市では深圳市の教育局が採用を決定し、市内のすべての学校で同じ制服を着る。そのため、同じ制服が大量に必要となり、教育局が定めた基準に基づいて複数の企業が製造をするため、品質、価格ともに競争が起き、質の高い制服が低価格で手に入れられるようになっている。
学費は無償化されても、制服の負担が大きい
中国は高校までの学費は無償化されているのが原則だが、実際にはその他にもさまざまな負担がある。その中でも大きいのが制服の負担だ。制服は夏服と冬服があり、運動用ジャージは夏、春秋、冬と3種類ある。合計5着の制服を購入しなければならない。
しかし、各地で、この制服に対する不満の声が、親から寄せられている。それは、製造業者指定、販売店指定にされていることが多く、どう見ても品質から考えると高価に販売をされているのだ。独占による弊害が起きている。さらには、学校の決定権者へのリベートなどのスキャンダルも起きている。
一方、2000年以降、豊かになった中国では、デザイナーブランドの制服を採用する学校も増えてきた。確かに、韓国の学園ドラマや日本の学園アニメを見ている子どもたちはその制服に憧れ、進学をしたがるが、親たちの負担はさらに大きくなった。
制服を市で統一することにより、親の負担が減った
深圳市は、中国のシリコンバレーとも呼ばれ、テック企業に勤めている親が多い。そのため、何ごとも合理的に考える傾向があり、親たちからの要望があり、深圳市教育局では2000年から市内の小中高の制服の統一を進めてきた。教育局がデザインや品質基準、価格幅を決定し、その基準に従っていることが認められれば、どの業者でも自由に参入することができる。
これにより、制服の価格は非常に安くなり、さらに取り扱いをする販売店も広がり、現在では淘宝網(タオバオ)などのECでも購入することができるようになっている。タオバオのセールの時に、クーポンなどを利用すれば、指定価格以下で購入することもできるようになっている。
学校のアイデンティーよりも深圳市のアイデンティーを育む
さらに、すべての制服には「制服監督コード」がついており、それをスマートフォンでスキャンすることにより、製造企業や品質検査の報告書などを閲覧することが可能になっている。
制服を全市で統一することにより、制服にまつわる不正が一掃され、品質はあがり、価格は下がり、どこでも買い求めることができるようになった。
唯一の批判は「学校ごとの個性が失われる」というものだが、今ではその批判をする人は少数派だ。なぜなら、深圳市の生徒、学生全員が同じ制服を着ることにより、「深圳市民」というアイデンティーが醸成しやすいからだ。
この深圳市の合理的な仕組みが紹介をされると、全国で「うちの地域でも深圳方式を取り入れるべきだ」という声があがっている。