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無人カート配送が普及前夜。なぜ、テック企業は無人カートを自社開発するのか?

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明日、vol. 076が発行になります。

 

中国版TikTok「抖音」(ドウイン)を見ていると、よく見かけるのが「守衛vs騎手」の仁義なき戦いの映像です。

大学、オフィスビル、マンションなどには守衛がいて、訪問予約をしていない外来者を入れないようにしています。そのため、フードデリバリーの騎手(正規には配送員ですが、一般には騎手=ライダーと呼ばれます)も入れないようにしているところが多いのです。

ひとつはセキュリティ上の問題です。騎手であれば自由に入れてしまうのであれば、悪意のある人が騎手の格好をして易々と侵入できてしまうようになります。しかし、本質的な理由は、その大学やオフィスビル、マンションなどの規定が古く、フードデリバリーに対応してなく、「関係者以外は敷地内に入れない」という規定のままで、守衛はそれを忠実に守っていることにあります。

しかし、騎手の方も困ります。守衛に止められているので、玄関まで取りにきてほしいと利用客に連絡すると、素直にきてくれる人もいますが、中には、なんでドアまで届けないんだとクレームを入れる人もいます。それが、美団(メイトワン)やウーラマなどのプラットフォームに対するクレームであればいいのですが、多くの場合、騎手個人に低評価をつけるという形になります。それで、騎手はなんとか中に入れてもらおうとしますが、それでは守衛が規定違反を指摘される。それで揉めごとになり、場合によっては、暴力沙汰に発展することもあります。

プラットフォームでは、騎手の身分証を作り、中に入れるようにする協議を進めていますが、各施設との個別交渉になることもあり、中々話が進まないようです。

 

一方で、新しくできたマンション、オフィスビルでは無人カートをうまく利用しているところもあります。デリバリー騎手や宅配スタッフは、玄関付近にある無人カートに商品を入れることで配送完了。無人カートやロボットが個別の部屋に運びます。このような無人カートやロボットはエレベーターにも対応していて、自分でエレベーターに乗って目的階にいくことができます。

エレベーターメーカーと通信プロトコルを策定し、赤外線などのワイヤレス通信でエレベーターを操作できるようになっている例もありますが、そのためには最新のエレベーターに交換する必要があるため、エレベーターに音声入力の機能を後付けし、無人カート側は音声でエレベーターを操作する仕組みも採用されています。

特に、新しいマンションでは、この無人カートがほぼ標準装備になろうとしていて、スマートフォンや室内の操作パネルに、商品が到着したことが表示され、簡単な操作で、無人カートをドアの前や自室のある棟の前まで呼ぶことが可能になっています。つまり、走る宅配ボックスとして使われています。

また、宅配企業によっては、荷物量の多いマンション、オフィスビルに対しては、専用の無人カートを用意し、配送ステーションから公道を走行して、目的の施設に荷物を運ぶということも始まっています。

 

無人カートが公道を走行するためには、交通信号を理解し、交通ルールを理解する自律走行が必要となりますが、技術的にはすでにクリアできています。

無人カートの利用も、すでに実証実験の段階は終わり、実践投入が始まっています。美団は北京市で、30台の無人カートを投入し、契約したテックパーク(IT専門の工業団地)やマンションにフードデリバリーを1日1往復から2往復させています。また、上海、深センでも試験運用を行なっています。3年以内に1万台の無人カートを投入する計画です。

京東(ジンドン)は、全国7都市13カ所の大学に宅配便を100台の無人カートで配送しています。2021年末には1000台規模、2022年には5000台規模、2025年には5万台規模にする計画です。

アリババも子会社の菜鳥物流(ツァイニャオ)を通じて無人カート配送を杭州、上海、成都、北京の大学内、杭州の契約マンション内で行っています。具体的な拡張計画は発表していませんが、他の都市の大学やマンションなどにも広げていくとしています。

 

つまり、無人カートは導入前夜ではなく、すでに導入が始まっていて、普及が始まる前夜と言った方が正確です。しかし、なぜ、各EC、デリバリー企業は無人カートの開発を行うのでしょうか。よく言われるのは「人件費が節約できる」で、それも理由のひとつですが、最も大きな目的というわけではありません。

また、以前、よく言われたドローン配送ではなく、なぜ無人カート配送にいくのでしょうか。今回は、無人カート配送の現状をご紹介し、そして、無人カート配送のメリット、さらになぜドローン配送ではないのかということをご紹介します。

 

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