女性から人気の中国茶カフェ「奈雪的茶」が赤字幅を拡大して苦しんでいる。一方、対極的なビジネスモデルの低価格ドリンクスタンド「蜜雪氷城」は創業以来の最高収入、最高益を記録した。新型コロナの感染再拡大が2つのチェーンの名案を分けたと毎日経済新聞が報じた。
女性に人気の奈雪的茶の業績が悪化
中国茶カフェ「奈雪的茶」(ナイシュエ)の業績が悪化をしている。奈雪的茶は、中国茶ドリンクカフェだが、店内環境を工夫したおしゃれカフェ。スターバックスの中国茶版を目指している。店舗ロゴも「奈雪の茶」と日本のひらがなをあしらい、英文表示も「nayuki tea」と日本語読みにしていた。日本の和風イメージもうまく取り込んでした。しかし、ロゴを「奈雪的茶」、読みも「naixue」と中国語読みに変えている。国潮と呼ばれる中国文化回帰が進む中で、日本のイメージを借用することがむしろマイナスになるという判断だったとも言われる。
増収も大幅減益の奈雪的茶
いずれにしても、奈雪的茶は何らかしらの手を打たないとまずい状況に追い込まれている。営業収入はここ3年、順調に増えて続けている。2021年は42.966億元と過去最高になった。
しかし、損益を見てみると、黒字化が果たせないどころか、2021年には大きな赤字を出している。
一方、奈雪的茶とよく比較をされるのが蜜雪氷城(ミーシュエビンチャン)だ。最も安いレモン水は5元、多くのドリンクが10元以下と奈雪的茶の半分から1/3程度。スタンド形式で、低価格を売りにしている。その蜜雪氷城の2021年の営業収入は103.5億元と奈雪的茶の2倍以上。さらに利益は過去最高の19.1億元を記録した。
サードプレイスを売りにする奈雪的茶が苦しみ、スタンド形式低価格の蜜雪氷城が絶好調という好対照になっている。
低価格の蜜雪氷城と対照的なビジネスモデル
両チェーンの大きな違いが、蜜雪氷城はフランチャイズが主体であるということだ。2022年3月時点で2万2276店を展開しているが、直営店は47店しかない。フランチャイズであるために、加盟費用、販売手数料、原材料の販売が主な収入になっており、安定をして利益が出るビジネスモデルになっている。しかし、1杯あたりの利益率(販売価格ー原価)は30%弱と低い。価格を安く設定しているためだ。
一方で、奈雪的茶の茶は高級路線で価格も高いため、1杯あたりの利益率は70%にもなる。顧客はドリンクではなく、その空間やサービスにお金を払っていることになる。
原材料を自力供給する蜜雪氷城
低価格設定の蜜雪氷城が利益を出せる理由は、原材料や包装材など店舗に販売する商材の多くを製造までしていることだ。ストローからカップ、さらには果物については農園を所有し自分たちでつくっている。販売業者から調達をするのではなく、自作した商材を提供するために、販売価格は低くても利益が生み出される。
一方で奈雪的茶は、デザインされた包装や厳選された食材を調達をするために、そのコストが大きくなる。さらに、洗練された店舗インテリアなどにも経費がかかり、新店舗を出店するのに大きなコストがかかるようになっている。
コロナ禍は低価格に有利、高価格に不利
また、高価格戦略と低価格戦略も大きな差が生まれる原因になった。コロナ禍により経済が停滞する中で、人々の財布の紐は日増しに堅くなっている。このような状況で、ドリンクというのは生活必需品ではないために真っ先に削られる。そのため、低価格の蜜雪氷城は客が増えるが、高級路線の奈雪的茶は客が減る。
蜜雪氷城は出店を加速できる。1つの繁華街に複数店舗があっても利益が出る。しかし、奈雪的茶は近隣に奈雪的茶の店舗があるとカニバリズムが起きて、店舗数を増やすことができない。
それでも、奈雪的茶は2022年にも350店舗の新規出店計画を進めたため、店舗の平均売上は1日2.2万元から1.3万元にまで低下をしてしまった。
そこで、奈雪的茶も最低価格9元にまで下げる価格改定を行ったが、当然ながら利益率を下げることになった。
2022年の再拡大が飲食業にとっては大きな痛手
飲食関係者にとっては、新型コロナの感染拡大をどう乗り切るかが大きなテーマになっている。しかも、中国の場合、2021年には感染状況が安定をし、そのまま終息に向かうのではないかという見方もあった。そのため、一時のことであると考え、戦略を変更する必要を感じなかった飲食業も多かった。それが2022年に感染が再拡大し、長期化したことは大きな痛手となった。
蜜雪氷城は偶然コロナ禍にも強い企業戦略であり、奈雪的茶はコロナ禍の打撃を受けやすい企業戦略だったということもできる。しかし、奈雪的茶はもはやその戦略を再考しなければならないところに追い込まれている。