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爆速成長するドリンクスタンド「蜜雪氷城」。その考え抜かれたBtoBtoC型フランチャイズの仕組み

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今回は、蜜雪氷城のフランチャイズの仕組みについてご紹介します。

 

蜜雪氷城(ミーシュエビンチャン、https://www.mxbc.com/)というドリンクスタンドチェーンは、日本にいる方はおそらくご存知なく、中国在住の方もおそらく「聞いたことはあるけど見たことがない」ということが多いのではないかと思います。なぜなら、地方都市を中心に出店しているからです。現在、2万5000店舗突破という大規模チェーンになりましたが、上海市には2店舗、北京市にはまだ出店していないようです(蜜雪氷城の公式サイトの店舗検索の結果なので、情報が更新されていない可能性はあります)。ほとんど大都市にしか行かない日本人にとっては「どこにあるのだろう?」と不思議になる程です。

しかし、国内では2万4000店舗を突破し、海外でも1000店舗を突破しました。そして、日本の東京にも表参道、池袋の2店舗が開店となりました。池袋は中国人が多く住んでいる街なのでわかりますが、表参道(原宿が最寄駅です)は地価も非常に高いのに利益が出るのだろうかと不思議になります。なぜ、蜜雪氷城が表参道に出店したのか、そのロジックも後ほどご紹介します。

 

ソフトクリームは3元、レモン水は4元(約80円)という安さで、日本の店舗でも最安値の「高山四季春」(ウーロン茶)が100円、ソフトクリームが160円という安さです。レモン水(フレッシュレモネード)は150円になっています。

元々、蜜雪氷城はソフトクリームは原価割れで提供しています。ソフトクリームで集客をし、価格の高いドリンクの注文やトッピングなどで利益を出す仕組みです。日本では、おそらく高山四季春を原価割れで提供して集客をしているのではないかと思われます。

この安さからして、味の方は特筆すべきものはありません。と言っても、まずいとか、添加物だらけの人工的な味がするということもありません。ごくごく平凡で受け入れることができる味です。

特徴はないとはいうものの、コンビニなどにとっては脅威になっていると思います。なぜなら、コンビニで販売されているペットボトルのジュースやお茶などがほぼ同じ価格か高いぐらいだからです。わざわざ蜜雪氷城の店舗を探して歩いて行ってまで飲むことはなくても、喉が渇いた時に見かけたとしたら気軽に買って飲んでしまいます。日本でも、自動販売機のお茶やジュースを買うぐらいであれば、蜜雪氷城で100円の高山四季春を買ってしまいそうです。

 

このような安さで勝負をしているビジネスは中国では珍しくありません。ソーシャルECの「ピンドードー」、激安アパレルの「SHEIN」(シーイン)、生活雑貨の「名創優品」(メイソウ)などたくさんあります。

多くの日本人は、このような中国の激安ブランドを見て、「安かろう、悪かろう」だと思ってしまい、視野にすら入れないという過ちを犯します。もちろん、これらの激安ブランドの商品の質はお世辞にも高級ではありません。しかし、標準品のレベルは確保しているのです。日本でもコンビニやスーパーで販売されている商品の多くは標準品です。この標準品が1/3や1/4の価格で販売されているということはやはり脅威なのです。

「vol.155:変わりつつある日本製品に対するイメージ。浸透する日系風格とは何か」で、日本の無印良品の中国事業が苦しくなっていることをお伝えしました。どう見ても、メイソウにお客を取られていることが原因です。ひょっとして、無印良品はメイソウを「安かろう、悪かろう」と思い込んで、ライバルとみなすことなく、対策を怠ったのではないかと個人的に疑っています。

 

このような激安ブランドは、安いだけではありません。必ず別の強みを持っています。

例えば、ピンドードーは、大手小売からは相手にもされなかった地方の製造業や生産農家を丁寧に育て、驚きの低コストで生産ができる製造・流通・販売の仕組みを構築しました。

SHEINも広州市番禺区の零細服飾製造業者をまとめ、緻密な発注システムを構築し、無駄な製造をしないことで在庫や廃棄のコストを下げ、なおかつ最新の流行に追従できる仕組みを構築しました。

メイソウは世界の一流品をつくっている中国製造企業と直接交渉し、一流品のイメージを持った廉価品を製造してもらい販売をしています。例えば、アップルのワイヤレスイヤホンAirPodsは中国の立訊精密(ラックスシェア)が製造をし、2万7800円で販売をしていますが、メイソウでは同じ立訊精密が製造した白いワイヤレスイヤホン(機能や音質はそれなりです)が99.9元(約2000円)で販売されています。機能や音質は比べものにはならず、見た目も白いというだけで似てもいませんが、1/10以下の価格で購入ができます。ただの安売りではなく、一流品と同じメーカーが製造をしているというのがポイントになっています。

つまり、いずれもただの安売りに頼ったビジネスではなく、価格以外のストロングポイントを持っているのです。だからこそ大きくなれたわけです。

 

では、蜜雪氷城の強みはどこにあるのでしょうか。それは拡大することがビルトインされたフランチャイズの仕組みにあります。蜜雪氷城は直営店は37店舗でしかなく、残りの2万4000店舗はすべて加盟店です。フランチャイズです。

フランチャイズは、日本でもあたりまえのように見ることができるチェーン方式で、コンビニ、飲食、学習塾、マッサージ、不動産など、有名チェーンの多くはフランチャイズ方式です。

土地などを持っているオーナーが手を挙げて、最初に加盟費用と保証金を支払います。そして、店舗の内装や設備を入れて、営業をし、原材料はフランチャイズ本部から仕入れ、売上の一定割合を本部に対してロイヤリティーとして支払います。オーナーは、ブランドを借りてノウハウを教えてもらって営業し、その代価を加盟費用とロイヤリティーで支払います。フランチャイズ本部は、ノウハウを伝授することで毎月ロイヤリティーが入ってくるという関係になっています。

 

しかし、近年は加盟店オーナーの不満が聞こえてくることが多くなりました。「本部ばかりが儲けて、加盟店はまったく儲からない」という不満です。ビジネスが生み出す利益の配分をめぐって、加盟店と本部で利害衝突が起きてしまっているのです。

しかし、蜜雪氷城ではそのような問題がまったくと言っていいほど起こりません。なぜなら、拡大することがビルトインされたシステムであり、加盟費は0元、ロイヤリティーは出店する都市の規模にもよりますが年7000元(約14万円)です。月1万円ちょっとで営業ができるわけで、加盟店ビジネスというよりも副業レベルの気軽さです。これで今のところは蜜雪氷城は人が集まって儲かるのですから、誰だって加盟店になりたいと考え、それで急速な拡大ができています。

 

この加盟費0元、低い定額ロイヤリティーというやり方は、中国のフランチャイズを変えようとしています。スターバックスと中国No.1カフェを競い合っている瑞幸珈琲(ルイシン、Luckin’ Coffee)も加盟費0元を採用して、店舗拡大を加速させています。さらには最初から加盟費0元を売りにしている中国式焼き肉チェーン「北木南」(ベイムーナン)もコロナ禍の中で店舗を急速拡大させています。

中国では加盟費0元というハードルを下げたフランチャイズチェーンの勢いがあり、大きなトレンドになろうとしています。これにより、直営方式を基本にしているスターバックスや喜茶(シーチャー、HEY TEA)が精彩を欠いているように見えます。

もちろん、今後も加盟費0元のチェーンが優勢を示すかどうかはわかりません。蜜雪氷城の創業者である張紅超(ジャン・ホンチャオ)は、以前から「国内店舗数の適性規模は4.5万店舗」と語っています。つまり、現在は国内2.4万店舗はもはや半分を超えてしまったということです。

蜜雪氷城のフランチャイズの仕組みは、拡大することが前提になっているため、マックスの4.5万軒に近づくほど、歪みが起きてくることになります。

そもそも加盟費も取らない、ロイヤリティも少ないというフランチャイズ本部はどうやって儲けているのでしょうか。そして、蜜雪氷城の仕組みとはどういうものなのでしょうか。

蜜雪氷城は、以前はその仕組みの多くが謎めいていましたが、深セン証券取引所に上場申請を行ったことで目論見書が公開されました。これにより、蜜雪氷城の秘密の多くが明らかになりました。

今回は、蜜雪氷城の成長を前提にしたフランチャイズの仕組みについてご紹介をし、蜜雪氷城はどうやって儲けているのかをご紹介します。また、その他のスターバックス、ラッキンコーヒー、北木南などがどのようなフランチャイズ戦略をとっているかについても触れます。

 

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