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激安ドリンクスタンド「蜜雪氷城」が国内2.4万店で、海外にも展開開始。その爆速成長ぶりの秘密

中国国内で2.4万店の展開をした蜜雪氷城が海外展開を加速させている。日本の表参道と池袋の店舗もオープンをした。なぜ、蜜雪氷城は国内でも国外でも爆速拡大が可能なのか。そのフランチャイズの仕組みに鍵があると華新要聞が報じた。

 

海外展開を始めた蜜雪氷城

中国の激安ドリンクスタンド「蜜雪氷城」(ミーシュエ、MIXUE)が国内2.4万店舗となるだけでなく、海外にも進出を始めている。

2018年にベトナムに進出。タピオカミルクティーは2.5万ドン(約150円)で販売され、現在はすでに200店舗を突破している。インドネシアでもすでに300店舗を突破している。

蜜雪は、中国内での価格もレモン水が4元(約80円)と非常に安い。そのため、学生に人気のドリンクチェーンとなっている。その低価格ぶりで、東南アジアに進出をすると、現地相場との相性もよく若い層を中心に人気となっている。

ベトナムの蜜雪氷城はすっかり地元の人にも定着をしている。

シンガポールの蜜雪氷城。華人の利用が多いが、その賑やかさに釣られて華人以外の利用も進んでいる。

 

シンガポール、韓国、日本にも

蜜雪が進出をしているのは、購買力がまだ弱い地域だけではない。昨2022年2月にはシンガポールに、11月には韓国に出店をした。

さらに、日本でも東京の表参道と池袋に出店した。特に表参道は、中国でも「日本のシャンゼリゼ通り」としてよく知られていて、家賃は決して安くない。蜜雪の海外店舗は昨2022年に1000店舗を突破した。

蜜雪の創業者、張紅超(ジャン・ホンチャオ)は、常々、国内での適正店舗数は4.5万店舗と語っていた。現在は2.4万軒であるので、目標の半分を超えたばかりだ。しかし、2021年に「2ドル」(約280円)という国際価格基準を口にし、2ドルの価格で世界に進出をするとして海外進出を加速させている。これはどういう戦略なのだろうか。

▲韓国でも蜜雪氷城は人気になっている。

▲東京の表参道(原宿)の店舗もすでにオープンをした。

 

莫大な利益によりチェーンの拡大が可能

海外進出の原動力になっているのが、莫大な利益だ。蜜雪の目論見書によると、2021年の営業利益は19.12億元(約377億円)にものぼっており、事業を拡大すべき財務状況になっている。

しかも、蜜雪のビジネスモデルはフランチャイズチェーンだが、店舗を拡大すればするほど利益が出る仕組みになっているため、店舗拡大に不安はない。というより、拡大をすべきなのだ。

▲蜜雪氷城の目論見書による営業収入と利益。2022Q1は4倍しても前年並みにしかならないように見えるが、蜜雪氷城の書き入れ時はQ2、Q3の夏。前年を上回ることはほぼ確実だと思われる。

 

年27万円で加盟店を出せる蜜雪

蜜雪の加盟店費用は非常に安い。開店する場所の都市規模により異なるが、県レベルの町であれば、加盟費用は年7000元でしかない。この他、管理費4800元、スタッフトレーニング費用が2000元かかるが、これでも年に1.38万元(約27万円)でしかない。土地を持っていて、何か商売をしてみたいオーナーにとって、店舗改装などの初期投資は必要になるものの、年に1.38万元でブランド力のある蜜雪の店舗を運営できるのは大きな魅力になる。

では、蜜雪はどうやって利益を出しているのか。店舗に卸す食材や包装材などで設けている。目論見書から収入先を計算すると、加盟費による収入は全体のわずか2.6%でしかなく、それ以外は、食材、包装、設備、物流など、加盟店舗に提供するサービスから収入を得ている。つまり、蜜雪にとって、加盟店は商品を販売する顧客であるのだ。

であれば、顧客の数は多くなればなるほど収入は多くなる。逆に言えば、蜜雪は常に拡大をしていかないと成長をしていけない。

▲蜜雪氷城の目論見書による収入の内訳。90%以上が加盟店に卸す食材などによるもので、加盟費による収入はわずか2.6%でしかない。

 

国内の市場環境が悪化、海外市場に活路を求める

ところが問題なのは、国内市場の環境が悪化をし始めていることだ。「2022新茶飲研究報告」(中国チェーン経営協会)によると、これまで20%以上成長してきた新茶飲料市場は、2022年の予測で成長率が3.7%にまで下落をした。急失速の理由は、新型コロナの感染再拡大が起きた影響と、それと同時にタピオカミルクティーのブームが終わったことが重なったことだ。

報告書では、2023年は急失速の反動で39.4%の成長をすると予測をされているが、タピオカミルクティーに次ぐキラー商品は今のところ登場してきていない。多くの中国茶カフェが、盛況になっているコーヒー飲料を提供するようになっているが、こちらも本業のカフェとの競争になることは明らかだ。

これまで成長を続けてきた中国茶カフェ市場だが、さすがに先行きの不透明感が出てきている。そのため、蜜雪は国内市場の開拓は続けながら、リスクヘッジをするために海外展開を強化しているのではないかと見られている。

中国茶カフェ市場の実績と予測。2022年は成長率が大きく落ち込むが、その後、回復すると予測されている。しかし、タピオカミルクティーに次ぐキラー商品は登場してなく、楽観的な予測だと見る人もいる。「2022新茶飲研究報告」(中国チェーン経営協会)より作成。

▲蜜雪氷城の製造拠点。必要な食材はすべて大量生産をして配送をする。

▲製造拠点では、このような濃縮還元液、ペースト缶詰、粉末などを製造し、店舗ではマニュアル通りの分量で混合するだけになっている。

 

海外であっても、中国人の中国人による中国人のための店舗

蜜雪の海外展開にはもうひとつリスクヘッジ要素がある。それは海外加盟店のオーナーはその多くが華僑、華人であり、従業員も現地の中国人や留学生を雇用していることだ。そのため、中国人が行った場合、中国語で注文をすることが可能になる。そして、なおかつ、蜜雪が海外進出に選んでいる国、場所は、在住中国人の多い場所だ。

日本の場合は、原宿と池袋に出店されるが、池袋はそもそも中国人コミュニティーがある町であり、原宿は東京在住の中国人が買い物に行く町だ。近くには同じく中国系のSHEIN(シーイン)、POPMARTなどの店舗がある。

つまり、蜜雪が日本に上陸して「日本人に受け入れられるのか?」という問いは意味がないのかもしれない。今後、中国人インバウンド旅行客が増えると、原宿、表参道に観光に行った中国人が利用することも期待できる。中国人が経営し、中国人が働き、中国人がお客さんになる。ピンホールのように海外に中国をつくっていっている。

▲タイ、インドネシアの蜜雪氷城の店舗の中国人旅行者向けのアピール。海外にありながらも、海外旅行する中国人観光客がきてくれることを期待している。