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マクドナルド、KFC、スターバックスがこぞってマイクロドラマを制作する理由

マクドナルドやKFC、スターバックスといった飲食チェーンが、続々とマイクロドラマの制作に乗り出している。自社チェーンを舞台にしたドラマで、宣伝臭を出すことなく、ブランドや製品を伝えることができるからだと紅星新聞が報じた。

 

人気になる「微短劇」(マイクロドラマ)

中国で人気が高まる「微短劇」(マイクロドラマ)。1話2分程度で、50話から100話あり、スマートフォンで気軽に見られるということから人気になっている。多くの場合、最初の10話は無料で、続きを見たい場合は購入するという形式になっている。

分量としては映画1本分程度だが、映画を見るよりも安く、1話が短く、1話ごとに続きを見させる工夫がされているため、ついつい見てしまうことから、大きな収益が得られ、大量のマイクロドラマが制作されるようになっている。

一方で、低俗であることも指摘をされている。視聴者を惹きつけなければならないため、お金、権力、愛憎といったわかりやすい要素を扱うドラマが多く、暇つぶしドラマの域を出ないという指摘もある。

 

スターバックスがドラマ制作に乗り出した

その状況の中で、飲食チェーンが続々とマイクロドラマの制作に乗り出している。話題になったのは、9月19日から始まったスターバックス制作の「古代でスターバックスを開店する」だ。全6話と短めだ。内容は、スターバックスバリスタが中世の中国にタイムスリップしてしまい、そこで出会った姫君と一緒にスターバックスを開店するという物語だ。

スターバックスでは、中国各地の特産品を使った「火晶柿フラペチーノ」「板栗紅豆ラテ」を発売する予定で、ドラマの中でも同じ名産品を使った飲料を工夫しながら販売する様子が描かれた。もちろん、実際のスターバックスでも2つの飲料が発売をされた。

ドラマの内容はスターバックスの宣伝臭は抑えられており、タイムスリップしたバリスタと姫君の恋愛が中心になっている。ドラマとして質の高いものを提供しているが、舞台がスターバックスになっているという構造だ。

スターバックスの「古代でスターバックスを開店する」。イケメンと美女の恋愛ストーリーも絡み、普通のドラマとして楽しまれた。ドラマの中に、スターバックスの新作ドリンクが登場する。

 

KFCも転生ものドラマを制作

ケンタッキーフライドチキン(KFC)もマイクロドラマを制作している。「転生した食いしん坊皇后は手に負えない」で13話ある。中世の鶏肉好きの皇后が、現代にタイムスリップしてきて、女優になりさまざまな騒動を起こすというものだ。これも、KFCの商品や週末に行うキャンペーンがドラマの中に登場するが、宣伝臭は抑えられ、皇后の活躍ぶりが中心に描かれている。

▲KFCの「転生した食いしん坊皇后は手に負えない」。中世の鶏肉好きの皇后が、現代に転生し、女優として活躍する内容。人気女優が主演をしている。

 

マクドナルドも転生もの

マクドナルドもマイクロドラマを制作している。「転生した僕はマクドナルドで魔法の修行をする」で8話ある。コメディアンがマクドナルドのスタッフに転生し、マクドナルドで味の魔法を修行するという内容だ。一人の女性を巡って、お金持ちの社長とライバルになるという三角関係が中心に描かれている。舞台はマクドナルドの店内で、実際のマクドナルの店舗を使って撮影された。

マクドナルドの「転生した僕はマクドナルドで魔法の修行をする」。女性をめぐって、お金持ちの社長との三角関係も描かれる。撮影は実際のマクドナルド店舗で行われた。

 

飲食チェーンがドラマ制作するブームになっている

この他、ドリンクスタンド「蜜雪氷城」は「雪王のタイムスリップ日記」を制作するなど、飲食チェーンがマイクロドラマをつくるのがブームになってきている。

いずれのドラマも累計で数億回レベルの再生がされており、広告メディアとしては一定の成果をあげている。ただし、それが売上にどれだけ貢献するのかは今後の分析を待つ必要がある。

著名なチェーンであれば、自社チェーンを舞台にするだけで大きな広告効果があり、商品を過剰露出させるなどの強引な手法を取ることなく、商品の魅力が伝えられる点は各チェーンともに高く評価をしているようだ。また、蜜雪氷城の雪王のようにコーポレートキャラクターを持っているチェーンでは、そのキャラクターが活躍するドラマをつくることで、キャラクターを人気者に育てていくことも可能だ。

広告映像はさまざまなところに露出をするが、再生率は思ったほど高くない。制作側は1分の映像なら見てもらえると考えがちだが、15秒のショートムービーに慣れている消費者にとって1分はとても長い時間に感じる。かといって、15秒で商品やブランドのメッセージを伝えるのには限界がある。その中で、ストーリーが楽しめるマイクロドラマなら見てもらえ、そのストーリーの中でメッセージを伝えることができる。

▲蜜雪氷城の「雪王のタイムスリップ日記」。マスコットである雪王が80年代にタイムスリップする話。

 

露骨な宣伝ではないので、見てもらえる可能性が高い

また、飲食は「他人が食べているのを見ると、自分も食べたくなる」という習性があるため、動画で商品を紹介できるのは非常に有効だと考えられている。マイクロドラマからライブコマース、クーポン券、店舗へ繋げる仕組みの構築も今後の課題になる。

ただし、今後、多くの企業がマイクロドラマの制作に乗り出し、広告やマーケティングのひとつとして組み込まれていくと、その中でどうやって注目を集めるかも大きな課題になっていく。

飲食チェーンによるマイクロドラマの活用は始まったばかりだ。今後、話題になるドラマや新しいマーケティング手法が登場してくることが期待されている。