マイクロソフトがXbox用ゲームの供給源として中国のゲームスタジオへの投資を増やしている。マイクロソフトはかつてmiHoYoの原神に投資をしようとして失敗をした過去がある。マイクロソフトの中国投資により、ゲームの世界地図が書き換わる可能性が出てきていると環球時報が報じた。
ゲームを遊ぶ国からつくる国へ
「中国は遊ぶだけの国から、大規模開発のハブである国に変わろうとしている」とロイターの記事(https://jp.reuters.com/article/china-games-focus-idTRNIKBN2RJ1RE)は書いている。
21世紀になっても、中国は輸入されたゲームを楽しむだけの国だった。中国でのゲーム配信には政府による審査があるため、すべてのゲームが自由に輸入できるわけではない。政府によって輸入が認められないゲームについては、国内でよく似たゲームが開発され、それが中国内で人気となる。そのようなゲーム消費国にすぎなかった。
原神の成功に刺激されたマイクロソフト
しかし、それを変えたのが「原神」(miHoYo)の登場だった。この二次元アニメとオープンワールドを融合させたアクションRPGは、中国で人気となるだけでなく、米国、日本、韓国、ドイツ、オランダなどでもiOSのアップストアのダウンロードランキングのTop10にランクインした。
さらに、ソニーのプレイステーション5でも配信をし、ソニーは大きな利益を得ることになった。
このソニーの成功にマイクロソフトでは緊張が走ったという。ロイターの報道によると、マイクロソフトはmiHoYoが原神の開発を始めた初期段階で接触を試みたのだという。その内容まではわからないものの、出資か買収を試みたのであることは想像がつく。しかし、この話はmiHoYoが拒否をし、成立しなかった。その後、原神が成功し、PS5から配信されることがわかり、マイクロソフトは大きな魚を取り逃したことを自覚せざるを得なかった。
マイクロソフトは中国スタジオの投資へ
この失敗により、マイクロソフトは中国への投資を大きく増やしている。マイクロソフトはXbox向けに「Xbox Game Pass」サービスを始めている。月額1100円で、ライブラリにあるすべてのゲームを自由に遊べるサブスクサービスだ。このライブラリに大量の中国製ゲームを追加する計画を進めている。
それを象徴するようなゲームが「ARK: Survival Evolved」だ。恐竜などの古生物が生息する世界を探索するオープンワールドゲームだ。このゲームを開発したのは、蘇州蝸牛遊戯傘下で米国を拠点とするStudio Wildcardだ。マイクロソフトはこのゲームに250万ドルを投資し、その続編の「ARK II」には230万ドルを投資している。
中国も海外を意識、海外も中国を意識
遊戯産業研究メディアの洪涛デスクは、環球時報の取材に応えた。「中国のゲーム開発スタジオはすでにAAA(高品質、高コスト、長開発機関)クラスのゲームが開発できるようになり、多くのスタジオがブリザードやUBISOFTなどの国際的なパブリッシャーから配信することを目指しています」。
これまで中国のゲームスタジオはあまり海外を意識してこなかった。せいぜいが二次元ゲームで日本や韓国を意識する程度で、多くは国内市場を想定して開発をしてきた。中国のゲーム市場は巨大であるためにそれで問題がなかった。しかし、現在は、中国政府のゲーム規制により国内市場が限られるようになっている。
一方、欧米ではゲームの品質があがっていき、AAAやAAA+と呼ばれるゲームを開発せざるを得なくなっている。投資金額は膨らみ、開発期間も長くなる。それが成功をすれば大きな利益が得られるものの、失敗した場合のリスクも比例をして大きくなっている。そこで中国という新たな供給源に注目が集まっている。
マイクロソフトが中国に本格的な投資を始めたことで、さらに中国に注目が集まっている。ゲーム開発の世界地図が大きく書き変わる可能性が生まれている。