中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

Z世代お気に入りのスマホはOPPO。コモディティ化が進む中国スマホ状況

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今回は、スマートフォンのシェアについてご紹介します。

 

2020年上半期で、個人的にいちばん驚いたというか、中国らしいニュースだなと感じたのが、数源科技(Soyea)から発売されたスマホケースです(https://www.soyea-tech.com/zh-CN/product_5gtxk.asp)。

後ほど触れますが、華為(ファーウェイ)は、5Gチップの調達ができなくなり、基地局関連製品などでは5Gのリーダー企業であるのに、5G対応のスマートフォンが製造できない状態になっています。このスマホケースは、P50Pro専用で、チップとeSIMが内蔵されていて、4G通信しかできないP50Proであっても、5G通信を可能にするというものです。

数源科技は、ファーウェイとは関係のないサードパーティーで、独自開発の製品ですが、報道によるとテストに関してはファーウェイが協力をしたと言います。ファーウェイはもはや「5Gスマホが出荷できない唯一のスマホメーカー」とまで呼ばれるほどの苦境で、なんとか5Gに対応して、生き延びようとしています。

 

9月8日に、iPhone14の発表があり、衛星通信が話題になっています。緊急通報を圏外であっても衛星経由で当局などに発信できるというものです。ただし、実際に使えるようになるのは11月からで、北米とカナダでサービスがスタートするということです。

9月6日にはファーウェイの新作発表会がありました。高級路線のMate50シリーズの発表です。この中で、ファーウェイも衛星通信に対応することが発表されました。中国では、独自の衛星測位システム「北斗」(ベイドウ、BDS)を運用をしていて、この北斗に備えられた双方向性の機能を使って、圏外であってもショートメッセージと位置情報を送信することができるというものです。

中国メディアの報道では、アップルよりも2日早く発表したことと、ファーウェイの衛星通信のサービス開始日はまだアナウンスされていませんが、アップルのサービス開始日よりも早くなるのではないかと報道されています。

サービス開始日が数日早くても大して意味のあることでもないと思いますが、ファーウェイがアップルに対して非常に強い対抗意識を持っていることは間違いないようです。

 

ファーウェイへのチップ供給停止問題は、米国からすれば当然のことかもしれませんが、ファーウェイから見ればこんな理不尽な話はありません。そして、第三者の目で見れば、米中の政治、軍事、産業の競争によるものに見えます。

中国の北斗もそうです。衛星測位システムは米国のGPSが有名ですが、それに頼っているということは軍事的には米国の風下に立つことになります。米国は好きな時に、GPSの測位精度を落とすことができるため、中国は民生用はともかく、軍事面ではGPSに頼るわけにはいきません。

まさにそれを見せつけられる事件が1993年7月に起きています。銀河号事件です。天津からイランに向けて出発した中国籍の貨物船「銀河号」の積載貨物に米国政府が疑いを持ちました。当時、米国は湾岸戦争の真っ最中であり、CIAからの情報として、銀河号に化学兵器の原料が積載され、イランに密輸をしようとしている疑いがあるとされたのです。

しかし、主権の問題がありますから、米国政府機関が中国の貨物船を直接臨検することはできません。しかし、(中国政府の主張によると)銀河号が航行している公海付近のGPS信号に意図的にノイズを加えられたため、銀河号は航行が不能となり、立ち往生をしてしまいました。そこに米国の軍艦2隻とヘリ5機に包囲をされ、強制的に臨検が行われました。積載されていた628個のコンテナすべてが検査されましたが、出てくるのは文房具や工作機器、染料などであり、化学兵器の原料になるようなものはありませんでした。

米国はこの事件に対して賠償はおろか、謝罪もしていません。中国から見ると、主権を侵された屈辱的な事件です。今日の米中貿易摩擦関連の報道でも、中国側の関係者からは「銀河号の屈辱」という言葉が飛び出すことがあります。

中国独自の衛星測位システムがあれば、銀河号は航行を続けることができたはずです。1994年、北斗プロジェクトが始まり、2000年には4機の衛星の軌道投入に成功、2018年には合計43機の衛星が軌道投入され、全世界での測位が可能になりました。まさに銀河号の屈辱から、北斗プロジェクトが始まったように見えます。

 

https://www.bilibili.com/s/video/BV1ky4y1z7Dx

▲銀河号事件と北斗の関係について解説したビデオ。

 

米国には米国の正義があり、当時は湾岸戦争中でもあるため、米国としては必要な措置をやむなく行なったのだとは思います。しかし、それが中国に独自の衛星測位システムを持たせることになり、軍事的には大きな脅威となりました。中国が独自の測位システムを持ってなくGPSに頼っている状態であれば、いざ交戦となった時にGPSジャミングをすれば、相手にもなりません。米国の対中圧力が増したことと、北斗のサービス提供開始は無関係ではありません。銀河号事件で強引なことをしてしまい、中国を目覚めさせてしまったのです。

 

1957年10月、ソビエト連邦は世界初の人工衛星スプートニク1号」を打ち上げました。打ち上げから92日間、地球を周回しましたが、あえて米国上空を通る軌道が選ばれました。また、スプートニク1号の本体は、ピカピカのアルミ製で光をよく反射するため、米国市民も光の点として目視をすることができました。主任エンジニアのセルゲイ・コロリョフのアイディアで、当時のフルシチョフ首相を大いに喜ばせたと言います。

米国は震え上がりました。人工衛星に爆弾を搭載されて、米国上空で切り離されたら無差別爆撃を受けることになります。この衝撃はスプートニクショックと呼ばれ、米国は宇宙開発と科学技術に多くの予算を注ぎ込みます。

米国もソ連に対抗して核弾頭を搭載する弾道ミサイルの開発を始めますが、ソ連は発射基地から直接欧州をねらえるのに対して、米国の発射基地からはソ連は遠すぎて射程に収めることができません。そこで、潜水艦に核弾頭ミサイルを搭載して、密かにソ連近海まで近づき、そこから核攻撃をするポラリスミサイル計画を始めます。

西海岸のサンタクララ郡サニーベール市にはモフェット海軍航空基地がありました。その関係で、ロッキード社を中心にさまざまなテック企業が移転をしてきて、ポラリスミサイルの極秘開発を始めます。これにより、サニーベールはにわかにテクノロジーの街となり、莫大な資金が流れ込みます。これが今日のシリコンバレーを生む大きな理由のひとつになりました。

ちなみに、アップルをスティーブ・ジョブズと共同創業したスティーブ・ウォズニアックの父親は、ロッキード社に勤務をしてポラリス計画に従事をしていたエンジニアでした。この関係で、スティーブ・ウォズニアックシリコンバレーで育ち、スティーブ・ジョブズと出会い、アップルを創業することになります。

また、インターネットが生まれたのもスプートニクショックに端を発して、核攻撃を受けても通信が遮断しないタイプの通信ネットワークとして始まったことも有名な話です。

つまり、米国もソ連に痛い目に遭わされて、人々が目覚め、今日のテクノロジー王国を築いているのです。米国は、この過去を忘れ、中国のテクノロジーの発展を阻害しようとさまざまな手を打ってきています。しかし、これはただ中国人を目覚めさせることにしかならないかもしれません。

 

ファーウェイは創業以来と言ってもいい危機を迎え、必至で5G関連事業を支えようとしています。しかし、5Gスマホの製造ができず、さらには4Gスマホですら生産量に限りがある状況となり、突破をするとっかかりも見えない状況です。

さらに、中国人のスマホに対する考え方も大きく変わり始めています。表題でも掲げたように若い世代であるZ世代のいちばん人気は、アップルでもファーウェイなくOPPOになっています。カメラ性能などのハードウェアで選ぶ時代が終わり、コモディティ化が始まっています。

このような状況の中で、スマホシェアはどのように移り変わることになるでしょうか。今回は、現在のスマホシェアを見て、中国のスマホに何が起きているのかをご紹介します。

 

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vol.140:始まった中国義務教育の情報教育。どのような授業が行われることになるのか