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すでにcm単位の精度での即位を可能にしている中国の衛星測位システム「北斗」。次の課題は屋内測位

iPhoneを始め、多くのスマートフォンが対応をしている衛星測位システム「北斗」。さまざまなところですでに活用が進んでいる。今後の課題は、施設内で利用できる屋内測位だと物聯伝媒が報じた。

 

iPhoneも対応している中国の衛星測位システム「北斗」

2021年6月、中国独自の衛星測位システム「北斗」(ベイドウ)の55機目の衛星の打ち上げが成功し、地球全体をカバーするという北斗測位システムが完成をした。この北斗はすでにさまざまなところで利用されている。

2021年、北斗に対応したスマートフォンは3.24億台出荷され、全出荷数の94.5%になる。iPhoneも2020年10月に発売されたiPhone12から北斗に対応している。

身近なところでは、スマホの地図アプリの多くが北斗に対応をしている。百度地図は2022年の初めに北斗に対応をした。これにより、道路単位でルート案内をするレベルを超えて、車線レベルでの誘導が可能になった。ライバルの高徳地図も同様に北斗に対応をし、120以上の都市の高速道路で車線誘導の案内をしている。

▲2021年6月、55機目の軌道投入に成功し、衛星測位システム「北斗」が全世界をカバーした。

 

中国版新幹線も北斗で位置把握

また、公共の分野でも北斗は活用をされている。ひとつは中国版新幹線「高鉄」(ガオティエ)だ。車両の位置を把握するのに、線路に設置されたセンサー類以外に、北斗によりcm単位の位置把握を行なっている。これにより、列車が遅延なく走行していることを把握し、遅延が発生しそうな場合は指令を出すことにより、早い段階で遅れを取り戻すという運転を行なっている。

 

シェアリング自転車の駐輪場所にも応用

また、シェアリング自転車にも北斗が利用されている。北斗に対応したシェアリング自転車は500万台を突破し、450都市で利用されている。非常に精度の高い測定ができるため、駐輪場の枠内に駐輪をしているかどうかを確認することに利用されている。

高層ビルなどのある都市内でも3mの誤差で測定ができるため、他のBluetoothによる電子フェンスなどと併用することで、違法駐輪を把握することができる。

▲シェアリング自転車を駐輪場にきちんと停めたかどうかも、北斗とBluetoothジオタグを併用することで判断されている。

 

誤差は4.4m、基準局を併用することでcmレベルの精度

北斗の精度は北半球で4.4mで、アジア地域では精度が出やすい構成になっている。また、通信業界では約4000基、電力業界では2000基の基準局を設置している。基準局は位置が正確にわかっている固定基準地点で、北斗からの信号を受け、天候などの外部要因による誤差を測定し、それを周囲のスマートフォンなどに送信をすることで、実用上の精度をあげるというものだ。これを利用すると、cm単位の測位が可能になる。

▲農業で使われるようになっている無人田植え機。この制御にも衛星測位システムが使われている。

 

期待される屋内での位置測位

現在、北斗に期待されているのが、5Gなどと併用することでの屋内測位だ。駅や空港などの屋内施設では、衛星測位システムだけでは衛星からの電波が受信できなくなるため、測位ができなくなる。しかし、広大な屋内施設では自分がどこにいるかを知る必要がある。

また、屋内に準じる状況として、トンネル内や高架下の測位にも期待が集まっている。トンネル内は北斗もGPSも測位ができなくなるため、多くのカーナビサービスがそれまでの動きから推定する形で位置表示を行なっている。しかし、トンネル内に分岐がある場合などは、適切なルート案内ができなくなる。

また、重慶市のような斜面の多い都市では、トンネル、高架道路が多く、北斗がうまく受信できないため、カーナビがそのままでは位置表示ができないため、カメラで現実の風景を撮影し、3D地図データのマッチングを行い現在地を確定するVisual SLAM(自己位置推定)など、重い演算が必要になってしまっている。

 

屋内測位の仕組みを構築することが今後の課題

屋内測位の課題は、どの技術であっても1つでは難しいということだ。BluetoothWi-FiUWB、vSLAM、RFID、ミリ波、北斗などの利用が考案されているが、いずれも1つの技術だけでは限られた条件下でしか屋内即位ができない。そのため、組み合わせをしていくことが重要になる。

GPSも精度に関しては改善が進んでいる。例えば、日本では独自にみちびき(準天頂衛星システム)を運用し、GPSと連動させることで高い精度の測位を実現している。北斗の精度は高いが、GPSも精度をあげているため、精度の点ではどちらも変わらない。しかし、北斗は屋内測位など、これまでGPSでは難しかった領域での応用を進めようとしている。

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