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ファーウェイがカムバック。影響を最も受ける米国企業、中国企業はどこなのか

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今回は、ファーウェイのカムバックとその影響についてご紹介します。

 

中国のスマートフォン市場が久々に沸いています。言うまでもなく、華為(ファーウェイ)の5GスマホHuawei Mate60 Pro」が発売になったからです。ご存知のように、ファーウェイは米国のチップ封鎖により、最新チップを製造することも、調達することもできなくなり、4G対応チップをクアルコムから購入して、細々と4Gスマホを販売していました。しかし、この5G時代にわざわざ4Gスマホを購入する人は少なく、ファーウェイはシェアを失っていました。

ところが、ファーウェイは自力でのチップ製造に成功をし、Mate60 Proとして5Gハイエンドの世界にカムバックしたのです。ファーウェイは、中国ではハイエンドスマホとして男性を中心に支持をされていて、多くのファーウェイファンが新機種の購入を我慢して古いファーウェイスマホを使い続けていました。それがカムバックしたことにより、注文が殺到しています。

さらに、その後、アップルもiPhone15を発売し、多くのメディアが「どっちが売れるているのか」という話題で盛り上がっています。米国のチップ封鎖により、中国市場ではハイエンド機と呼べるのはiPhoneだけになっていました。サムスンGalaxyは中国では人気がなく、小米(シャオミ)がハイエンド機を販売したもののまだまだ大きなシェアを取ることはできず、選択肢がiPhoneしかないという状況が続いていました。

それが、この9月はMate60 ProとiPhone14が発売になり、さらに11月になるとXiaomi14も発売になります。久々に「選択肢が多くて迷ってしまう」状況になっています。

 

米国によるチップ封鎖は、中国ではすでに「チップ戦争」と呼ばれています。元々は、ファーウェイのスマホや通信設備が個人情報を収集している疑いがあるという情報安全保障上の問題から、ファーウェイ機器を米国では使用しない「ファーウェイ排除」から始まりました。ファーウェイ機器が個人情報を“違法に”収集している根拠や証拠のようなものは今になっても出てきていません。iPhoneAndroidと同じように、サービスを改善する目的で“合法的”、“ユーザーの承諾を得て”収集しているだけです。

しかし、中国には弱みがありました。「国家インターネット安全法」の存在です。この28条には「ネットワークプロバイダは、公安機関及び国の安全機関のため法により国の安全及び犯罪捜査の活動を維持・保護し、技術サポート及び協力を提供しなければならない」と定められています。つまり、実際にそのようなことをするかどうかはともかく、構造として、公安から「国家安全に関する捜査のため、ファーウェイの収集している米国ユーザーの個人情報を提供してほしい」と言われた場合、ファーウェイは拒めないのです。米国からすれば、米国市民の個人情報が中国政府機関に渡る構造になっていることが問題なのです。

さらに、2019年5月には、米商務省の産業安全保障局(BIS)は、ファーウェイをエンティティリストに入れました。ファーウェイに米国の技術を使った製品を輸出する時は、あらかじめBISに許可を得なければならないというものです。事実上の輸出禁止です。これでファーウェイは、自社のSoC(システムオンチップ)=スマホの心臓部のチップ(CPUやGPU、センサー類が一体化されたチップ)を製造できなくなってしまいました。チップを製造するには、米国の技術が使われた設備が必須だったからです。

それまでファーウェイは「麒麟」(Kirin)を、子会社の「海思」(ハイスー、ハイシリコン)が設計を行ない、台湾の「積体電路」(TSMC)が製造するという体制でつくっていました。ところが、TSMCはKirinの製造ができなくなりました。製造をしてしまうと、ファーウェイ関連企業と見なされて、米国の技術を使った製造設備やソフトウェアが入手できなくなってしまうからです。米国だけでなく、米国の技術を使っている各国の半導体産業もファーウェイにチップを供給することができません。いわゆるチップ封鎖です。

さらに、グーグルもGoogle PlayGoogle Mapといったソフトウェア群=GMSGoogle Mobile Services)のファーウェイに対する供給を停止します。ファーウェイはチップもつくれない、GMSも搭載できないという状況に追い込まれてしまいました。

 

では、ファーウェイはどうやってMate60 Proを製造したのでしょうか。使われているチップはKirin9000Sです。このKirin9000Sは、ハイシリコンが設計をし、中国の中芯国際(SMIC)が製造をしました。SMICは米国の技術を使わず、中国独自技術のみで製造にこぎつけたのです。

そのカムバックぶりは鮮やかなものでした。米国で中国へのチップ封鎖を指揮しているのはジーナ・レモンド商務長官です。このレモンド商務長官が8月27日に中国を訪問します。その内容は多くが非公開になっていますが、中国側と交渉をして、制裁を正常化する糸口を見つけることであることは明らかです。しかし、レモンド商務長官は、訪中直前に「ファーウェイがこれ以上の研究投資をするのであれば、米国は制裁を強化せざるを得ない」と発言し、強硬な姿勢を崩さないことを示しました。

そして、8月28日の夜には、北京市で、米国の健康・美容企業が集まるイベントに出席をしーー中国メディアによるとーー北京ダックに舌鼓を打っていたところに、冷や水を浴びせかけるニュースが飛び込んできました。ファーウェイが独自技術でチップ開発に成功し、Mate60 Proの予約受付を始めたというものです。

これは、中国人ですら、何かの間違いか誤報ではないかと思ったそうです。ファーウェイはチップをつくることもできない、チップの供給も受けることもできない状況で、どうやってKirin9000Sを製造したのか。レモンド商務長官は、後に、このニュースを耳にした時に「不安に感じた」と正直な感想を述べています。ファーウェイが突然、予告もなく、この日に予約受付を開始したのは、間違いなく、レモンド商務長官が中国にいる間にショックを与えたかったのだと思います。

さらに、ファーウェイは9月25日に大規模な新製品発表イベントを企画しています。この9月25日というのは、ファーウェイ創業者の任正非(レン・ジャンフェイ)の娘で、ファーウェイCFOの孟晩舟(モン・ワンジョー)が、2018年に米国政府の要請によりカナダ政府により逮捕され、それが解除されて2021年9月25日に中国への帰国を果たした日です。この日に復活の新製品イベントを行うのです。

明らかに、ファーウェイは米国に対して、反撃を始めました。中国側が「チップ戦争」と呼ぶのも決して大袈裟ではありません。

しかし、なぜファーウェイは独自技術だけでチップの製造に成功したのでしょうか。今回は、その技術をご紹介し、ファーウェイのカムバックがどのような企業に影響を与えるのかをご紹介します。

 

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