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2人の脳波が協働してロボットアームを操作。天津大学が開発したBCI

天津大学神経工学のチームが、2人が協働して脳波で文字を描くというシステムを開発して話題になっている。天津大学が開発をしているのは、脳波で機械を操作するBCIと呼ばれる技術。すでに初歩的な産業応用も始まっていると津雲が報じた。

・2人が協働して脳波でロボットアームを操作

このシステムの名前は「哪吒」(なた)。毘沙門天の三男で、西遊記の中では、生まれた時に左手に「哪」の字、右手に「吒」の字が浮かんでいたため、哪吒と名付けられとされている。

この「哪吒」では、2人の人が脳波を測定するヘッドギアを装着する。意識を集中することで、ロボットアームを動かせるというものだ。2019年に開発された哪吒は、ロボットアームを動かす場所をイメージすることで、その脳波が解析されてロボットアームがイメージした位置に移動するというものだ。

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▲脳波を計測するため、操作者はヘッドギアをかぶる。

 

脳波を合成することで、速く正確に操作できるようになる

今回、哪吒を2人の協働作業に対応させたのには意味がある。2人で同時に動くイメージを持つことで、目的地までのアームの時間が半分以下になる。また、イメージする位置も1人では9×12の空間が限界だったが、2人での協働作業にすると12×18の空間に移動させることができるようになった。

つまり、協働作業にすることで、早く精密に動かせるようになった。

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▲文字を描くロボットアーム。

 

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▲2人が脳波を協働させて、ロボットアームを操作して書いた「福」の字。2人の脳波を合成することで、ロボットアームを速く正確に動かせるようになるという。

 

天津大学で開発が進む脳波による操作体系

天津大学では、BCI(ブレイン・コンピューター・インタフェース)の開発が行われており、脳波によるコンピューターへの入力やドローン操作の研究が行われ、脳波により108のコマンドを扱えるシステムが開発されている。

今回の共同作業によるロボットアーム制御も、このBCIシステムの応用になる。鍵になったのは、2人の脳波信号をどのように合成するかというものだった。そこがこの実験のキモとなっているが、開発チームによると、2人の脳波を6次元空間に投射し、2つの脳波のベクトル演算をすることで合成させる方式だという。

今回の実験結果により、複数人の脳波で操作をすると、コマンドが素早く実行され、精密な制御も可能になることがわかった。BCIによる機械制御の実用化への道が見えてきている。開発チームは、医療や航空での領域への応用を考えているという。


天津大学、脳でロボットを制御するBCI技術の開発に注力

▲脳波でロボットを操作するBCIの実験の様子。中国の宇宙ステーション「天宮2号」内でも脳波捜査の実験が行われた。

 

脳波でコミュニケーションがする時代がやってくる

天津脳科学センターの許敏鵬主任は、BCIは将来的にはコミュニケーションへの応用も考えられているという。「すでに医療健康分野には初歩的な応用が始まっています。将来は人と機械のインタフェースとしてだけではなく、人と人のコミュニケーションも脳波で直接できるようになると考えています」。

すでにBCIによりロボットを制御することに成功し、中国が打ち上げた宇宙実験室「天宮2号」内でのBCI制御実験にも成功している。宇宙空間での探査、メンテナンス関連の機器を脳波で制御することを目指しているという。SFのような話だが、産業応用はすでに始まっている。