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滴滴が自動運転ロボタクシーを開発中。未来のタクシーにはアームがついて、荷物を載せてくれる

ライドシェアの滴滴(ディディ)が、自動運転車「DiDi NEURON」(ディディ・ニューロン)を量産する計画を明らかにしている。2025年から量産に入る予定で、ネットでライドシェアを頼むと自動運転車がやってくる世界が実現すると澎湃新聞が報じた。

 

タクシーは捕まえるものではなく、スマホで呼ぶもの

滴滴は、中国ライドシェアの最大手。中国では、もはや街角で手を挙げてタクシーを呼び止める人はほとんどいない。いたとしたら、それは幸運な話で、ほとんどのタクシーが迎車でどこかに向かっており、手を挙げても止まってくれない。駅や空港などの大規模施設ではタクシー乗り場があり、そこで乗ることができるが、それ以外の場所ではスマートフォンで呼ぶというのが普通のことになっている。

ライドシェアは、個人が自分の車や滴滴などの車を使ってタクシーサービスを提供するもので、中国では「網約車」(ネット予約車)と呼ばれることが多い。

この滴滴が、自動運転車の量産計画を発表している。

▲DiDi NEURONの発表会の様子。あくまでもコンセプトカーだが、すでに演算ユニットなどの開発は始まっている。

 

ロボットアームが荷物を積み込む

このDiDi NEURONには運転席はなく、その代わりにロボットアームがついている。運転席を排除したことで、同サイズの車に比べて室内空間が50%増え、足元スペースは86%増加するという。現在は4人乗りを想定しているが、4人のシートすべてがフルフラットシートにすることが可能になっている。

また、ロボットアームは乗車時に、乗客の荷物を積み込む、降ろすなどの作業をし、車内では飲料をロボットアームが提供する。

また、車内には大画面ディスプレイやウィンドウディスプレイも設置され、移動をする最中に映画やゲームなどの娯楽を楽しんだり、リモート会議をすることを想定しているという。

▲ロボットアームが荷物を車に乗せてくれる。

▲ロボットアームは乗車中に飲料などを提供してくれる。

 

24時間自動タクシーサービスを実現する

車体は四輪のインホイールモーター方式で、4つの車輪とも旋回することが可能なため、狭い場所での転回や、場合によっては斜めに走行することも可能になる。このDiDi NEURONを使うことで、滴滴は24時間のライドシェアサービスを提供することが可能になる。専用カープールから注文者のところに向かい、輸送を終えると自動的にカープールに戻り、洗車、充電、修理などを行う。この一連のプロセスの90%は自動化ができているという。

▲DiDi NEURONのコンセプト動画。運転席はなく、ロボットアームが搭載されているのが特徴だ。

 

演算ユニットの開発はすでに完了している

このDiDi NEURONは現在のところ、コンセプトモデルであり、CG以外に存在しない。しかし、滴滴は本気のようだ。なぜなら、協力企業とLiDARと演算ユニットをすでに開発済みだからだ。

LiDAR(Light Detection and Ranging)とは、レーザー光で周囲の環境を把握するユニットで、自動運転車の目に相当する部分。DiDi NEURONには、北醒と共同開発した「北曜Beta」が採用され、中国初の2K画像レベルの精度を持っている。

▲DiDi NEURON。現在はコンセプトモデルのみだが、滴滴が発表したのは開発計画ではなく量産計画。本気度は高いと見られている。

 

カープール施設も建設する本気度

また、演算ユニット「Orca虎鯨」は、滴滴が開発をした演算プラットフォーム。現在のロボタクシーは技術的な制限から、サービスエリア内にステーションを設置し、そこで乗り降りし、ステーション間を移動するという形式になっている。しかし、Orcaの演算力により、どのような場所でも駐車が可能になり、タクシーと同レベルのサービスが提供できるようになるという。

すでに、上海市の嘉定区に自動運転専用のカープール施設「恵寿港」を建設している。量産が始まる前に、上海で試験運転が行われるものと見られる。