福州地下鉄では、今年3ヶ月にもわたる無料乗車キャンペーンを行った。それでいて黒字運営をしている。無料にすると、広告収入が増え、乗客が増えることにより市政府の補助金が増えるからだ。福州地下鉄は無料キャンペーンをうまく使うことで収入の最大化を図っていると澎湃新聞が報じた。
無料キャンペーンをやっても黒字の福州地下鉄
福建省福州地下鉄では、たびたび「無料乗車キャンペーン」を行っている。今年は2月6日から5月6日までの間、平日は午後5時以降、休日は全日、地下鉄と市バスが無料になった。地下鉄の場合、保安検査は受ける必要はあるが、改札は開放され、自由に乗り降りをすることができる。また、6月の大学統一入試「高考」の期間は、受験生とその家族を無料にするなどのキャンペーンも行った。
今年は、年末にも無料キャンペーンが行われると見られている。なぜ、福州地下鉄はたびたび無料キャンペーンを行うことができるのか。しかも、各都市の地下鉄運営が軒並み赤字である中、福州地下鉄は黒字を達成している。なぜ、無料で黒字を達成することができるのか。
全国で唯一の黒字運営地下鉄
2023年に営業状況を公開した29の地下鉄のうち、黒字になったのは福州地下鉄が唯一で0.1億元の黒字となった。深圳地下鉄は1.8億元、北京地下鉄は229.4億元、広州地下鉄は3.2億元など、多くの地下鉄が赤字になっている。
ただし、この最終黒字、最終赤字にはあまり意味がない。なぜなら、どの都市の地下鉄も運営母体は市政府であり、市政府からの補助金があるからだ。福州地下鉄も2023年には27.05億元の政府補助金をもらっており、これがなければ27.04億元の赤字ということになる。
地下鉄は独立事業ではあるものの公共性が強いため、チケット料金を安く抑え、市民に利用してもらう必要がある。そのため、どこの都市でも運営のみでの黒字化は求めず、地方政府からの補助金で運営を支えている。
とは言え、補助金の額は小さいに越したことはない。そのため、地下鉄運営にも経営改善求められる。福州地下鉄の無料乗車キャンペーンは、この経営改善を目的として実施された。
無料にすると広告収入が増える
無料乗車キャンペーンは2つの経営改善を行った。ひとつは広告収入の増加だ。駅、車内には広告が掲載できる。福州地下鉄では広告掲載と広告制作の事業を行っている。
無料乗車キャンペーンを行うと乗客数が増えるために、広告を出稿する企業が増え、掲載単価も高く設定ができるようになる。これにより、広告収入が増え、現在ではチケット収入を上回るようになっている。
乗客数が増えると補助金が増える
もうひとつは輸送強度の問題だ。輸送強度は利用者数を営業キロで割った数値で、利用率を測る指標だ。福州地下鉄の輸送強度は0.6万人/km前後であり、大都市地下鉄が軒並み1.0を超える中で決して高い数値とは言えない。
輸送強度は、新設路線の着工許可を国から認可される時の重要指標となるため、輸送強度をあげることが求められている。輸送強度をあげる施策であれば、地方政府も補助金を出しやすい。
また、自動車利用から地下鉄利用へ誘導することは、福州市が設定しているCO2排出量削減にも大きく貢献することになる。
福州地下鉄では無料乗車キャンペーンを行うことで、市民の間に地下鉄利用の習慣が広がり、輸送強度をあげることに貢献している。
収益を最大化させるために無料にする
福州地下鉄では、たびたび無料キャンペーンを行うことで、一見大きな損をしているように見えるが、実は広告収入を伸ばし、地下鉄利用を促すことで、経営状態も改善している。無料キャンペーンをやりすぎると、チケット収入が減ってしまうので、バランスを考えながら、広告収入、チケット収入、補助金の3つを最大化させる運営をしている。福州地下鉄では、今後も定期的にこの無料乗車キャンペーンを実施していく予定だ。