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AI事業への転換が順調に進む百度。それでも株価は下落基調。投資家が気にしている3つのこと

百度のAI事業が順調に成長をしている。話題のロボタクシーも各地で営業運行に入っている。しかし、投資家の評価は厳しく、株価は下落を続けている。投資家たちは3つのことに不安を持っていると虎嗅が報じた。

 

業態転換は順調、しかし株価は下落

百度バイドゥ)が、2021年Q4及び前年の財務報告書を公開した。2021年の営業収入は1245億元で、そのうち非広告収入は436億元となり、全体の35%まで高まり、検索広告の会社からAIの会社への転換が順調に進んでいることが明らかとなった。

しかし、市場の反応は否定的だ。直近の株価ピークであった2021年2月から比べると株価は半減をしている。

なぜ、一見、悪くない財務状況であるのに投資家は否定的に見ているのだろうか。その理由は主に3つある。

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▲財務内容は決して悪くはないのに株価が下がり続けている。広告事業は頭打ち、今まで稼いできたiQiyiも頭打ち、AI事業は伸びているもののまだまだ見通しが立たないということが株価下落の要因になっている。

 

1:愛奇芸(iQiyi)はもはや救世主ではない

百度は愛奇芸(アイチーイー、iQiyi)という動画ストリミーングサービスを2010年から始めている。いわゆるサブスク動画サービスで、2015年頃から百度を支える大きな事業に育ってきた。

百度の主力事業は検索広告であり、ここ10年でAIを主力事業にしようと転換を図っている。その中心となるのは、自動運転プラットフォーム「Apollo」(アポロ)で、技術開発の点では順調であり、すでに北京市無人ロボタクシーを営業運行するところまできているが、事業として収益を上げるようになるまではまだ時間がかかる。

検索広告はすでに時代の役割を終え収入は下がり始めている。その減少分をAI事業で補いたかったが、そこに手間取っている。このギャップを埋めてくれたのがiQiyiの収入だ。財務報告書を見ても、主力事業が伸び悩む中、iQiyiの収入が上乗せされることで、全体の収入が伸びている。

全体の収入の中での主力事業(広告+AI)の割合は、iQiyiの成長により下がり続けて続けてきたが、2021年で初めて主力事業割合が上昇に転じた。これはAI事業が成長をし始めたと見ることもできるが、iQiyiの成長が頭打ちになったと見ることもできる。つまり、今まで百度の危機はiQiyiが救ってくれたが、今後はiQiyiに頼ることができない。そのため、先行きに不安を持つ投資家が多かったということになる。

主力事業、iQiyiそれぞれの前年比を見てみると、iQiyiの成長が頭打ちになったことは明白だ。一方で、主力事業(広告+AI)は2021年に成長をしたものの、iQiyiの頭打ち分を補うほどではない。

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▲主力事業(広告+AI)と動画配信サービスiQiyiの収入割合。2018年から2020年まで主力事業の収入の伸びは止まったが、iQiyiが伸びたため、全体の営業収入は2020年を除いて、なんとか伸び続けることができている。

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▲主力事業とiQiyi事業の伸び率を見ると、iQiyiは成長が止まった。しかし、主力事業のうちAI事業が伸び始めている。

 

2:広告収入はもはや成長が期待できない

百度の核心事業は、グーグルと同じように検索広告だった。しかし、スマートフォンが登場すると、多くの人のネットの入り口が検索ではなく、SNSやショートムービーに移ってしまい、検索エンジンの存在感は大きく低下をしている。

その中で、百度は広告収入をよく持ち堪えているとはいうものの、成長の限界に達していることは明らかで、微減トレンドに入っている。しかも、この減少は不可逆的なもので、もう検索広告が再成長することはないと見るのが一般的だ。

 

3:AI事業のマネタイズに時間がかかっている

百度の将来は、非広告事業=AI事業の成否にかかっている。百度の主なAI事業は、自動運転とスマートデバイススマートスピーカー、翻訳デバイスなど)だ。

自動運転については、北京、重慶などですでにロボタクシーの営業運転を始めていて、2021年までに累計2130万件の乗車があった。ただし、試験営業期間も長く、この乗車のほとんどは無料であり、2022年の2月になって重慶などで乗車料金をとる正式営業を始めたばかりだ。

自動プラットフォーム「Apollo」についても、トライアル製造的な状況が長く続き、ようやく、2022年にBYDが120万台から150万台の自動運転車の販売計画を立てるところまできた。

ようやく収入が得られる段階に達したが、本当に収入が得られるかどうかについてはこれからのことになる。

一方で、百度は研究費にすでに2010年からの累計で1273億元を使い、2021年単年でも24.9億元を研究費に使い、毎年、20%前後、研究費が増加をしている。

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▲iQiyiの成長により、百度の主力事業割合は下がり続けてきたが、2021年に再び上昇に転じた。これはAI事業の成長という面と、iQiyiの成長が止まったという両方の面がある。

 

AI事業の収益化が最大のテーマとなる百度

つまり、百度は、検索広告からAIへの業態転換をおこなっている。検索広告が減少する中で、いつAI事業の収入が成長をするのかが焦点になっている。しかし、これは主力事業(広告+AI)の伸びが止まった2019年頃からずっと言われていることだ。そろそろ、投資家たちが痺れを切らし始めているということかもしれない。

百度のナスダック市場での株価は、2021年の財務報告書が公開された3月1日以降下落を続け、その後、戻したが、乱高下が続いている。

さらに、米国では「海外企業問責法」(Holding Foreign Companies Accountable Act、HFCAA)が成立をし、米国市場に上場をしている海外企業のうち、米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)の要求する報告を3年行っていない企業は、プロビジョナルリストに入れて、投資家に上場廃止の可能性があることを注意喚起することになった。京東などとともに、百度もこのリスト入りをしてしまったことが株価低迷の大きな原因となっている。

「もはやBATの一角とは言えない」「BATのBはバイトダンス」と言われるようになっている百度。AI事業を成長させて、再び輝くことができるか、難しい時期が続いている。