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手話で注文ができる中国茶カフェ「覇王茶姫」の無音店。聴覚障害者だけでなく、静かにすごしたい人からも好評

中国茶カフェ「覇王茶姫」が無音店の展開を始めている。スタッフも聴覚障害者が手話をマスターしていて、手話で注文をすることができる。健常者からも静かであることから人気になっていると周到上海が報じた。

 

聴覚障害者に対応した「無音店」を展開する中国茶カフェ

約5000店舗を展開する中国茶カフェ「覇王茶姫」(CHAGEE)が、「無音店」の展開を始めている。すでに杭州市、長沙市上海市などに出店している。無音店というのは、聴覚障害のある人に対応したカフェで、タブレットや手話で注文ができるという店舗だ。

上海市徐匯区の正大楽城店では、15人のスタッフが働いているが、そのうちの4人は聴覚障害者だ。その他のスタッフも、必要最低限の手話を学んでいる。

▲上海にできた無音店。外からは無音店であることはパッと見わからない。健常者ももちろん利用することができる。

 

聴覚障害者にとってハードルが高いカフェ

この無音店は、各方面から高い評価を受けている。聴覚障害のある人は、カフェに行くことが難しかった。現在ではモバイルオーダーなどがあるため、スマートフォンから注文をすることはできる。しかし、商品ができあがると、多くのカフェでは「⚪︎⚪︎をご注文の方」「受付番号⚪︎⚪︎の方」などと声で呼ばれることになる。これが聞き取れない。

障害の程度によっては補聴器を使って音声コミュニケーションが取れる人もいるが、カフェは狭く、反響しやすい内装材が使われていることが多いため、ノイズが入り聞き取れない。それどころか、干渉音がひどく補聴器をつけていられないこともある。

そのため、カフェに行って中国茶を楽しむには、健常者と一緒である必要がある。それはいつも誰かに頼らなければならいということで、どこかもやもやした気持ちが残り続けてしまう。無音店であれば、一人でもカフェに行けるのだ。

▲無音店のカウンターには、手話で注文ができる旨の掲示がある。

聴覚障害がある人は、タブレット、メニューの指差し、手話を組み合わせることで注文をすることができる。店内利用かテイクアウトかは手話で伝えることができる。

 

障害を持つ従業員が障害を特技に変えられる店

また、障害者雇用の面でも優れた施策になっている。中国ではまだ障害者雇用は義務化はされていないが、支持、優遇をする政策を行っているため、障害者を雇用している企業は増え続けている。しかし、多くの場合、致し方がないとは言え、障害者“でも”できる業務を割り振られることになり、どこか会社に貢献できていない疎外感を感じることになる。

しかし、無音店であれば、障害を自分の「特技」として活かすことができる。

▲上海店15人のスタッフのうち4人は聴覚障害者。聴覚障害が特技として活用できる職場にやりがいを感じている。

▲無音店には聴覚障害を持つスタッフも働いている。一般のお客もくるためにわかりやすいプレートをつけている。「私たちはあなたの声は聞くことができませんが、接客をすることが楽しく感じています」と書かれている。

 

静かにすごしたい人からも高評価

来店客からも評価をされている。無音店は、聴覚障害者専用ではなく、聴覚障害対応店であるため、健常者でももちろん利用をしてかまわない。「無音店」という表示がある以外は通常の店舗と何も変わらないので、気がつかずに利用する人もいる。

カフェで何をするかは自由だが、多くのカフェではおしゃべりに興じる人が多く、うるさくなりがちで、それを好ましく思っていない人もいる。静かに読書をしたい、静かに考えごとをしたいと思う人もいるが、おしゃべりをすることはルール違反でもなんでもないのだから、静かにしてほしいと言うわけにもいかない。

しかし、無音店では、基本的に静寂さが保たれており、静かにすごしたいという人にも人気になっている。

▲聴覚だけでなく、バリアフリー対策も進められている。車椅子のために、椅子がなく車椅子スペースであることを表示する客席も用意されている。

▲無音店では手話教室も開催され、健常者の間にも手話を広げる活動をしている。

 

聴覚だけでなくバリアフリー

また、聴覚障害者だけでなく、視覚障害のある人のために、店内表示を大きくわかりやすくしたり、車椅子のスペースを確保する、車椅子の動線を確保するなどというバリアフリー対策を進めている。これは健常者であっても、わかりやすく、店内を移動しやすいということにつながる。

このような障害者対応を、大規模なチェーン店が行うことに意味がある。無音店が特別なものではなく、日常の中にあるものとして捉えられ、人々の意識が変わっていくからだ。覇王茶姫では、この無音店を各都市に展開をしていく予定だ。